3日の東京新聞が、日本国債の格付けを解説していました。アメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、4月に日本の長期国債の格付けを、AAー(ダブルエー・マイナス)から、AAに引き上げました。「財政再建、金融政策の正常化、構造改革に進展が見られる」との説明です。
2001年までは、最上位のAAAだったのですが、その後、国債発行残高の急増や財政硬直化を理由に引き下げられました。今回の引き上げは喜ばしいことなのですが、手放しでは喜べません。この格付けは、チリや香港並み、G7ではイタリアの次に低いのです。別の会社のムーディーズでも、G7で最低、台湾、チリ、ボツワナより低いのです。
2002年に、日本国債が「ボツワナより下になった」ことが問題になりました。ボツワナには失礼なのですが。その際の議論を、調べたことがあります。財務省は、格付け会社宛の意見書の中で、次のような主張をしました。
「1 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
2 格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高」
「・・・日本政府は紙幣の発行か債務不履行のいずれかでしか抜け出すことのできない、国内債務の罠に填ってしまうかもしれません。そのようなシナリオでは、日本政府は巨額な国内債務の残高全額の紙幣発行に至るような財務破綻や経済不安のリスクを取るよりはむしろ、債券保有者との債務リスケジュール(返済繰延べ)を実施する可能性があります。」
すなわち、財務省は、日本は対外的に債権国であり、国債はほとんど国内で消化されているから問題ないと主張しました。一方、格付け会社は、巨額の政府債務=国の財政運営を問題視し、国債の格付けを低くしたのです。問題視されたのは日本経済でなく、国の財政運営能力でした。