慶応大学2007秋学期

秋学期:行政学特論Ⅱ「地方自治論」
授業計画
前半は、地方行財政の仕組みを説明します。後半は、地方行政と地方自治体が抱えている課題と、それに対しどのような改革が取り組まれているかを解説します。
地方行政や地方財政といったときには、1,800団体(都道府県、市区町村)の集合体としての地方行政や地方財政と、一つ一つの団体(例えばある市役所)の行政や財政があります。前者はマクロの見方であり、後者はミクロの見方です。前者では国家行財政との対比や関連が議論になり、後者ではその団体のあり方とともに、住民との関係が議論になります。さらに、地方や地域といった場合には、市役所という行政機関の課題だけでなく、市域という地域社会の問題もあります。
第1部 地方行財政の仕組み
1 地方自治の意味と機能
2 市役所の仕事
3 市役所の仕組み
4 住民と自治
5 市の財政
6 地方財政
第2部 課題と改革
7 分権改革
8 財政の課題
9 地方行革
10 地域の課題と政策
授業予定
 9月29日 授業計画の説明、第1章地方自治の意味と機能
10月 6日 第1章続き、第2章市役所の仕事 
10月13日 第2章続き
10月20日 第2章の残り、第3章市役所の仕組み
10月27日(早慶戦で休講。雨天中止の場合も休講)
11月10日(公務のため休講)
11月17日 第3章の残り、第4章住民と自治
11月24日(三田祭で休講)
12月 1日 第5章市の財政
12月 8日 第6章地方財政
12月15日 第6章続き、第7章分権改革
12月22日 第7章続き 
 1月12日 第8章財政の課題
 1月19日 第9章地方行革、第10章地域の課題と政策
配付資料
(レジュメ)
p1~5(9月29日)、p6,7(10月6日)、p8,9(10月13日)、p10(10月20日)、p11~13、「レポート課題」(12月1日)、「レポート課題、選択課題追加」(12月8日)、p16,17(12月15日)、p18(12月22日)、p19~21(1月12日)
(資料)
資1-1~1-5(9月29日)、資2-1~2-7(10月6日)、資p13再、資2-8、資3-1、3-2(10月13日)、資3-3(10月20日)、資5-1~5-4、資6-1~6-8(12月1日)、資7-1~7-4(12月15日)、資8-1~8-7(12月22日)、資8-8~8-13、資9-1~9-6、資10-1~10-3(1月12日)
(参考配布)
拙稿・連載「行政構造改革」9月号(10月6日)、10月号(10月20日)、11月号(11月17日)、12月号(12月8日)、1月号(1月19日)
参考書
その都度、紹介します。
拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」(2003年、時事通信社)が、参考になります。ただし、この本は大学院での授業をもとにしてあり、地方公務員を読者と考えて書きました。すなわち、地方自治について、ある程度の知識があることを前提に書いてあります。授業は、仕組みの解説から始めます。
成績評価
平常点(出席状況)とレポートにより、評価します。出席回数4回以下は、不可。
レポートの課題は、配布済み。提出日は、1月24日、25日。

再び組閣

今日は組閣でした。1か月前にやったばかりなので、関係者は緊張感は少し少なくなっていたようです。前回と同じメンバがーが、官邸に集合しました。控え室に大臣名簿が伝わってきて、多くの方が再任だとわかったときには、集まった各省の幹部からは、ほっとした雰囲気が流れました。新しい方が大臣だと、業務のご進講から始めて、人間関係をつくり・・と、業務は1か月分くらい遅れるのです。官邸での記者会見前の説明も、ほとんどなしで終わったようです。また、今回は皇居での認証式が明日朝になったので、深夜に及ぶこともなく、ありがたかったです。
再チャレンジ支援は、担当大臣は置かれませんでしたが、岸田大臣の所管業務として明示されたので、引き続き取り組むことになりました。

2007.09.24

29日から秋学期が始まるので、準備を続けています。テーマは地方自治なので、話すことには事欠きません。今回も、何をしゃべり、何を切り捨てるかが問題です。自治の仕組みと機能をお話しするため、あらためて勉強し直しています。骨子と内容はすぐにできるのですが、資料の準備が大変です。多くの人の協力を得ています。ありがとうございます。

日本はガラパゴス諸島

23日の日経新聞「電機再編」に、次のような記述があります。
・・隔絶した環境で、生物が世界と異なる進化の経路をたどったガラパゴス諸島。内向き志向が強い国内電機業界は、そんなガラパゴスに似る。典型が携帯電話機だ。昨年で9億7800万台の世界市場のうち、日本はわずか約5%の4800万台弱。限られた市場に大手電機9社のすべてが参入し、独自の世界で競い合う・・
「日本の産業界はガラパゴス諸島」説は、先日、ある学者から教えてもらいました。その名付けの卓抜さに、脱帽しました。
もちろん、日本が独自の商業文化を発展させることは、悪いことではありません。それが外国と勝負でき、勝てるものならば。しかし、隔絶した条件でのみ進化できるのなら、それは世界では勝てないでしょう。

農業政策

23日の朝日新聞耕論は、「農業再生への道は」でした。生源寺真一教授の発言から。
・・約8万ある水田集落の半数以上には、主業農家(総所得の半分以上を農業所得が占める農家)が1戸もない。
・・「今の農政は小規模農家の切り捨てだ」という批判があるが、小規模農家が弱者であるかのような議論は実態と違う。規模が小さい兼業農家は自治体や企業の勤め人も多く、専業や主業農家よりも経済的には恵まれている。農業を副業にしている農家の場合、総所得に占める農業所得は3%前後にすぎない。兼業農家を無理に排除する必要はないが、厳しい財政事情の下で、サラリーマン農家の小遣いを多少増やして終わるだけの財源の使い方では、都市の人々の支持は得られない・・
私も、農家を一律に議論する曖昧さに、疑問を感じています。専業農家とサラリーマン兼業農家、稲作農家とそれ以外の農家、じいちゃんばあちゃんの農家と壮年の農家、業としての農家と自家消費の農家を、区別して議論すべきだと思います。
そして、農家と農業を分けて議論すべきです。農業を振興することは必要です。しかし、それと農家を守ることとは、別です。
サラリーマン兼業農家は、土地を持っていないサラリーマンからすれば、資産を持った恵まれた人なのです。そして、通常はその人たちは、稲作です。米は余っています。その人たちの「何を」、公費で支援・保障しようというのでしょうか。野菜や果物は、兼業の片手間では、できません。
これに関しては、日経新聞経済教室8月27日の本間正義教授の解説「日本の農家は零細ではあるが、決して弱者でも困窮者でもない。農家の総所得は勤労者世帯より2割以上多い。ただし、農業所得は総所得の14%に過ぎない。日本の農家は零細ではあるが、農地という資産を保有し、勤労者世帯よりはるかに豊かである」や、29日の神門善久教授の解説「農家が農地の農外転用で手にする収入は年間4.8兆円で、毎年の作物生産額5.8兆円の8割に相当する。零細農家の多くは兼業農家で、土地持ちサラリーマンか土地持ち高齢者と言って過言でない。農外転用はまたとない錬金術で、農地は宝くじである」も参考になります(書くのを忘れていました)。