政府の役割変化

内閣が、国民生活を課題に取り上げました。「安心で質の高い暮らし」です。そこでは、「消費者・生活者の視点から、安心できる生活環境の実現を目指すプロジェクトを新たに立ち上げました」とあり、国民生活の基本である「食べる」「働く」「作る」「守る」「暮らす」を対象としています。
私は、政府の役割が生産者振興から生活者保護に変化しつつあり、また、そうなるべきだと主張しています。例えば、「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2007年8月号をご覧ください。そこに掲げた表は、「行政の変化」に載せました。今回の取り組みは、我が意を得たりと思っています。

行政の変化

「これまでの行政とこれからの行政」
項目
これまでの行政
これからの行政
役割
経済発展と近代化
産業振興
行政サービス拡大
行政が先頭に立って指導
困っている人を支援
様々な暮らしが成り立つよう制度を見直す
家庭の問題も、公が支援
行政はセイフティネット
対象
生産者
企業、組織、業界
生活者、弱者
個人
手段
モノ(社会資本)をつくる
行政サービスを提供する
お金を配る
法律で規制する
人を誘導する
社会の仕組み、習慣、意識を変える
ビジネスにのせる
NPOとの協働
評価
予算や人員(入力)で評価
できたモノの数(数値)で評価
成果で評価
数値で測れないことも多い
手法
お金を配る
箱モノ中心
作ればすむ
法律制定
目的別縦割り組織
窓口で待つ(窓口行政)
行政が直営
国が指示
外国から制度を輸入
相談に乗る
施設でなく仕組み
継続が重要
啓発
窓口一元化
出かけていく(出前行政)
ボランティア、NPOとの協働
地域で問題を解決
地域で問題を拾い上げ

 

教育ギルド批判

9日の日経新聞経済教室に、葛西敬之さんが、教育再生に関して「教員定数増より質向上を。非効率是正が急務」を書いておられます。文科省を頂点とする「教育ギルド」を批判しておられます。

日本のソフトパワー

日経新聞夕刊は、10日から「JAPASIA・アジアの中の日本」を連載しています。日本文化がクール(格好良い)と、アジアに広がりつつあります。伝統的な富士山・芸者や寿司ではありません。日本語の名前のお菓子やバイク、そして有名なのがマンガです。日本のよいイメージが広がるのは、良いことですね。戦後日本が、敵国アメリカを好きになったのは、政治や軍事からではありません。アメリカの文化、それも芸術文化でなく生活文化にあこがれたからでしょう。

税源交換

8日の経済財政諮問会議に、増田総務大臣が「地方の元気が日本の力第2(地方税財政上の対応)」を出されました。p2、p3で、法人2税を国税の法人税(交付税財源)に移し、代わりに同額を消費税(交付税財源)から地方消費税に移す案を提案しておられます。交付税財源を使った、国税と地方税の交換です。消費税1%分だと、2.6兆円を交換することになります。
地方税総額は変わりませんが、法人2税は東京都の割合が26%、地方消費税だと14%なので、都の税収はその差12ポイント分減ります。それがp2に出てくる3,000億円です。愛知県の減収が800億円。これらの分が、その他の県に回ります。それが、p3の真ん中の帯グラフです。
国の取り分は変わらないので、国家財政には迷惑をかけない案です。ただし、財務大臣は消極的な意見を述べておられます。
なお、国と地方の税源配分の現状は、「税源配分その2」の図1をご覧ください。図の中で、法人課税については、法人2税9.6兆円(青色)から2.6兆円を、法人税の交付税部分(灰色)へ移します。消費税は、国の消費税のうち交付税部分3.1兆円(灰色)から2.6兆円を、地方消費税(青色)に移します。青色(地方税)と灰色(交付税財源)は入れ替わりますが、白色(国の取り分)には影響ありません。
さらに簡単な図を載せました。税源配分その2の図4です。
財務大臣の反論のうち、「3 国と地方の税収比」について質問があったので、解説します。3は、次のようなものです。
「国と地方の業務量の比率(4:6)と税収比率(6:4)との差は、地方交付税などで賄われており、地方に必要な財源は確保されている。業務量の比率に税収比率を近付けるということは、地方税を拡大して、その分地方交付税などを削減することになるとともに、財源超過団体の税収が一層増加することになるため、地域間の財政力格差は一層拡大することになる。したがって、国と地方の税収比については、あらかじめ数値を設定して取り組むべきものではない。」
このうち、前段の「国と地方の税収比6:4と業務量の比4:6の差を、交付税などで賄っている」という指摘はその通りです。地方に必要な財源が確保されていなかったら、大問題です。我々は、交付税と国庫補助金とで「財源を移転していること」を問題にしているのです。
(1)財務大臣資料は、なぜか国庫補助金に触れていません。地方が問題にしているのは、交付税より国庫補助金です。
(2)そして、わざわざ補助金と交付税で国から地方へ移転しなくても、地方税として地方が徴収すればいいのです。国が、国税として徴収し、補助金で地方へ配るというのが、「中央集権システム」なのです。
 後段の「地方税を拡大し交付税を削減すると、財政力格差が広がる」というのも、それだけだと事実です。
(1)まず削減すべきは、交付税でなく補助金です。なぜか、ここでも補助金は触れられていません。補助金は全団体に交付されていますが、交付税は交付団体にしか交付されていないので、それを先に削減すれば格差は広がります。
(2)格差が拡大しないように、今回提案されているような、法人2税と消費税との交換などの知恵を出しているのです。