読売新聞9月30日夕刊健康欄、内田樹さんのインタビューから。
「日本中が不安や閉塞感に覆われているように思います」との問に対し、
・・いつの時代でも将来への不安はあったと思います。バブルのころのほうが僕は不安でした・・60年安保のころには、日本は戦争に巻き込まれるんじゃないかという不安があった。それに比べると、今の不安は大したことはありません。
・・今の日本は、未来の予見可能性がきわめて高い。他国からの侵略や内乱、通貨の暴落などの可能性はほとんどない。戦後65年で今ほど変化の幅や選択肢が限られている時代、言い換えると社会システムが安定している時代はない。不安というより、退屈です。それは安定の代償です。
「日本は今も世界第2位の経済大国なのに、豊かさを実感できません」との問に対しては、
・・これだけ豊かでまだ足りないというのは、貪欲です。世界に類のないほど安全で、環境に恵まれ、平和な国になったことを評価すべきです。持っていないものを数え上げる人間と、持っているものを数え上げる人間では、行動の姿勢が違います。あれがない、これがないと不満を言う人間は、誰かが何とかしてくれるのを待っている・・
「どんな社会を目指すべきですか」との問に対しては、
・・先進国はいずれどこも経済成長が止まり、人口が減ります。日本が少し先を行っているだけです。右肩上がりの成長が終わっても、日本には十分余力があるので、資源をうまく回せば住みよい国をつくれる。みんながそこそこ幸福に生きるにはどうしたらいいかが、国家目標になります。
この問題を解決した先行事例がないから、みんな不安になっていますが、日本は世界の先頭を行っているのだから、モデルがないのは当然です。世界の範となるモデルを構築するトップランナーだという国民的合意ができれば、不安も閉塞感も吹っ飛びます・・
詳しくは原文をお読み下さい。夕刊とインターネット版では、少し内容が違うようです。