私は、役割変化の方向の一つが、業界振興から生活者保護への転換だと思います。これまでの追いつき型行政・発展途上国行政では、業界を保護することで、各分野を振興しました。これは、工業・農業といった産業だけでなく、建設、運輸、金融、教育、医療といった分野もです。需要側でなく供給側を育成すること。この方法は、発展途上時代には効率が良かったです。しかし、その目的は達しました。多くの分野で、国が支援しなくても、民間は自ら活躍しています。独り立ちできるのです。
逆に、業界保護と消費者保護がぶつかった場合、官庁が業界寄りで、問題を大きくしました。公害問題はその典型です。水俣病でも、被害者救済が遅れました。最近では、薬害エイズの時の厚生省薬務局、不良債権問題の時の大蔵省銀行局、BSE牛問題時の農林水産省畜産局で、この問題がよく見えました。生活者や消費者より業界の利益を優先したと、批判されたのです。
そして、薬務局は解体再編、銀行局は大蔵省から分離、食の安全については内閣府に食品安全委員会を設置(食糧庁を廃止)しました。そこには、業界の振興と消費者の利益保護の2つの行政を、分離しようとする意図があるのです。もっとも、金融庁は、その2つが一緒の役所になりました。しかし、銀行などに対する業務停止命令を、たびたび発するようになりました。