家を燃やす

今日の消防大学校では、火災調査科で、模擬家屋を燃やしました。年に2回あります(前回は、2009年11月4日)。例によって、大きな体育館のような施設で、失火の仕掛けをして燃やします。適度に燃えたところで消火し、明日、学生たちが原因調査をします。
一方、校庭では、警防科が指揮訓練です。今日は晴れて暑くなり、出動の服装をしてヘルメットをかぶった学生は、さぞかし暑かったと思います。

医療制度見直し・借金のつけ回し

13日の日経新聞に、大林尚編集委員が、後期高齢者医療制度の政府与党見直し案について、「応分の負担、根幹崩すな」を書いておられます。
・・これほど評判の悪い制度も珍しい。野党や一部メディアから「姥捨て山」「家族の分断」などという批判が渦巻いた。だが、この批判は必ずしも的を射ていない。
・・膨張が避けられない医療費を各世代がどう分かつかを考慮した結果、この制度に行き着いた。対象を高齢者に限っているだけに、年金が少ない人の負担をある程度軽くする必要はある。しかし見直し案は、負担軽減策をちりばめたように見える。しかも、2008-09年度に必要になる約890億円をどうやって調達するか、明示していない。与党の文書は「財源措置は政府の責任で適切に対処する」と、人ごとのような書き方だ。
・・財政規律回復へのタガが外れたといっていい。それは将来世代への借金のツケ回しを意味する。
・・悪評がいっこうに収まらないのは、野党のネガティブキャンペーンに押されて、与党が防戦一方になっているのも一因だ。ここは無責任な批判を逆手にとって、将来世代のためにも高齢者層に相応の負担を求める意味を、愚直に説明する粘り強さが、政権与党に必要だ。

新聞の使命

鈴木伸元著『新聞消滅大国アメリカ』(2010年、幻冬舎新書)を読みました。先日の、インターネットがジャーナリズムを壊しているという、問題関心からです。本の内容は主に、アメリカの新聞社が次々と消えていっているという報告です。読むと、実態はすさまじいものです。日本とは、広告収入と購読料の割合などが違いますから、そのまま日本には当てはまらないとしても、大変な事態です。
私は、新聞はすべてが正しいとは決して思いませんが、その欠点の分を差し引いても、新聞は民主主義国家において不可欠の公共財だと思います。先日の記事でも書きましたが、インターネットの検索サイトが無料で(広告収入で)もうけ、記事を提供している新聞社が赤字になるという構図は、長続きしません。検索サイトがこれからも儲けようとするなら、「寄生している宿主」である新聞社を、生きながらえさせる必要があります。宿主を殺す寄生虫は、実は弱い寄生虫です。
これは、ビジネスの方法=いわゆるビジネスモデル(これは日本語だそうです)を、考えさせる事態です。情報産業にあってはコンテンツをつくる企業とそれを売る企業、商品にあってはモノをつくる企業と売る企業の、どちらが儲けるかです。インターネット業界では、それぞれの業態をレイヤーと呼ぶそうです。百貨店が場所貸し業になって、自ら商品を売らず、ブランド店が場所を借りて自らの商品を売る仕組みになりました。これで場所貸し業の百貨店は、衰退しました。街の本屋さんは、委託販売で、あずかった本を並べ、売れた分だけ儲けます。この場合は、衰退しながらも生きながらえています。もっとも、専門書は大規模店舗やインターネット販売に負けて、雑誌販売で生き残っているという見方もあります。
また新聞には、ニュースの優先順位をつけてくれる機能があります。たくさんのニュースから、切り取ってくれる今日のニュース一覧は、大きな機能です。どのニュースでも見ることができるは、どれを見たらよいかわからないということです。このような機能は、評価されないのでしょうか。114

世論調査・日本の自画像

11日の朝日新聞が、「いまとこれから」という世論調査を載せていました。
今の日本がおかれた状況を登山にたとえると、「息が切れて、後続の人に追い抜かれていく」が62%、「足を痛めて先に進めない」が18%、「急な坂を懸命に登っている」が15%で、「快調に登っている」は1%です。
「日本に誇りをもっているか」については、75%の人がもっています。誇るものは、技術力が94%、アニメやゲームが68%、経済力は34%、教育水準は33%でしかありません。急速にイメージが変わっているように、思えます。
日本の自画像については、「勤勉である」が46%、「でない」が50%。「礼儀正しい」が45%で、「でない」が52%です。さらに「独創性がない」61%、「国際性がない」70%、「自立心がない」76%です。かなり悲観的ですね。
詳しくは記事を見ていただくとして、佐藤俊樹東大教授は次のように述べておられます。
・・調査結果からまずわかるのは、日本社会の自己像が不明確になったことだ。「顔」を失った日本、という感じだ。経済力や教育水準の高さは、戦後日本の代表的な「プラス面」だ。ところが、いずれも誇れると思わない人のほうが多い・・日本人の特徴についても、器用だが自立心は弱く、国際性にも欠ける、という答え。一言でいえば「ぱっとしない自分」だ。いまの若者によく見る自己像とも似ている・・
ただし、国民が見つめる自画像の多くは、マスコミが伝えた報道によるところも多いのですよね。「記事で誘導しておいて、世論調査で確認する」といったら、言いすぎでしょうか。