昨日付けの総務省の幹部人事異動について、大きく報道がなされています。総理が各省の官僚人事に「介入」したのは異例ではないか、という観点からです。私は詳細は知りませんので、発言できませんが、リクエストに応じて制度については、解説しておきましょう。
(幹部公務員の任免権)
各省の職員の人事権(採用・昇進等)は、各大臣にあります(国家公務員法第55条)。ただし、局長以上などの幹部職員の任免にあっては、閣議での承認(閣議決定による内閣承認)が必要です。これは、平成12年12月19日の閣議決定に根拠があります。これも、中央省庁改革の一環です。事前に、内閣の人事検討会議(官房長官主宰)に諮られます。
次に、事実についてです。今回の異動について、総理の意向が働いたことについては、総理自身が「麻生総務大臣と相談して決めた」とおっしゃっています(18日付け読売新聞、NHKニュースなど)。
(公務員の降格)
「降格だ」との報道がありますが、これは降格ではありません。総務審議官にあっては、職名も総務審議官のままで担当する所管が変わりました。局長にあっては、政策統括官へこれまた所管替えです。
ちなみに、指定職(省庁幹部、企業では取締役クラスと思ってください。課長以下と給料表が違います。勤勉手当がありません) には、大きく分けて4つのクラスがあります。次官級(各省の次官と、省名がついた審議官例えば総務省の総務審議官・外務省の外務審議官など)、外局の長官(消防庁長官など)、局長級(局長のほか、政策統括官)、審議官級(官房審議官、部長)です。
なお、今回の事例は該当しませんが、国家公務員は、決められた事由以外では、本人の意に反して降任や免職をされることはありません(国家公務員法第75条)。降任されるのは、勤務実績がよくない場合や、適格性を欠く場合、病気や職がなくなった場合です(同法第78条)。その場合は、処分の事由を記載した説明書を交付しなければなりません(同法第89条)。地方公務員法にも、同様の規定があります。
(政と官)
今回の人事は、「政と官」を考えるテーマとなりました。朝日新聞の18日の社説は、その点から取り上げています。
「これまでも幹部が追われる例があったが、不祥事が引き金だったり、政権交代にからむ政争だったりした。政策論の違いから起きた今度の人事とは、大きな違いがある。」
「政策を決めるのは、国民から選挙で選ばれた政治家であり、支持を失えば落選という形で責任を取らされる。官僚には、そんなけじめのつけようがない。」
「中立的で公正な専門家として、官僚は選択肢を示す。決断は政治家に委ね、無理な根回しは慎む。それが原則だろう。」