16日の日経新聞経済教室は、秋元浩さんの「生命科学の知的財産戦略」でした。
・・日本の生命科学(ライフサイエンス)研究は、山中伸弥・京都大学教授の新型万能細胞(iPS細胞)研究に象徴されるように、世界のトップレベルといっても過言ではない。しかし、研究は優れていても、実用化・産業化という面では欧米の後塵を拝していることが多いのではないだろうか。日本は、研究開発と並んで重要な知的財産戦略・事業化戦略に問題があるように思われる・・
医薬品産業では、新薬の研究開発に平均15年以上の時間と数百億円の先行投資を要する。そして新薬として発売される成功確率は研究開始時点から見ると数万分の1と著しく低い。にもかかわらず、その新薬はたった1件の物質にかかわる特許で保護される可能性がある・・
生命科学の知財戦略では、グローバルな視点も重要になる。経済活動も科学技術研究もグローバル化がますます進む一方で、知的財産制度は依然として各国の産業政策に基づく属地主義的要素が強く残り、国によって異なる部分も多い。生命科学分野の企業にとって、経営戦略や研究開発戦略と並ぶくらい知的財産戦略が極めて重要である理由の一つは、日本と米国の特許制度の違いに起因する・・
2007年に人の皮膚細胞からiPS細胞を創成するという画期的な発明が山中教授により発表され、これを契機に、我が国全体(オールジャパン)として研究と知財のコンソーシアム体制をつくろうという動きが始まった。研究のコンソーシアムについては山中教授を中心にオールジャパン体制が構築された。しかし、知財の総合プロデュース機能を有する知財コンソーシアムについては、内閣の知的財産戦略本部が2008年6月に開いた第20回会合においてその必要性は承認されながらも、国としての支援体制は実現するには至らなかった・・