17日の経済財政諮問会議で、「日本経済の進路と戦略」が了承され、18日の閣議で決定されました。これは、経済運営の中期指針です。期間は基本的には5年間で、小泉内閣では決定した後毎年改訂されました。2007年1月に安倍内閣が「進路と戦略」を定め、今回はその改定になります。よって、期間は2007年から5年間、2011年度までとなっています。今年から数えると、4年です。
本文とともに、そこに添付された参考試算(リンク先のp22)が、話題になります。ここには、これから4年間の経済の見通しと財政の見通しが試算されています。詳しくはそれをごらんいただくとして、ポイントを説明しましょう。
試算は、合計4つのケースでされています。経済については、成長シナリオとリスクシナリオの二つです。日本の持つ潜在成長力(産業の実力)が発揮される場合と、発揮されない場合です。後者は、簡単に言えば、機械や設備があるのに使われない場合と考えてください。
財政については、「骨太の方針2006」で決めた歳出削減の二つのケースです。すなわち、2011年度までに14.3兆円削減する場合と、11.4兆円削減する場合です。この組み合わせで、4通りになります。
一番良いのは、経済は成長シナリオで財政は14.3兆円の削減をする場合です。すると、2011年度では国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、GDP比0.1%(7,000億円)程度のマイナスになります。悪いのは、経済はリスクシナリオで財政は11.4兆円削減する場合です。これでは、GDP比1%のマイナスです。2011年度のGDPは、570~550兆円程度です。
政府は、2011年度でのプライマリーバランス黒字を、公約しています。そこで、新聞報道では、「増税必要に」と書いたのがありました。その報道は、やや不正確です。
まず、2011年度での黒字化の道筋を示したのは、「骨太の方針2006」(リンク先のp50)(2006年7月)です。そこでは、自然体では16.5兆円の赤字が生じると試算しました。そして、14.3~11.4兆円の削減を打ち出しました。この時点では、14.3兆円歳出を削減しても、その差の2.2兆円赤字だったのです。それについては、「歳入改革による増収措置で対応する」と書いてあります。それは、主に増税になります。
次に、2007年1月に、「進路と戦略」の参考試算を出しました。この時点では名目成長率が上がり税収が増えたので、成長シナリオで歳出削減を14.3兆円行うと、2011年度で黒字化するとなりました。そして、1年たって、今回の試算です。そこでは、2007年の名目成長率が低くなったので、2001年度で黒字化せず、赤字になりました。それでも、「骨太の方針2006」時点での良くて2.2兆円赤字より、赤字幅は小さいです。すなわち、この赤字幅は、経済の状況に左右されます。もちろん、歳出削減を、既定方針通り実施する必要もあります。
さらに、この目標は基礎的財政収支の黒字化であって、財政の黒字化ではありません。そのためには、さらなる歳出削減と増税が必要です。