政策の評価

14日の朝日新聞「時々刻々」は、アメリカのブッシュ政権が議会に提出した、イラク情勢に関する中間報告を、取り上げていました。そこでは、政権の戦略とともに、イラク政府が果たすべき努力目標が18項目示され、達成状況が採点されています。及第点を与えられたのは、半分以下です。
先日、このHPで「検証・行政の評価」を書き、政策の評価にも言及しました。ちょうど良い例なので、紹介します。
この報告は、議会が政権に義務付けたものだそうです。「努力目標項目は、議会が設定した。よって、判断基準の一部に過ぎない」と、国防総省高官が語ったとも書かれています。政権側が評価するのですから、客観的でないとの批判も出るでしょう。しかし、それが次の政策への判断材料になります。
政策の評価、そして議会の役割を、考えさせる教材です。日本では、多くの審議会や懇談会がつくられ、政策の議論がされます。しかし、それは新しい政策を検討することが、多いのです。実績を評価する第三者機関としての働きは、ほとんどありません。官僚の隠れ蓑といわれるゆえんです。
また、評価するためには、評価する項目と物差しが必要です。「おおむね問題ない」では、次への参考になりません。

派遣自由化

14日の朝日新聞「変転経済」は、労働者派遣法でした。規制緩和の歴史が、簡単な年表になっています。1986年に派遣法ができて、99年に原則自由化になりました。記事は、99年改正を取り上げています。長期不況と規制緩和の流れを要因としています。
私は、派遣やパートの不安定さもさることながら、正社員との格差の大きさが問題だと考えています。

フランスの分権改革

8月21日に、マルクー・パリ第1大学教授の講演会「フランスの第2次地方分権改革」が、日本財団で開催されます。詳しい内容と申し込みは、リンクを張ったHPを見てください。以下、山崎榮一・元クレアパリ事務所長による、解説の抜粋です。
・・1980年代初頭のミッテラン大統領による地方分権改革を第1次とすると、その20年後のシラク大統領による地方分権関連の憲法改正(2003年)、及びその後のラファラン首相により推進された一連の地方分権改革が、第2次と呼ばれる。
第2次改革は、「地方分権型国家」のための諸原理を憲法に規定し、その後の立法改革を方向付けるとともに、地方の実験、決定型住民投票、国から地方への権限移譲、自主財源の確立と権限移譲に伴う財源補償、国家公務員の地方公務員への身分移管などです・・

小西先生の新著

小西砂千夫関西学院大学教授が、「地方税制改革の政治経済学ー相互扶助の精神を生かした制度設計」(有斐閣)を、出版されました。三位一体改革から道州制・地方債改革・破たん法制まで、現在の地方財政改革が取り上げられています。
その際の視点は、次のようなものです(序章p1~11)。
・地方財政には、2つの観点がある。すなわち、自治体での財政運営論と、国家での地方財政制度構築論である。前者については、各自治体で競争が始まっている。しかし後者については、ノウハウが少数の関係者にのみ共有されており、また全体像を見渡した改革は、なされていない。
・小泉改革は、市場主義的地方財政制度を目指すものであった。筆者は、それに与することはできない。
・日本の農政を批判する言葉に、「農家は保護したが、農業は育てなかった」というものがある。地方財政・地方自治についても、同じことが言えるのではないか。総務省は、地方にとっての利益代表と、規制者の両者を使い分けて省益を守ってきた。早く方向転換すべきであった。

鋭い指摘です。詳しくは、本をお読みください。昨日、私の仕事場まで、ご本を届けてくださいました。「全勝のHPで、宣伝せよ」とのご指示なので、ここで紹介します(笑い)。

授業の終了

今日で、無事に慶応大学の授業(春学期)を、終えました。休講もあり、授業は合計10回でした。予定していた内容・項目は、すべて話すことができました。
私がこれまで受け持った講義や講演の聴衆は、大学院生、公務員、学者がほとんどです。学部生相手の授業は初めてなので、少し苦労しました。学生は、行政学を履修しているとしても、現実の行政を知りません。また、近過去の日本の歴史や出来事を知らないのです。それに新聞も読んでいませんし(おっと、それは授業開始時での調査なので、現在は私の授業を受けている学生は、毎日、新聞を読んでいると思います)。第一次湾岸戦争、バブル崩壊、BSE牛問題・・・といっても、それを解説することから始めなければなりません。
学生の反応は、学期の途中でアンケートを取り、確かめながら進めました。ほとんどの学生が(全員とは言えませんが)、居眠りすることなく、熱心に聞いてくれました。まずは、理解してもらえたと思います。出席者も大きく減ることはなく、最後の授業も、60数人が出席していました。なるべく実例、体験を基に話しました。脱線も、たくさん入れました。90分間、興味を持ってもらうのは、それなりの苦労が必要です。
成績は、出席とレポートです。力作が提出されることを、期待しています。
この授業を基に、この秋から連載をする予定です。乞うご期待。また、秋学期は、地方自治論を担当します。どのような話にするか、夏休みに考えます。本に書いてあるような話だと、面白くないですよね、しかし、自治制度の基本は、教える必要があるでしょうし。難しいところです。