2008.04.26

矢吹初青山学院大学教授らが、『地域間格差と地方交付税の歪み』(勁草書房、2008年4月)を出版されました。
地方交付税による財政調整の結果を各団体ごとに調べ、通常の値から外れている「外れ値」となっている団体を調べるのです。もちろん、政令市や特別区のように、行財政制度が違う団体は当初から除外しますが、その他の団体は対象とします。小規模団体も豪雪地帯も、貧乏団体も富裕団体もです。すると、「交付税の歪み」が出てくるというのが、先生の主張です。
その際に「遺伝的アルゴリズム」という手法を使って、外れ値を探し出すのです。ここは難しくて、かつて先生に教えてもらった時も、十分理解できませんでした。人為でなく、機械的にシミュレーションするのです。ここが、客観的に「外れ値」を検出する核心です。
ちなみに、交付税の算定には、足し算・引き算・かけ算・割り算しか使っていないので、はるかに簡単な知識で理解できるようになっています。「一般の方でもわかるように」というのが、地方交付税の哲学です。
さて、元交付税課長としては、この外れ値を説明しなければなりません。離島や豪雪地帯では、割高になる行政コストを、算式を使って基準財政需要額に加算します。これが、外れ値になる可能性があります。港湾があるかないかなども、要因となります。
次に、ふるさと創生事業や公共事業促進のため、事業費補正を使って、各団体が発行した地方債の元利償還金の一定割合を算入しました。これは、各団体の発行額という「非客観的数値」を基礎としているので、外れ値になることが多いと思われます。ただし、これについては、2001年以降廃止縮小しました。その後、頑張る地方応援プログラムが始まっており、これは外れ値になる可能性があります。
本には、CDーROMも付いています。各団体でも、調査検証が可能です。ご関心ある方に、お勧めします。

大きな政府、小さな政府

日本は先進諸国に比べ、公務員数は少なく、予算規模(国民負担)も小さいので、「小さな政府だ」といわれます。もっとも、歳出予算は結構大きく、正確には、国民負担では「小さな政府」で、歳出額では「中くらいの政府」です。
いろいろな議論がありますが、混乱しているように思います。そこで、次のように整理できるのではないかと、考えました。
1 行政機構の規模
これは、簡単には公務員数です。そして、同じ成果を出すなら、より小さい政府=効率的な政府が望ましいです。
2 政府の出力
行政機構が、どれだけの仕事をしているかです。例えば公共事業の額、社会保障の額です。社会保障を考えてもらえばわかるように、これは必ずしも、小さな政府がよいわけではありません。健康保険、介護保険、年金、生活保護が小さいほど良いとは、国民は考えないでしょう。
なお、「出力」と言ったのは、単純に「歳出額」では測れないからです。ムダな予算だと(人件費に消えたりすると)、「有効な仕事」にならないからです。「国民に届く予算額」といえるでしょう。
3 政府の守備範囲
しかし、政府の仕事は、予算だけでは測ることはできません。法令による規制が多いと、国民が政府に依存する範囲が大きくなります。これは、大きな政府です。例えば、文科省が補助金を出さなくても、小中学校を細かく規制で縛ると、大きな政府になります。もちろん、これも小さな方がよいとは限らず、必要なところは政府が責任を持つべきです。
行政の力の源泉は、人=公務員、金=予算、権限=法令です。上に述べた3つは、おおむね、これに合致します。これまでは、ヒトとカネを問題視して、比較していましたが、権限についても取り上げるべきでしょう。国にあっては、公務員数は総務省行政管理局が管理しています。予算は財務省主計局が管理しています。権限については、そのような仕組みはありません。

3度目の花見

わが家の椿とプランターのチューリップは、ほぼ終わりました。今は、その横で、鉢植えの桜が咲いています。上野公園の植木市で、衝動買いしたものです。高さ20センチほど、チューリップより低いのです。ピンクの八重が満開です。キョーコさんからは、「大きくなったらどうするの」と言われていますが、その時は考えましょう。桜は虫が付くし、枝を切るとダメだし。難しいでしょうが、安かったし小さいので、ダメでもともと。桜にはかわいそうですが。
今年は、千鳥ヶ淵を初めとするソメイヨシノを楽しみ、新宿御苑で桜を見る会の八重を見、さらにわが家の小さな桜と、3回楽しんでいます。

赤字でも良い第三セクター、悪い第三セクター

自治労の月刊誌「自治研」2008年3月号に、宮木康夫さんの「第三セクターの抱える財政的問題」が載っています。宮木さんは、元日本開発銀行マンで、横浜市の第三セクターである横浜新都市交通(横浜シーサイドライン)の取締役でした。第三セクター経営の専門家として、著書を出すなど活躍しておられます。
この論文では、ほとんどすべての第三セクターは、実質的な赤字である。もうかるのなら、第三セクターで行う必要はない。赤字だといって、すべての第三セクターが不健全ではない。悪い第三セクターと良い第三セクターに分けて、異なった対応をすべきであると、主張しておられます。詳しくは、論文をお読みください。

2008.04.23

23日の日経新聞が、山田京都府知事のインタビュー「分権、地方の自己改革から。国民から負託、国は意識欠く」を載せていました。
「国土交通省や社会保険庁を巡る不始末など行政の信頼が揺らいでいる」との問いには、「いずれも国民の負託を受けていない場所で問題が発生している。地方分権とは負託を受けた人に(権限や財源を)任せることだ。以前、全国知事会で国の出先機関の改革案をまとめようとしたとき、各機関の職員数や予算執行などに関する資料が全くなかった。それまで誰もチェックしていなかったということだ」と答えておられます。
「それでも地方分権をめぐる世論はなかなか盛り上がらない」という指摘に対しては、「これまでの分権論議は国民に根ざしていなかった。(1990年代の)第1期地方分権、三位一体改革も単なる国と地方の財源争いとみられてしまった」 と発言しておられます。
「財務省が「国の財政は夕張市よりも厳しい」と主張し、財源移譲を求める地方側をけん制している」との指摘には、「本当に厳しいと考えているなら、国も夕張市のように解体的な出直しをしてはどうか。財務省は『地方の方が財政再建が進んでいる』と主張するが、それこそ地方に(仕事を)任せた方がいいという証左だ」と答えておられます。