人口減少時代の自治体

矢作弘著『「都市縮小」の時代』(2009年、角川oneテーマ21新書)が、興味深かったです。人口減少に直面した都市が、どのような対策を打っているか。欧米と日本の代表的な都市を、取り上げています。本書にも書かれているように、これまでの各市の「総合計画」は、将来推計人口が増えるという前提・願望で作られていました。しかし、ほとんどの都市で、それが裏切られたことも事実です。山村や離島での過疎と産炭地域の衰退などは早くから政治課題になり、特別立法が作られました。しかし、それ以外の地域でも、基幹産業の退出などで、人口が減った都市はいくつもあります。さらに、東京一極集中が、地方都市を空洞化しています。そして、日本全体の人口減少が、全国を覆います。一部の都市の問題ではないのです。
私もこの問題が、地域政策の重要問題だと、関心を持っていました。拙著「新地方自治入門」でも、中心市街地の空洞化やニュータウンの衰退など、人口減少の問題を指摘しました。また、どうしてイタリアやフランスの片田舎で、満足して暮らせるのかも、問題提起しました。しかし、それ以上の議論は、できませんでした。地方に講演に行くたびに、その街の衰退を聞かされ、悩んでいました。十分な議論ができないのですが、いくつか論点を、羅列しておきます。
1 市役所も街のリーダーたちも、引き続き工場が来て人口が増える夢を追い求めたこと。1980年代までは、多くの地方で企業誘致による産業振興が成功しました。だから、その夢を追い続けたのです。
2 しかし、アジア各国が成長し、加工組立型工場は海外に逃げ、従来型の工場誘致は困難になりました。そして、それに代わる新たな産業振興モデルを、政治も行政も経済界も、提示することができませんでした。
3 農業では、従来のような、小規模米作では所得は増えない。そのことは早くから指摘されていながら、大規模化などが進みませんでした。
4 住宅開発、商業施設や公共施設の郊外立地が、都市を寂れさせることに気づきながら、止めることができなかった。学校や老人施設、公共ホールが、郊外に立地したことは、残念なことでした。
今ようやく、コンパクトシティを目指す動きが出てました。
この問題の基本は、その地域が何で食っていくか(人を養うか)という産業論と、もし雇用と所得が増えないとするならば、それを前提としてどのようなまちづくりをするのか、だと思います。
もちろん、これは、それぞれの地域が、取り組むべき課題です。しかし、国としてどう対処するかも課題です。特に産業論は、国の役割が大きいです。かつて国土庁に、地方振興局がありました。省庁再編で分割され、そのような局はなくなりました。また、総務省(旧自治省)には、古くから地域政策を担う課はあったのですが、地域経済局(課)はありませんでした。経済産業省には、地域経済産業グループ(審議官)があります。