大村敦志『フランスの社交と法』(2002年、有斐閣)が、勉強になりました。先生は、東大法学部の民法の教授です。フランスでの暮らしをもとに、社会(Societe)をつくっている社交(societe)とそれを支える「法」について、日仏の違いを分析しておられます。その切り口は、「余暇」「近隣」「結社」です。
個人は、一人では生きていくことはできません。近代社会は、個人を束縛から自由にすることを目指しました。しかし、農村社会や大家族から解放されたとき、個人は国家や市場とむき出しで付き合わなければならなくなりました。
フランス革命を経て、近代市民社会に入ったフランスは、いち早くこれらの問題に直面しました。教会、ギルド、身分制社会でなりたっていた旧体制を打破するため、革命はあらゆる結社を禁止したのだそうです。
個人を社会とつなぐものが、付き合いであり、中間団体です。NPO(フランスではアソシアシオン)、地縁などが、再認識されたのです。
先生は、「つきあい」と「生き甲斐」を副題にしておられます。個人の外面を捉えると、つきあい・社交の重要性です。内面では、生き甲斐です。これは、豊かになったが故に、職業生活だけでは満足が得られなくなった、あるいは働くことだけであくせくしなくて良くなったからです。
私はこのことを、「新地方自治入門」第8章「公の範囲は」で、中間団体の機能を中心に述べました。
かつての日本では、地域社会、お寺や神社の行事などで、社交とつきあいがありました。それが急速になくなりました。そのような、地域での半強制的なつきあいでなく、新しい形の社交が求められているのでしょう。
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先進地視察
19日の読売新聞夕刊「介護の心」に、三好春樹さんが「先進地視察、行き先は日本」を書いておられます。
・・福祉や介護の関係者は、かつてはよく、海外視察に出かけたものだ。ヨーロッパ、特に北欧の施設を見学するものが多かった。今では下火になったとはいえ、まだまだ「先進地視察」といえば北欧である。
私は、海外旅行は趣味だが、仕事がらみで海外に行ったことはない。文化の違う外国に行くより、日本の中でいいケアをしている現場を見た方が、よほど役に立つと思っているからだ。
すると、大手の旅行会社が、三好春樹と行くほんとのケアを訪ねるツアー、というのを企画してくれることになった・・
そのうち、かつて私たちが学びに行ったヨーロッパからも見に来るようになるだろう、と私は本気で思っている・・
このツアーは好評で、キャンセル待ちも出ているそうです。
読んで、我が意を得たりです。もう日本は、発展途上国ではないのです。諸外国に学ぶ謙虚さはよいですが、外国だけをお手本にするのはやめたいですね。
(これからは、日本が受け入れる番)
かつて私も、ヨーロッパに視察に行きました。北欧のある国で、「日本人は勉強熱心だ。毎年たくさんの人が、視察に来る。熱心にメモを取るし、資料もたくさん持って帰る。でも、なぜ日本人同士で、情報を交換しないんだ。ヨーロッパまでこなくても、視察に来た人に聞けばいいのに」と聞かれたことがあります。
「イヤー、視察という名目で、海外旅行を楽しんでいるんですよ」とは、言えませんでした。
さて、これからは、世界各国から、視察団を受け入れる番です。日本の進んだ行政をお見せして、ホテルや観光地で稼ぎましょう。これまで日本人が、パリやロンドンに落としたお金を、回収しなきゃ。
国内から視察団を受け入れるという、ビジネスモデルもあります。福祉や環境行政で、先進的なことをするのです。それを新聞や雑誌でPRして、各市町村からの視察団を受け入れるのです。条件は、市内に泊まること。安い費用で、儲かりますよ。
知事会の地方支分部局移譲案
知事会が8に日に決めた、国の出先機関の地方移譲知事会案が、HPに載りました。
埋もれている労働力を活かすテレワーク
田澤由利さんが、日経ビジネスオンラインに、「労働力不足時代・生き残りのカギはテレワークにあり」を書いておられます。働きたいけど働けない人を、活用する方法です。私も、この主張に大賛成です。
田澤さんとは、再チャレンジのシンポジウムでご一緒してから、いろいろ教えてもらっています。「宣伝せよ」とのご指示ですので、ここで紹介します。
KYの恐れ
17日の朝日新聞、沢村亙記者「風・人と人をつなぐKYのすすめ」が、次のような主張をしています。KY=空気が読めない、場の雰囲気に同調できない、困った人についてです。
・・フランスでは、至る所にKYがいた。どんなに行列ができようと窓口で苦情を押し通す客。討論番組では、相手にお構いなく言いたいこと言う参加者で、いつも終了時間がオーバーした。「他人との違い」を示すことこそ、自己の最大の存在理由ーー。そんな個人主義が根を張る社会が、不思議なことにバラバラにならない・・
そして、不法滞在者や外国人受け入れについての取り組みを、紹介しています。
なるほどと思いました。私もついつい「あいつは、空気が読めないなあ」と発言するのですが。KY批判も、一歩間違うと、組織への過度の同調強制に、陥るおそれがあります。特に日本の歴史を振り返ると、国家や会社への同調が行き過ぎると、危ないですね。
これは、官僚組織の変わり者の発言です