何をしなかったか

23日の日経新聞月曜経済観測は、赤羽隆夫元経企庁次官の「長命景気の原動力は、自然治癒力が復活」でした。
「もうひとつは、景気対策はやらないと公言した小泉経済政策の不作為が寄与した。1990年代の歴代政権の景気対策は日本経済に備わっている自然治癒力を傷めた。不景気増幅策と言ってもいい・・・」
同感です。私は、小泉内閣の大きな成果の一つは、ケインズ政策をやめたことだと考えています。確かに何かをしたのではなく、何もしなかったという意味では、不作為かもしれません。が、これまでの内閣・行政からは、不況期に公共事業の追加をしない、さらには削減することは、考えられないことでした。
「やめる」ということは、非常に困難なことです。後生の人は、何を作ったかを評価し、何をやめたかは評価しません。「創立何周年記念」といって宣伝してくれる人もいませんしね。そして、何を作らなかったかも、評価されません。(1月23日)
(民が行う官の機能)
官でない行政機能(行政学的なもの)に、関心を持っています。漠然としていてまだ整理できていないのですが、例えば民間が行う検査です。自動車の車検は代表例です。最近ではマンションの耐震強度に関して、民間の建築確認検査機関が問題になりました。また、粉飾決算に絡んで、監査法人もしばしばニュースに登場します。
これらは民でありつつ、官の仕事をしています。どこかに、このような機能を調べた論文や一覧表はありませんかね。今後の行政のあり方を論じる際には、不可欠の要素だと思います。

2008.01.25

小西砂千夫関西学院大学教授が、「自治体財政のツボー自治体経営と財政診断のノウハウ」(関西学院大学出版会)を出版されました。宣伝せよとのご指示ですので、ご紹介します。
先生の言葉によれば、売りは「住民の目線で自治体財政を解説するのがねらいです。初めて話し言葉で書いてみました」とのことです。住んでいる市町村の財政を勉強するには、もってこいの本です。市町村議会議員や職員、市役所の財政に関心のある方にお勧めします。

項目別評価

20日に総理の施政方針演説があり、各紙が解説や評価をしていました。その中で、朝日新聞(21日)の「施政方針演説に見る施策目標達成度」の表は、わかりやすかったです。構造改革と郵政は前進、デフレと社会保障は横ばい、格差是正と日中関係は後退との評価です。ただし、このような項目立てが良いのかは、議論があるでしょう。
毎日新聞(21日)は、「今回の施政方針演説で消えた主な項目」を表にしていました。なかなか鋭い分析ですね。何を重要視しているかということとともに、何にふれたくないかという分析もあるでしょう。ちなみに、そこで取り上げられていた項目は、デフレ克服、政治倫理、学習指導要領見直し、国連安保理常任理事国入り、普天間飛行場の返還です。
このような、項目別の分析が、次への発展につながるのだと思います。全体についての評価は、立場によって異なるのでしょうし、それだけではあまり前進はないですよね。

株式市場と経済

記者さんとの会話の続き
記:株が下がっていますが、経済は悪くないというのは、どういうことですか。
全:専門家に聞いてきたよ。株式市場で株価が下がるというのは、株を売りたい人が増えて、株価が下がっているということ。それと、生産・消費とは別なんだ。自動車会社が、これまでと同じだけの自動車を作って、消費者が同じだけの自動車を買うと、日本経済は悪くなっていない。株価の下落と実体経済とは、ひとまず別なんだね。
記:株が下がると、株の配当が減るので、株の保有者は所得が減りませんか。
全:それも違う。自動車会社の業績が同じなら、株の配当金額は同じ。株価の下落と配当とは別なんだね。しかし、持っている株が下がると、元気がなくなる。また、経済の先行きが悪くなると考える人が増えると、消費が落ち込む。
記:株価が下がると株式市場が縮小して、経済規模が縮小するのではないですか。
全:それも、株式市場の規模・総株価と、実体経済規模とは別ということやね。Aさんが100万円で株を買ったとする。1年後に株価が上がって、150万円になったとする。でも、その会社の売り上げ(日本全体の生産と消費)が変わっていなかったら、GDPは変わらないよね。
記:その値上がりの50万円分は、実体経済の裏打ちのない価値なんですね。
全:すごく単純化しよう。次に、Aさんが、弱気になって、株を売りたいと考える。でも、150万円では買う人がいない。120万円で買う人(Bさん)が出てくると、売買が成り立つ。売買前は、Aさんが株を150万円分持ち、Bさんが現金を120万円持っていた。売買後は、Aさんが売って得た金120万円を持ち、Bさんが120万円分の株を持つ。現金はどこにも消えていないけど、株価は下がったんだね。

経済対策

記者さんとの会話
記:株価が、大きく下がっていますね。
全:日本だけじゃなく、アメリカ発の全世界同時、という感じだね。
記:政府は、手を打たないのですか。
全:僕は担当でもないし、専門家でもないから、責任あることはいえないけど。まず、まだ景気は悪いわけではない。もちろん、株価が下がるのは、景気の先行きが悪くなるだろうという見通しだからだろうけど。
記:なぜ、こんなに下がるのでしょうね。
全:僕が聞きたいよ。日本は、個人金融資産は1,500兆円もある。優秀な企業、質の高い労働力もそろっている。それに、安全な社会。どこをとっても、悪くないんだけどね。円はドルに対して、値上がりしてるし。
記:そうなんですよ。だから、今は株の買い時だと思っているのです。なぜ、その1,500兆円をみんな使わないのかなあ。株式市場から引き上げたお金は、どこに行っているんでしょうね。
全:一部は石油とか、その他は預金かね。それでは景気はよくならない。お金は使ってこそ、リターンがあり、景気が良くなる。
記:そうなんですよ、そのお金を使うように、し向ける必要があるのです。それにしても、政府の対策はないのでしょうか。
全:考えられるのは、まず、金利の引き下げ。ただし、現在が超低金利なので、ほとんど下げる余地がない。次は、減税と公共事業の追加。これまた、現在が大幅な財政赤字なので、やるとさらに財政が悪化する。それと、1990年代にこの政策をやったけど、はかばかしくなかったので、小泉内閣でやめた手法や。逆に、財政健全化をすることが、経済をよくする長期的手法と考えられている。ここでぶれると、逆戻りになる。
記:財政を健全しておかないと、また金利を平常状態に戻しておかないと、いざというときに政策を発動できないのですね。
全:おっと、まだまだ景気が悪いから財政再建を急ぐなとか、金利引き上げを急ぐなと主張していたのは、誰だったかなあ。