少し古くなりましたが、月刊『地方財政』(地方財務協会)2007年12月号に、武田公子金沢大学教授の「貧困との闘いと地方財政」が載っていました。先生は、自治体の商工費と労働費の支出割合の低さを、ヨーロッパと比較しておられます。外国との単純比較は避けなければならないと、留保しておられますが。
私も長年、地方財政や予算査定に携わっていて、商工費は中小企業への補助金、労働費は失業対策がなくなってからはほとんど内容がないと、理解していました。自治体の出番はないものだと。
しかし、先生が紹介しておられるように、職業訓練、問題を抱えた人へのカウンセリング支援、雇用機会の創出、失業者を雇用した企業への補助、コミュニティビジネス振興など、自治体が取り組むことができることは多いのです。
これまでは企業が雇用の場をつくってくれたので、自治体はこの分野に力を入れる必要はなかったのです。かつての失業対策事業が自立に結びつかず弊害が多かったこと、労働行政を国が独占して地方団体の出番がなかったことも、原因でしょう。企業が海外に流出して、この分野の政策の重要性が見えてきました。
働く場をつくること、困難を抱えている人の自立を支援することは、自治体の大きな責務です。モノをつくるより、もっと重要なことです。そして、はるかに少ないお金でできます。