ロールプレイング式授業

今日は、自治大学校税務専門課程徴収事務コースで、ロールプレイング方式の授業(第1回目)を行いました。私も、参観させてもらいました。
納税者(滞納者)と行政(税務職員)に分かれて、与えられた設定(事例)で、交渉を行います。滞納している市民に、税金を納めるように交渉するのです。
最初に、留意点の説明を受け、ビデオを見ます。そして、学生を5班に分け、別々の演習室に入れます。5つの教室に分かれるということです。それぞれの部屋(班)に、専門の講師(地方税のベテラン)がつきます。各班は、4グループ(5~6人)に分かれ、1事例ごとに、納税者役、行政役、タイムキーパー役、感想を述べる係を担当します。1事例が終わるとグループを入れ替え、同じ事例で、2回対戦します(班を入れ替えます)。これを今日は、3事例で行いました。3事例×2回対戦=6対戦。
納税者役グループと行政役グループは、対戦前に、それぞれ作戦会議を持ちます。この際も、作戦がばれないように、部屋を別にします。
行政役は、学生のふだんの仕事の延長ですが、納税者の役割も、ふだん相手をしているので、よくわかっています。「滞納者役をやりたい」という申し出が多いことも、理解できますね。関西弁の「迫真の演技」で、納税に応じない市民を演じている職員もいました(笑い)。

納税交渉は、自治体の業務でも、もっとも基本であり、かつ困難なものです。98%の市民は、きちんと納めてくれています。残りの人が、責任を果たさないのです。しかし、この人たちを放っておくと、まじめな人が馬鹿を見て、誰もまじめに納めなくなります。私は、公務員たるもの、一度はこの苦労をするべきだと考えています。これまでは、ややもすると、使う人が威張っていました。ここに、行政と公務員の、民間との違いがあります。極端に言うと、民間は儲けてなんぼ、公務員は使ってなんぼでした。
この仕事は、法令を勉強したらうまくできる、というものではありません。優しく下手に出ればよい、というものでもありません。それなりの訓練が必要です。まさに、ロールプレイング方式が、ふさわしいのです。また、各市町村では、なかなかここまでの授業はできません。
畳の上の水泳教室より、水の中の水泳訓練の方が、効果がありますね。部屋の数といい、講師の数といい、準備も大変なのですよ。また、設定した事例も、よく考えてあります。そのノウハウは、企業秘密なので、ここでは紹介できません。講師の先生方、ありがとうございました。

20年間の経済停滞

8月30日の日経新聞オピニオン欄「核心」に、西岡幸一さんが、1991年と現在の日本経済を、比較しておられました。当時(1991年10~12月期)の名目GDPは477兆円で、なんと現在(2010年4~6月期)と同じです。20年間で、成長していないと言うことです。
需要項目で見ると、設備投資が94兆円から63兆円に、31兆円も激減。3分の2です。これに対し、政府の消費が、65兆円から95兆円に、30兆円増えています。ちょうど、入れ替わっているのです。これで経済を支えたのですが、設備投資は成長の源泉であり、政府の消費は「消費」です。社会保障給付が、主な内容でしょう。このほか、公共投資も住宅投資も、減っています。
ここには書かれていませんが、資金循環も、これと同じことを表しています。国民の個人金融資産は約1,500兆円ですが、かつてはそれが銀行預金や株の購入などによって、企業の設備投資に回りました。現在では、それらは銀行と郵便貯金を経由して、国債という形で国が吸い上げています。投資に回らないと、成長はありません。資金が国債でなく民間に回るようになった時、景気はよくなります。しかし、国債は売られ、場合によっては暴落します。ごくごく単純化すれば、こうなります。

政策の検証

日経新聞連載「ニッポンこの20年、長期停滞から何を学ぶ」9月5日は、大林尚編集委員の「止まらない少子化」でした。1990年6月に前年の合計特殊出生率が発表され、1989年の出生率は1.57でした。1966年の丙午の1.58をさえ、下回りました。2.1を下回ると、人口が保てません。その2.1を下回ったのは、1974年でした。しかし、平均寿命が延びたので、直ちには人口減少につながりませんでした。
記事では、当時、日本の政治や社会が、この問題に大きな危機を感じなかったことが、取り上げられています。
何度も書きますが、日々のニュース以上に、このような長期的な検証記事が、重要ですね。

国際金融危機に学び備える

9月3日の日経新聞経済教室ゼミナールが、金融危機後の規制・監督改革の世界的取り組みを、整理していました。今回の世界金融危機・世界同時不況では、先進各国の協調が求められ、結構うまくいきました。1929年の大恐慌の再発にならなかったのは、そのおかげです。しかし、再発を防止するためには、各国が対応する(金融規制と経済政策)だけでなく、世界規模での対応の制度化が求められたのです。
それが、G20(20か国・地域首脳会議)であり、金融安定理事会(FSB、金融安定化フォーラムを改組)です。FSBは、銀行・証券・保険の各分野の規制・監督のあり方や国際会計基準に関する総合調整を行っているそうです。
国境を越えて動く金融に対して、国家を超えて規制しようとする試みです。世界政府への道のりというのは、評価しすぎかも知れませんが、重要な進展だと思います。危機に遭遇するたびに、人類は進化するという例です。

大学院出講準備

今日は、朝から気合いを入れて、日本大学大学院の講義の準備を再開しました。18日から秋学期が始まるので、そろそろ本腰を入れないと。
秋学期は、「公共経営論」です。これは、これまで、地方行政日本の行政を、講義したり書きためてあるので、しゃべる分には困りません。もちろん、最新の情報に入れ替える必要があります。
その後に気づいた素材や、講義のアイデアは、例によって「紙封筒」に入れて用意してあるのですが、それを並び替え、各回の講義ノートにしなければなりません。そして、レジュメをつくり、配付資料をつくらなければなりません。全体を、14回の講義にバランス良く配分する必要も、ありますしね。
大変ですが、締め切りがあるから、日頃考えていることが、整理できます。ありがたいことです。