拙速を旨とすべし。走りながら考える。司令塔の役割

3月17日の朝日新聞オピニオン欄に、軍事アナリスト小川和久さんが、次のようなことを話しておられます。これは、発災後6日目です。
・・危機管理の要諦は「拙速を旨とすべし」だ。万全でなくてもいい。政府は走りながら態勢を整え、走りながら対策を講じていくことだ。
私は以前から、国家的な危機管理の際には、専門家を集めた「指令塔チーム」を設けることが不可欠だと主張してきた。被災地は何を求めているのか。その情報を一か所に集約し、その時点で必要と判断した地点に、救助要員と資材や機材を集中的に投入するためだ。
チームは大規模にしてはいけない。10人程度がいい・・閣僚がずらりと並ぶ会議では時間も手間もかかりすぎる。役人も多数が呼ばれ、省庁が一時停止してしまう・・
・・1995年の阪神淡路大震災当時から、大規模災害に対応する能力は、自衛隊も消防も警察も長足の進歩をとげた。現在、それぞれが高いレベルで迅速に活動しているが、ばらばらではその実力を十分に発揮できない。相互が連携することでさらに大きな力にもなる。そのためにも、統括する司令塔が必要だ・・
私が従事したのは、3月19日からで、また救助でなく被災者生活支援ですが、納得することが多いです。

わかりやすい資料の追加

被災者生活支援チームのホームページに、いくつかの資料を載せてもらいました。
主なインフラ被害の復旧状況」は、棒グラフで復旧状況を示したものです。文章で書いた方が正確なのですが、この方がわかりやすいでしょう。かなり復旧したことが、一目でわかります。
民間賃貸住宅の借り上げ」は、今回から、民間住宅に入居することも仮設住宅扱いとしたことによる、入居の数字です。新しく仮設住宅を建設するより、早く安上がりで、快適な場合も多いでしょう。
次々と、要求する指示に応えてくれる職員に、感謝します。ありがとう、広報担当諸君。

鎌田先生の新著

この欄にしばしば登場いただいている、鎌田浩毅京都大学教授が、また本を出されました。『マグマという名の煩悩』(2011年5月、春秋社)です。
日本の活火山は全部で108、古来言われた煩悩の数と同じ。地下にあるマグマと心の中にあるマグマ。ともに、ひとたび「噴火」すると、大変な被害をもたらします。ときに、自分も他人もほろぼしてしまう、心のマグマ。
先生からのメールには、「『煩悩の御しかた』がキーワードです。火山学者が、世の中の煩悩をなんとか減らす手だてをあれこれ考えた結果を、エッセイにしたものです」とありました。
なるほど、そういう関連ですか。
先生は、本業の方でもご活躍です。月刊『文藝春秋』6月号に「今そこにある富士山噴火・東海・西日本大地震」を書いておられます(インターネットで一部を読むことができます)。

仕事がはかどり、しかし片付かない休日

土日は、仕事がはかどりますねえ。「ちょっといいですか」と、資料を持って攻めてくる部下がいなくて(笑い)。電話も鳴らず、次の会議もないし。
私は、「しなければならないこと」を分類して罫紙に書き出し、自分の仕事の進行管理をしています。(2010年1月12日の記事)。
「週末には、これを片付けよう」と、平日にはできない仕事を書きだしてあるのですが。実際は、机の上にたまった書類を片付けたり、メールに返事を書いたりしていると、それだけで終わってしまいます。
さらに、来週しなければならない仕事が次々浮かんできて、その指示書を書くのにも時間がかかります。まあ、静かな休日は、次のことを考えるのには、最適な環境ですわね。「なんで、いままで、こんなことを思いつかなかったんだろう」「これも忘れていたなあ」のオンパレードです(苦笑)。
今日も、たくさん指示書を書いて、椅子の上に置いたからね。Y参事官、F参事官、M参事官、M参事官、Y補佐、K補佐・・。

事務局の仕事の進捗

昨日、「当面の取り組み方針」を決定し、私たち事務局の仕事も、次の段階に移りました。
3月20日に発足してから、ちょうど2か月がたちます。早いものですね。忙しすぎたので、私の手帳には出張や会議など行動の記録しかなく、何をしたかは、それを見ただけではわかりません。もちろん、事務局としては、きちんと記録が残るようにしてあります。
ちなみに、大臣以下幹部が議論をする「運営会議」は、これまでに44回開催しました。当初は連日、最近は平日は毎日開催しています。朝11時から30分間と決めてあります。もっとも、1時間かかることも多いです。お二人の大臣、官房副長官、副大臣がそろわなくても、開きます。この仕組みをご理解いただいたので、私たちの仕事は、はかどりました。

これまでの事務局の仕事を振り返ると、次のような時期に区分できます。
第1期は、3月20日から4月20日まで。現地からの要望によって、緊急物資を調達し配送することが主でした。そのほかに、避難所の課題の吸い上げと対策、がれき処理と仮設住宅建設の立ち上げ、個別問題の処理です。
4月21日から、物資の調達が各県でできるようになったので、第2期に入りました。この時期は、避難所の状況把握と困難な環境にある避難所の改善支援、避難所への壁新聞やハンドブックなど情報の提供、今回とられた各種特例の市町村役場への説明、がれき処理と仮設住宅建設、そのほかの住宅への移転の促進、所在不明住民の把握支援、個別課題の処理でした。
がれき処理と仮設住宅建設のめどが立ち、5月20日に「当面の取り組み方針」を作ったので、これからは第3期です。たまたま、1か月ごとになっています。
これからの仕事は、「取り組み方針」に従って行われる作業を進行管理すること、特に対策が必要な個別課題への支援です。例えばがれき処理は、市町村によって進捗度合いが大きく違います。またそれ以外にも、市町村ごとに、避難所の解消や、地域の復旧の状況が違います。これらを支援する必要があります。まだたくさんの方が、避難所暮らしをしておられます。早く仮設住宅やアパートなどに移ってもらい、避難所を閉じることが目標です。もちろん、現場では、避難所解消にめどが立たないと、次の段階には移れません。

市町村によっては、復旧が進み、復興に軸足を移しているところもあるようです。そこでは、当初毎日開かれていた災害対策本部会合(市長と各部長が打ち合わせる)は週に1回程度になり、復興構想に取り組んでおられます。
私どもの事務局も、夜間や休日の仕事はほぼなくなりました。当初は、何をしなければならないかわからない、何から手をつけて良いかわからない、どんな組織をつくり職員を集めたらよいかわからない、という状況でしたから。2か月で、良くここまで進んだものです。