2010.12.22

今日は、本年最後の、慶応大学での授業でした。今日から、第3部「地方財政の課題」に入りました。まずは、第9章「財政の分権、自立と自律」です。現在の現実の課題なので、実例を交えてお話しできます。
私の得意な分野なので、ついつい話しが発展し、時間が足りなくなります。でも、学生さんたちが食いついてくれると、うれしくて。また、制度や仕組みといった知識だけでなく、日本社会や経済の見方をお話しすることも、私の授業の重要な内容ですから。

政策立案演習

今日、自治大学校では、第2部研修生188人が、4教室に別れて、政策立案演習の発表会でした。4~5人の班で研究してきた政策提言を、同僚と講師の前で発表するのです。そして質疑応答と講評を受けます。テーマは、各班が選んだ地域の課題です。コミュニティ振興、農業や観光の振興、子育て、高齢者の社会参加、老朽化する公共施設の維持など多岐にわたります。それぞれ、現場で実際に抱えている課題です。
課題が現実のものであること、それへの解決策も、現場を知っている研修生が考えたものであること。これが、自治大学校での政策提言演習の強みです。これだけの研究ができるのは、当校くらいのものでしょう。もちろん、短期間の検討であり、それぞれの提言には、まだまだ詰めなければならない点もありますが。
研修生たちは、全国から集まり、見ず知らずの状態から、議論を重ね、この結論にたどりつきました。その過程も、大きな勉強です。なかなか意見がまとまらず、苦労した班も多いです。概要を1枚のペーパーにまとめるとともに、15分間の持ち時間で発表します。論文はもっと長いのですが、職場では限られた時間で、説明をしなければなりません。その訓練でもあります。パワーポイントを使った発表も、話し方も、落ち着いて、なかなかのものです。
彼らは約3か月の研修を終えて、明日卒業です。各市町村に戻って、活躍してくれることを期待しています。

赤井先生と佐藤先生の地方税改革案

今日12月20日の日経新聞経済教室は、赤井伸郎阪大准教授と佐藤主光一橋大教授の「地方税制の抜本改革。財源確保に説明責任を」でした。お二人の主張のポイントは、次の通りです。
1 現在、国の消費税に連動している地方消費税を分離独立させ、地方消費税は国税とは別に税率を決めること。
これによって、地方消費税について、地方税としての負担感を認知され、地方が増税の説明責任を負うのです。
2 現在、地方税である法人事業税を国税とし、代わりに国税である消費税と入れ替えること。これで、地方税収の不安定性と、地域偏在が大きく解消されます。
3 現在、地方交付税財源である国税の一定割合を、地方交付目的税として、国税から分離し地方の固有財源にすることです。
これによって、これらの財源が地方の固有財源であることがはっきりします。
この案は、国民の税負担は変えずに、地方の財源を増やし、経済変動による税収の不安定や地域間偏在を解消しようとする、現実的な案です。詳しくは、原文をお読み下さい。

今日のささやかな善行

今朝、大学に向かう途中での出来事です。地下鉄新宿駅で、若い女性が、とても大きな旅行鞄を持って、階段を登ろうとしていました。エスカレータがないので、一苦労です。「お手伝いしましょうか」と話しかけたら、「はい」とのこと。そして自分は、すたすたと登っていきます。「???」
鞄はとても重く、ようやく階段上まで運んだら、彼女は「JPに乗るんです」、と少したどたどしい日本語で話し、先に改札を出ていきます。「しゃあないなあ」と思いつつ、「韓国から来たのですか」と聞くと、「台湾です。3年いました。これから、台湾に帰ります」とのこと。鞄にはコロコロが着いているので、押しながらJRの改札の中へ。私は違うホームなのですが、ここで逃げるわけにも行かず、今度は山手線への階段を鞄を持って登りました。
「台湾では、みんなが手伝ってくれますか?」と聞いたら、「ハイ、親切です」とのこと。彼女は、「日本人は冷たいですね」とは、言いませんでしたが。
この記事を書きながら、「日本ではこれは善行だけど、ヨーロッパや台湾では善行に入らない。当たり前のことだろうなあ」と反省しました。

2010.12.18

今日は、日大大学院で講義。第6章「市民の満足」を、お話ししました。私の授業では、第2部で「地域の経営」をお話しし、第3部で「市役所の経営」を解説しています。
すなわち、公共経営を2つの分野に分け、前者の「地域社会の経営」と後者の「行政組織の経営」とを、議論しています。通常の行政管理論は、この第3部に当たります。しかし、行政の任務と目標が明快だった昔と違い、何が市役所の任務なのかから、問わなければならないのです。最近の公共経営論や公共管理論は、そこまで進みつつあります。
そして、第3部の組織管理論の講義も、市役所内部の組織管理(第7章)から、市民の満足(第6章)、さらに第2部の地域社会の経営を視野に入れた経営論(第5章)へと、範囲を広げています。 現実の行政学は、組織の管理や組織のスリム化効率化から始まり、成果を問う・市民の満足を上げるというNPM論に進化し、さらに地域の経営へと発展しています。その順に問題を発見してきました。
私の授業では、問題意識をはっきりさせるために、その逆の順に講義しています。すでに本に書かれていることを講義していては、私が教えに行く意味がありませんからね。特に第7章は、私の30年にわたる経験を基にした、「岡本行政管理論」です。
年内の授業は、これで終わり。新年にもう1回講義をして、終了です。