(上からの割付方式)
私の研究テーマの一つに、組織論があります。日々の仕事のなかで、次々と考えさせられる問題が生じます。今日は、「下からの積み上げ方式」と「上からの割付方式」について述べましょう。
どの役所でもあると思いますが、国会(議会)答弁をどの課が書くかで、もめることがあるでしょう。これまでにない質問や複数の課にまたがる質問だと、関係課同士で、譲り合い(押し付け合い)をするのです。これを、下からの積み上げ方式でやっていては、いつまでたってもけりがつきません。早く結論を出すためには、上からの割付方式(より上位のものが担当課、担当者を決めること)が良いのです。
役所としては回答しなければならないけれど、担当する適当な部署がないことも、まま生じます。それは、各課の編成(所掌事務の割付)が時代に合っていないか、あるいはこれまでにない問題が生じたからです。それをこれまでの各課で議論していても、引き受けるところがないのは当たり前です。このような場合に、「積み上げ方式」は役に立たないのです。役所の縦割り組織(各課の編成)は、既存テーマについては積み上げ方式で機能を発揮しますが、これまでにないテーマの場合はそれでは機能しないのです。割付方式で、ある課に割り付けてあげないといけないのです。
組織内での意志決定方法として、「ボトムアップ方式とトップダウン方式」の対比があります。これはあるテーマについての意志決定の方法についてですが、私の言う「積み上げ方式と割付方式」は、同じことを組織論として述べています。
(上司の仕事)
これに関連してもう一つ、「誰が書くか」という問題があります。各課が答弁作成を拒否するのは、担当者が今までに書いたことがない質問だったり、回答が難しい質問だからです。すると、それ以上課員に対し書くことを強要しても、良い答えが出るとは思えません。その場合は、誰か上司のしかるべき人が書くべきでしょう。
ここには、二つの課題が含まれています。これまでにない問題である場合は、下位の職員が書くと良い答えにならない。その場合は、上司が筆を取るべきであること。もう一つは、各課にまたがる課題なら、それぞれの課が書いても良い答えにならない。その場合は、その両課を所管する上司が書けば良い答えになるということです。課長になったら、自分ではペンを持たず部下の書類にノーを言うだけ、というのは間違った考えだと私は思います。
(何でも屋が必要)
もう一つ、そのような運用改善だけでは、解決できない問題もあります。どうしても、引き受け手のない問題の場合です。そのような場合には、誰も引き受けない問題を引き受ける部署を作っておく必要があります。総務課とか企画部は、そのようなときに機能を発揮します。
上司の立場から見ると、早く良い答弁を書いてくれることが良い結論であり、それが良い組織なのです。これは、関係職員にとっても同じです。みんな早く帰って寝たいのですから。「上からの割付方式」とは、そのような観点から見た組織論です。