12月7日の日経新聞夕刊「ニュースのわけ」は、樫原弘志編集委員の「口蹄疫検証委、県・国を批判。感染防止へ備え不十分」でした。この春、宮崎県で口蹄疫が発生し、牛や豚が約29万頭犠牲になりました。それへの対応を調査していた農林水産省の口蹄疫対策検証委員会が、11月に出した報告書についてです。報告書では、お粗末な宮崎県の防疫の実態や、政府の判断ミスを厳しく批判したと、書かれています。詳しくは、記事と報告書を読んでください。
行政の失敗は批判されるべきですが、このような外部委員を入れた検証が行われるようになったことは、進歩だと思います。農林水産省では、かつて、BSE問題に関する調査検討委員会(2002年)がありました。その報告書では、生産者優先・消費者保護軽視の行政、不透明な政策決定過程、危機意識の欠如と危機管理体制の欠落が、厳しく批判されました。
行政の失敗、それは間違ったことをした場合とともに、やるべきことをしなかった場合があります。しかし、後者は事件が起きないと、明らかになりません。行政の不作為による失敗です。これまでに指弾された大きなものとして、公害裁判(水俣病など)、エイズ薬害訴訟(非加熱血液製剤事件)、ハンセン病訴訟、1990年代の金融行政などがあります(拙稿「行政構造改革」2008年7月号)。
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肌触り
朝日新聞12月6日夕刊の「月曜ワーク」は、日産自動車の伴アカネさんでした。「6年間で車の部品なでた回数、12,000回」という見出しです。部品に触った時の触感から、自動車部品の品質を支えるお仕事だそうです。
「触感」って、私たちの暮らしにとても重要な要素なのに、良くわからない、説明しにくいものですよね。私は、昔から関心を持っていました。
木のぬくもり、金属の冷たさ、ガラスのはかなさ、ということまでは、文字にでき説明できますが、実際はもっと微妙なものです。織物や毛皮の肌触り、人肌の感触は、なかなか表現できません。写真にとっても、伝えられません。紙も、柔らかなティッシュペーパー(それにも商品によって差があります)、ポスターなどのてかてかした紙、和紙、便せん用のいろんな肌触り、インクの吸い方の違う紙があります。
色や硬さは、表現しやすいのですが。肌触りは、文字通り、触ってみないと、わからないのでしょうか。匂いやうまみも、表現しにくいです。
記事では、硬いプラスチックを加工して、しっとりとした柔らかさを感じる「さわり心地」にできると、紹介されています。シボをつけるのだそうです。細かいしわしわ、デコボコといったらよいのでしょうか。
読者からの反応
先日書いた「今日のささやかな善行」(12月2日)に、いくつも読者から反応がありました。
「最近では、一番面白かったです。」
う~ん。もっと他の記事を、参考にして欲しいのですが。確かに、「今日は××で講義をしました」というような記事では、面白くないですわね。
「私は独身なので、赤ちゃんのことはわかりませんでした。」
早く結婚して、子育てを経験してください。勉強になりますよ。部下と違って、言うことを聞いてくれませんから。
もっとも、私は自分の子どもでは、あまり子育てを手伝わなかったので、キョーコさんにしかられています。
独り者でも、子育てを手伝うことはできます。駅の階段で、ベビーカーを抱えているお母さんがいたら、運ぶのを手伝って上げてください。赤ちゃんと荷物を抱えて、お母さんは大変なのです。
「いつものように、関西弁で話しかけたのですか?」
ハイ。いつも、私の標準語を使っています。世間では、関西弁といいますが。関西弁は別としても、「変なおじさん」と、思われているのでしょうね。
新聞の政治面
岩波書店のPR誌『図書』2010年12月号、丸谷才一さんの「人事と大事」から。
・・豊田泰光さんが「週間ベースボール」のコラム「俺が許さん」で、かういう怖いことを書いてゐた。警世の名論である。
日本のスポーツ新聞は昔から「人事新聞」と言はれてきたが、これは日本ジャーナリズムの体質で、大新聞だつて建前は「政争よりは日本をどうするかが大事」なんて恰好つけてるくせに、実際は「政治家の右往左往を面白おかしく扱って、ほとんど政界芸能新聞といった感じ」だといふ。まさしくその通りで、程度の低いすつたもんだを低級に報道して騒ぎ立てるのが大新聞の政治面である。総合雑誌だつて例外ぢやない・・
詳しくは原文をお読み下さい。丸谷さんは、文語体で書かれます。
2010.12.04
今日は、日本大学大学院での講義。順調に進んで、第3章「市役所の経営」に入りました。狭い意味での行政経営論です。まず第5章は、「組織管理論から経営論へ」です。従来の「行政管理」から、近年は「行政経営」と、範囲も言葉も拡大しています。たくさんの書物が、出版されています。それらは、各自で読んでもらうとして、私の講義は、それらを全体としてどう位置づけるかです。
民間企業のコーポレート・ガバナンスとの対比、マネージメントとアドミニストレーション、ガバナンスの違い。住民に対する成果と、住民に対する説明責任。明治憲法下での統治と、昭和憲法下でのガバナンスとの違いなど。さらに、市役所の経営だけでなく、地域の経営という視点まで、広げるべきことを論じました。
院生諸氏からも、次々と鋭い見方が指摘され、充実した講義でした。いずれ、この講義も、活字にしなければなりませんね。ところが、講義が順調に進むと、講義ノートと配付資料の準備分がどんどん少なくなり、自転車操業が苦しくなります。将来の話でなく、まずは来週を、乗り切らなければなりません。