藪中三十二著『国家の命運』(2010年、新潮新書)が、勉強になりました。出版と同時に買ってあったのですが、積ん読状態でした。反省。
著者は前外務次官で、日米構造協議などいくつもの国際交渉を経験しておられます。外務官僚から見た、日本国家論です。書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いと思います。
私は内政が主な仕事なので、外交分野は勉強になります。日本が先進国になり、一方でグローバリゼイションが進んだことによって、外国との関係や外交交渉が、日本国の在り方と国民の生活に大きく影響します。日米の繊維交渉や自動車摩擦は、一部の製造業に大きな影響を与えましたが、農産物の輸入自由化や汚染された食品の輸入は、家庭にも影響を及ぼします。そして、国際社会で日本はどのような位置を占めていくのか、日本はどのような国を目指すのか。これは日本の安全と繁栄、国民の在り方、そして世界の安全と繁栄に、大きな影響を及ぼします。
官邸で見ていても、総理の仕事の半分以上が、外交と世界の経済問題や安全問題でした。最近のニュースでも、外国との関係や国際問題の占める割合が、多くなったと思います。これまでは、外交官と一部の関係者に任せておけばよかったものが、日本の政治の大きな要素になったのです。しかし、政治家をはじめ、マスコミ(記者)や論壇など、まだそれに従事する人は多くありません。専門誌がないことも、かつて書きました(2010年4月12日の記事)。それだけの市場が無く、関心が低いということでしょう。