月別アーカイブ: 2007年2月
お詫びの仕方・付録
一昨日から連載している「お詫びの仕方」の付録です。
お詫びの会見に備えて想定問答を作るといいましたが、これは記者会見の場で使うものではありません。数字や事実を確認するために見ることはあっても、質問に答える際に、そんな紙を見ている暇はありません。一通りの答は、頭にたたき込んでおく必要があります。その場で紙を見ているようでは、「あ、この人カンニングペーパーを見ている」と思われ、信用をなくします。分厚い資料を用意させ、それを会見場に持ち込む人がいますが、意味ないですね。
横から資料を差し入れる部下がいますが、これもよくないです。「上司ができが悪いので、部下が支えています」と見えます。必要なら記者会見している者が「ちょっと待ってください、間違いがないか確認しますから」と言って、部下を呼べばいいのです。それくらいは、記者達も待ってくれます。
説明の際に必要な数字、聞かれそうな数字なら、読み上げるのでなく資料を配付すべきです。
また、部下職員・担当者を横に座らせて「その点については担当者から答えさせます」というのも、よくないです。責任者なら、ほぼすべてを一人で答えるべきです。技術的なことで専門家に説明させることはあるでしょうが、聞いている人は記者であり一般市民です。その人に分かるように説明できないようでは、責任者として失格でしょう。
昨日の「厳しいことを言ってくれる部下はありがたい」という記述について、読者から指摘がありました。「真実を語ってくれる部下、都合の悪いことを知らせてくれる部下も、ありがたいですよ」と。その通りですね。
「岡本さんの図上演習は、いつも風呂の中ですか(笑い)」という質問もありました。うーん、そうですね。お風呂の中は邪魔が入らずに、ゆっくりと考えることができるのです。また、記者会見の前の日は、お風呂に入りたっぷりと睡眠を取って、体調万全で臨むこととしていました。お詫びの会見は、入学試験より緊張しますよ。しかも、たくさんの人に見られているのです。全人格で勝負しなければなりません。体調不良では、良い受け答えができません。
お詫びの仕方・中身が大切
昨日、「お詫びの仕方・形も大切」を書きました。しかし、本当に大切なのは、もちろんその中身です。
基本は簡単です。「嘘はつかない、よけいな言い訳はしない」です。人間だれだって、穏便に済ませたいです。でも、世の中は、そんなに甘くはありません。後でばれたときのことを考えれば、分かった時点ですべてを公表し、素直にお詫びすべきです。天網恢々疎にして漏らさず。隠すと必ずばれます。また、「いつばれるか」とびくびくして暮らすのは、健康によくありません。
私が、県庁の不祥事を知ったときに考えたのは、次のようなことです。その問題を上司として知らなかったことは、私の責任である。しかし、これはいわば受動的な責任である(この極端な例が、前任者の時代の問題が後任者の時に発覚した場合です)。管理職になったら、このようなことも覚悟しなければなりません。業界では「地雷を踏む」と言います。
それに比べ、その後始末をし、再発防止をすることは、私の責任であり、これは能動的責任です。前者は「すみません、監督不行届でした」と言えますが、後者はそんな言い訳は通じないのです(この点については「富山県庁の挑戦-私の行政改革論」(1998年、富山県職員研修所)に書きました)。
さて、お詫び記者会見に戻りましょう。あなたがカメラの前でお詫びするとき、その映像を市民が見て、納得するかどうかです。もし、あなたが、企業の幹部がお詫びしている映像を見て、「あれじゃ納得できない」と思うなら、あなたが頭を下げるときに同じことをしては、市民は納得できないのです。事故を起こし、被害を与えていながら、「ご迷惑をおかけし」とか「世間をお騒がせし・・」はないですよね。日本語として間違っていると思いませんか。被害と迷惑とは違います。
有名企業の幹部のお詫びが下手なのは、一つには経験がないこと、もう一つには取り巻きがイエスマンになって十分な助言ができないからでしょう。エリート街道を歩いてきた人は、そのような経験がないのです。民間企業も同じとのことですが、事前に記者会見用の想定問答をつくります。その時に、部下に任せては、彼らは答えやすい問を並べるのです。そして、当たり障りのない答弁を書くのです。でも、そんな想定問答は、役に立ちません(ここで、ふだん部下にどれだけ自由に発言させているか、上司のことを思っていてくれるかが、分かります。その点、私は厳しいことを言ってくれる部下を持って幸せでした。「部長。そんな説明では、記者達は納得しませんで」と)。
自分が市民だったら、またその代表であるマスコミの記者だったら、「何を聞くか」を考え、それに対し「どう答えれば、納得してもらえるか」を考えればいいのです。それは、自分で考えるしかありません。私は、よく風呂の中で模擬試験・シミュレーションをしていました。もっとも、どう答えても簡単には許してもらえそうにないので、模擬試験の最後の解答は、しばしば「開き直って、お詫びする」でした。
記者会見の質問には、逃げずに最後まで答えること、分かっていることはその通り答え、分からないことは分からないと言うこと。これしかないのです。
恥をさらすようですが、後輩達に少しは役に立つかと思って、書いてみました。笑わないでください。この項、続く。
新しい仕事55
昨日、国家公務員の中途採用枠について書いたら、何人かの人から問い合わせがありました。「詳しく知りたいのですが」とか「私の知人も受けたいと言ってます」と。再チャレンジ室にも、たくさん電話があったそうです。私も昨日の記事を書くときに、インターネットで人事院のページなどを探したのですが、見つからなかったので、今日確認しました。まだ、広報はしていないとのことです。早く、HPに乗せて欲しいですね。