政府の役割、子育て後進国

もう一つ、少子化対策を。12日の日経新聞経済教室は、渥美由喜さんの「育児サービスの強化急務」でした。23年前、日本とフランスの出生率は、共に1.84でした。2006年では、日本が1.32だったのに対し、フランスは2.0です。
・・当時の日本が出生率の水準に「満足」、今後の方針は「介入しない」と回答したのに対して、フランス政府は「不満」「介入する」と回答した点だ(国連のアンケート調査)。以来、両国は大きく明暗を分けた。半年前に筆者がフランス政府高官にヒアリングした際、「子どもを持ちたいとの国民の基本的な生活ニーズを満たすのが政府の役割」と断言していた・・
フランスでは、ベビーシッターや家事代行サービスにかかる費用の半額が、個人の所得税から控除される。さらに、企業がそれのサービスに利用できるバウチャー(利用券)を従業員向けに発行した場合も、その経費の4割程度が法人税から税控除される。すなわち、企業が積極的に子育て支援をするようにインセンティブ(誘因)を引き出すとともに、バウチャーを介在した市場原理により民間保育サービスが競い合う仕組みを作っているのである。
英国の官民連携の試みも、興味深い。英国では「働きやすい企業表彰制度」が盛り上がり、企業が就労環境を競い合っている。英国の企業表彰制度の特徴は、従業員評価を組み込んでいる点だ。主宰団体は民間メディアだが、調査の実施主体は外部の民間シンクタンクや非営利法人に委託している。エントリーしたい企業は、さまざまなデータとともに全従業員の名前と連絡先を提出する。調査機関は、それぞれの企業が提出した名簿から無作為で抽出した従業員にアンケート調査を行う・・・働きやすい企業として高名になると、採用の応募に優秀な人が集まるようになるなどメリットが大きい・・・
最もワークライフ”アン”バランスなのは、中央官庁と一部の都道府県庁ではないか。率先垂範すべき行政が言行不一致ではいけない・・

子供と若者支援

内閣官房に、「子どもと若者総合支援勉強会」が立ち上がりました。趣旨は、「地域における子ども、若者が抱える困難な状況の打開や社会不適応などの様々な問題のサポートのための仕組づくりが重要な課題となっていることを踏まえ、子育てから就労支援に至る関係機関のネットワークの強化のための方策等について検討する」となっています。再チャレンジ支援で検討していた、地域の若者支援策が、お役に立てそうです。第1回会合では、資料4に基づいて、説明しました。

レッド・スネイク、カモーンと憲法制定権力

東大出版会の広報誌「UP」6月号、長谷部恭男先生の「日本国民、カモーン!」が面白いです。
・・東京コミックショウのインチキ芸「レッド・スネイク、カモーン!」は、「レッド・スネイクよ、私はあなたに出てくるように命令する」と言い直すことができる・・
日本国憲法前文の冒頭の筋をグッと摘んでいうと、「われら日本国民は、国会における代表者を通じて行動し、この憲法を確定する」とまとめることができる。憲法学者のジャーゴンでいうと、憲法制定権力の保持者である日本国民が、この日本国憲法を確定したことになる。となると、日本国民はいつから日本の憲法制定権力の保持者になったのか。それは、天皇ではなかったか・・
これだけでも、読んでみたくなるでしょ。憲法学とは思えない書き出しで、しかし深遠な疑問を解説しておられるのです。詳しくは、原文をお読みください。
レッド・スネイクについては、そんな芸もありましたね。懐かしいです。いかにもインチキで、それでいて笑えました。奥さんが中に入って、蛇をやっておられたとのことでした。私は、ゼンジー北京の奇術、じゃなかった語りも好きでした。タネも仕掛けも丸わかりの奇術。お盆とお皿で花火を上げる芸は、私にもできました。

事業者育成から消費者保護へ

月刊「国民生活」6月号(国民生活センター)は、「自治体における消費者行政の新たな動き」です。その中の、池本誠司弁護士の「自治体における悪質事業者排除への規制強化-消費生活条例等の活用と課題」から。
特定商品取引法に基づく処分件数は、2001年度に20件であったのが、06年度には84件に増加しています。経済産業省や都道府県では、従来から非公表の行政指導は多数行われてきましたが、近年は違法行為を行う事業者に対し、改善指示・業務停止命令を積極的に行い公表することによって違法行為を排除する、という手法に転換しています。
こうした政策手法の転換は、わが国の消費者政策が、行政が事業者を保護育成することの反映として消費者を保護する手法から、事業者の自主的法令順守行動を基礎に据えて行政は違法行為を排除する手法へと転換したことの現れであり、今後もいっそうその方向で推進されるであろう。
もっとも、都道府県の行政処分が増えたとはいえ、悪質事業者排除の体制整備は、まだまだこれからの段階である・・