8日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅先生の「押し寄せる文明的課題」でした。一部分だけ紹介します。
・・1970年代、文明の転換を予感させるような時期があった。それは政府によって管理された国民経済体制の内部対立を激化させ、やがて「小さな政府」論やグローバル化へと道を開くことになった。政府よりも市場に問題解決を委ねるという発想が優位を占めた。今回はグローバル化が十分に進んだ上での資源高、環境破壊、食糧危機であり、グローバル化のチャンピオンである金融市場が投機的な傾向を促し、問題の深刻化に一役買っている。
市場の問題解決能力に任せるよりも、むしろ市場に立ち向かう政策が必要だ。仮にそこに、政治が問題の切り分け役として登場するとした場合、ある程度科学技術によって対処できるが、同時にわれわれの「生き方」や発想の転換に関わらざるを得ない。従って、70年代とは異なり、市場の問題解決能力をもっと限界的なものとして、位置付け直す方向が出てきてもおかしくない。
今や、小泉時代の政策論議とは全く違った文脈での、政策マンの時代が始まりつつある。日本の官僚制に本当の能力があるとすれば、今こそ実力を見せるべき時である。