21日の朝日新聞別刷り「be on Saturday」、山田厚史編集委員の「読み解く、債権国なぜ買われる」から。
・・不可解なのは、世界最大の債権国である日本の企業が、買収におびえるという事態だ。世界最大の借金国・米国にかじられている。外貨をしこたま貯め込んだ国が、資金不足の国に攻勢をかける、ならわかる。その逆が起きているのだ。
この逆転構造は、「円安」と同根である。日本の国際収支は年間20兆円を超える大幅な経常黒字。稼ぎが増えれば円が高くなり、やがて貿易や資本取引が均衡するというのが自然である。そうならない理由の一つは、輸出企業が稼いだドルを円に換えず、海外で再投資していることにある。「あり余るドル資金を何に運用するか、日々頭を悩ませています」。日本を代表する自動車メーカーの金融子会社の役員は苦労している・・
日本がモノ作りで稼いだカネが米国の投資ファンドに流れ、日本企業が買収不安におののく、という皮肉な事態が起きる。根源は日本の超低金利だろう。有利な運用先が日本に見あたらない・・日銀が金融をじゃぶじゃぶに緩和しても、国内で使われず海外に流出する・・
日本のカネが米国を支えるという構造が、さまざまなゆがみを生んでいる。日本が稼いだカネを、日本で使う知恵が求められている。