18日の読売新聞は、青山彰久記者が「三位一体、税源移譲・交付税改革、見えぬ決着点。最終年度に問われる小泉政権の力」を解説しておられました。
「改革のヤマ場は越えたかのような空気が漂う。だが、補助金を削って税源を移し、地方の自由を広げて歳出構造を変え、交付税をスリムにするのがゴールとすれば、現状は遠い」。
ご指摘の通りです。(5月18日)
19日の日本経済新聞は「三位一体改革攻防再び」「義務教育争点に」を書いていました。「『6000億円の税源移譲に結びつく補助金改革を確実に実施すべきだ』会議では麻生太郎総務相がこう述べ、公共投資関連の施設設備の補助金などを削り税源移譲するよう主張した」。朝日新聞は「財務・総務省対立再び」「地方交付税改革、抑制・維持、深い溝』と書いていました。
財務省は、地方の歳出削減ばかり要求していますが、平成13年度(小泉内閣発足時)を基準に取ると、平成17年度では、国の一般歳出は1.4兆円削減なのに対し、地方の一般歳出は6.6兆円もの削減です。しかも、国の予算は、この間の国庫補助金の一般財源化での減も含めてです。これを考慮すると、横ばいです。交付税総額も3.4兆円削減しました。この点は、拙稿「続・進む三位一体改革」をご覧ください。(5月19日)
18日の経済財政諮問会議での麻生大臣が説明した「地方税財政改革の推進」のうち注目すべきは、情報公開です。今までも各団体の財政状況や職員給与の状況は公表されていましたが、住民によりわかりやすくするため、全団体について同じ様式で公開することを進めます。インターネットで見ることができます。これによって、他団体との比較が簡単にできます。「地方税財政改革の推進」のp10です。(5月21日)
月刊「地方財政」5月号(地方財務協会)に、坪井ゆづる朝日新聞論説委員が「3年目の三位一体改革、民意の追い風が要る」を書いておられます。
「だれのための何の改革なのか、がはっきりしない。改革がうまくいけば、主権者である国民、住民が恩恵を受けるはずだが、その具体的な中身がなかなか見えてこない。だから、論議が3年目を迎え、いよいよ決着が図られるというのに、住民の生の声はほとんど聞こえない」
「国民、県民、市民といった、さまざまな立場を併せ持つ住民が主役である以上、個々の自治体が担う役割は大きい。住民がそれぞれの場面で主権者として発言し続けなければ、この改革は進まない。今こそ民意をまとめ、それを追い風にする工夫が自治体に求められている。」
また、矢野浩一郎元自治省財政局長の講演録「高度経済成長から安定成長へ~地方交付税の成長と質的転換」が載っています。交付税の歴史に関心のある方は、是非お読みください。昭和30年代から50年代の間の、交付税改革の歴史、交付税が果たした役割などが、コンパクトにまとまって、またポイントが的確に解説されています。長い論文より、わかりやすいです。
矢野さんは、交付税創設期、充実期、投資的経費算定改革期に担当された方です。また、その後も財政局幹部として、交付税に携わってこられました。私もご指導を受け、矢野さんを「交付税の生き字引」と尊敬しています。(5月23日)
25日の毎日新聞社説は、「三位一体改革-地方分権推進が出発点だ」でした。「既得権益や省益をからませてはいけない。地方財政改革といいながら、自らの権限を維持しようという思惑が見え隠れするのでは、住民自治に反する。」
「その観点からすれば、今秋までに中央教育審議会で結論を得ることになっている義務教育費8500億円の扱いは、補助金削減、税源移譲が当然である。文科省や自民党文教族の主張は、義務教育には国が責任をもつべきだという論理のもと、地方への関与を継続しようという意図が明白である。」(5月25日)
25日に中央教育審議会義務教育特別部会で、国庫負担制度の本格的な議論が始まりました。今朝の各紙は、大きくその様子を伝えていました。「制度堅持派と廃止を主張する地方側との間で、激しい応酬となった」と。(5月26日)