農業問題は農地問題

28日の日経新聞経済教室は、神門善久教授の「食料自給率向上は的外れ」でした。世界の肥満人口は10億人を超え、飢餓人口を上回るのだそうです。
・・日本が食料自給率を高める理由として、欧州、特に70%まで引き上げた英国の例がよく引き合いに出される。しかしこの裏に、前述の多額の農業助成金があったことを忘れてはならない。助成金はモルヒネのようなものであり、国内農業はますます助成金依存の脆弱体質になり、かえって国内農業は不安定になる。アジア太平洋地域でリーダーシップをとるべき立場にある日本が、自国の食料確保だけを考えることの副作用がどんなに大きいか、思いをはせるべきだろう。
・・すなわち、日本がめざすべきは、食料自給率の向上ではなく、食料の安定確保に向けて、相互に輸入・輸出しあう構造を構築し、農産物貿易の厚みを増すことだ。
・・日本の農業の真の危機は、食料自給率の低下ではなく、農地利用の崩壊にある。農業的にも環境的にも価値が高い平場の優良農地が、耕作放棄や蚕食的転用などで荒廃している。皮肉なことに、優良農地の保護を名目とした財政支援はさまざまに支給されている。
ところが、国土が狭い日本では、平場の優良農地ほど住宅や商業施設の建設候補地として狙われ、こうした農外転用がけた違いの利益を農地所有者にもたらす。農外転用規制をはじめとした農地利用に関する法制度の運用がずさんで、関係者の政治力次第では諸規制が有名無実化されるため、農地本来の利用がなされず、農外転用を当て込んだ農地保有がまん延。農業にたけたものに農地が集積するという通常の市場機能が働かず、農業が沈滞化している・・
私は、かつてこのHPで、「農地宝くじ説」を書きました(2007年6月23日の項)。

定住外国人施策

内閣府共生社会政策統括官(局に相当)に、定住外国人施策推進室があります。これは、平成21年1月に設置されました。定住外国人が日本での暮らしに困っている、地元住民とうまく共生できないといった問題に対処するためです。定住外国人が多く住んでいる市町村では、問題を放置できないので、さまざまな取り組みがされています。それを、中央政府でも支援しようという趣旨です。
今日8月31日に、「日系定住外国人施策に関する基本指針」を、策定しました(概要はこちら)。定住外国人のなかでも、日系人が、平成に入って急増し、しかし日本語が話せない、経済危機によって生活が苦しいという状況にあります。そこで今回は、日系人に的を絞った対策を、策定しようとしています。定住外国人を、地域社会から排除しないこと。これも、地域が抱える新しい課題です。
ありがとうございます、宮地参事官。

第1部学生、もうすぐ卒業

今日は、第1部学生に、2時間あまり、講話と講義をしました。第1部の学生は4月に入学し、明後日9月2日に卒業します。私は7月末に大学校に着任したので、彼らと話す機会がありませんでした。今日の午後は、寮を出る準備などのために取ってあった時間なのですが、教務部にお願いして、校長講話を入れてもらいました(学生にとっては、迷惑でしたかね)。
私が、校長講話としてお話ししたのは、自治大学校が学生に何を期待し、そのためにどのような講義や演習を提供しているかということです。第1部学生は、県や市の幹部候補生です。これからの活躍と出世を、期待されています。
講義としては、社会の変化が地方自治体と公務員にどのような課題を突き付けているか、これから私たちは何をしなければならないかという見取り図を話しました。皆さん、熱心に聞いてくれました。
また、放課後は、学生主催の卒業パーティに、呼ばれました。クラブ活動の成果発表が余興として出され、武道の演技や民謡なども披露してくれました。その他に茶道など、みんなそれぞれ、5か月間の寮生活を活用、エンジョイしているようです。5か月間の生活を振り返るスライドも、上映されました。初めのうちは歓声が上がっていましたが、最後はみんなが「じ~ん」と来ていました。ちなみに、今期の学生は、平均年齢40歳です。いろいろと、楽しかったこと苦しかったことを、思い出していたのでしょう。
懇談の中で、大学校生活の成果と反省を、本音で聞かせてもらいました。「授業が高度で、最初はついていくのが大変でした」「先輩からは、飲み代が大変だと聞いてきましたが、そんなに飲む時間はなかったです」「演習は勉強になりました」などなど、充実した体験だったと報告してくれました。もちろん、校長にですから、割り引いて聞かなければなりませんが。

暑い夏

明日は、8月31日。8月も終わりですね。いつものことですが、8月は早く終わります。事前には、いろいろと計画を立てるのですが、なかなか実現しません(笑い)。
特に今年は、例年になく暑い日が続き、しんどい夏でした。皆さんは、大丈夫ですか。この暑さ、いつまで続くのでしょうね。

高負担納得の理由

27日の朝日新聞「北欧に学ぶ、スウェーデン」から。
・・スウェーデンでは、確定申告が納税の基本だ。簡単な申告を可能にしているのが、生まれた瞬間に与えられる住民登録番号である。
企業など雇用側が払った給与や差し引いた保険料などを税務署に伝えるほか、金融機関も預金や株式売買による収入などの情報を、税務署に報告する。税務署がこれらをまとめて税額を計算し、国民は年度末に税額を計算し、自分のデータに間違いがないかを確認するだけ。
・・高負担を納得してもらうための一つの答が、地方分権だ。農村と都市、若者が多い町と高齢者が多い町ー地域事情にあった施設やサービスがあれば、それだけ満足度が増し、負担感は薄れる。
国、県、市町村が、役割を分担する。高齢者介護や障害者ケア、乳幼児保育などは市町村が、病院での医療は県が受け持つ。国は外交や防衛のほか、雇用や教育、住宅政策を担う。役割に合わせて、税源が地方に移された。
ウオメ大学のユナス・イドルンド助教授は「透明性が高いので、国民が仕組みを理解している。だから、選挙でむやみに減税を叫ぶ政党を、市民は怪しむ。そういう政党は、たいてい負けている」と言う。