参議院で野党が多数を取り、衆議院とのねじれが、新聞などで議論されています。衆議院と参議院とで、違う結論が出る。もっと端的に言えば、内閣と与党の意見である法律が通らない、ということです。
しかし、これは、憲法が想定していたことです。また、政治体制が異なりますが、アメリカでは、近年、大統領が属する政党と、上下両院の多数党が違ったときの方が多いのです。
そもそも、議院内閣制は、衆議院の多数党が内閣を組織するので、衆議院と内閣との間では、緊張関係は期待できません。最初から「談合」なのです。三権分立と言われますが、議院内閣制は不完全な分立です。
これに関して、大統領が強く、首相は弱いという説がありますが、制度的には逆です。首相は内閣とともに、衆議院を抑えているはずですから、大統領よりはるかに強いのです。あとは、運用と政党内での権力構造によります。
そうすると、内閣と衆議院(与党)を牽制するのは、参議院の役割になるのです。ここに、国会の議論が活性化します。これに対し、参議院でも与党が多数なら、政府与党案が必ず成立します。すると、国会審議より、与党内での意思決定が重要になるのです。
・・こうした分裂国会の展開は、バブル崩壊以降の日本の企業経営がたどってきた道と類似する点がある。かつて日本企業の株主総会は、あらかじめ書かれたシナリオ通りに進むことが常態だったが、最近では株主が積極的に意見を表明したり、M&Aの是非や株主への利益還元を巡って投資家と経営陣が相互に論陣を張るなど、議論が活発化している。そこでは企業の真の利益とは何か、自らの考え方を理路整然と客観的な証拠で説明する能力が経営者に求められている。
また、取締役会も、以前は会社内部出身者だけで固め、上がってくる提案にラバースタンプを押している傾向が強かった。しかし、それでは組織の内向きの論理が優先されがちで、社会動向を見据えた抜本的な方針転換や、着実なコンプライアンス(法令遵守)が実際には期待できないという反省が強まった。幅広い視野から経営方針を提言する社外取締役の登用を増やし、役員のチェックアンドバランスや業績評価を強化するなど、企業ガバナンス(統治)改革により経営の説明責任を強化する動きは今後とも強まる・・
行政にあっても、いわゆる行政委員会の責任が、問われることになるでしょう。公安委員会、教育委員会、さらにはNHK経営委員会など。これまでは、教育委員長より教育長が、公安委員長より県警本部長が、前面に出ました。NHKでも、委員会から業務を委ねられている「会長」が前面に出ていました。委員会の責任は、問われなかったようです。国会審議でも、経営委員長が呼ばれることは少なく、会長が呼ばれます。このようなことも、変化が起きると思います。