20日の読売新聞は解説欄で、青山彰久記者が「全国知事会の力、分権改革へ責任ある政策提案が必要」を主張しておられました。賛成です。思うのですが、こういう記事を、なぜインターネットで読めないのですかねえ。それでも、署名入りの記事は、良いですね。責任がはっきりして。
今年から、朝日新聞が署名入り記事を増やしたのは、良いことだと思います。それに比べ、最悪は社説です。「社説」ですよ。その新聞社の職員が全員、そのような主張をしているとは思えません。毎日、職場で多数決を取っているとも思えませんし。少数意見はないのでしょうか、朝日、読売、毎日、西日本、南日本、北日本・・。
僕が社員だったら、耐えられませんね。「職員みんな同じ意見を持て」なんて。何を言ってもいい自治省・総務省に就職してよかったです。
すくなくとも、書いた記者の名前を、明記できないのでしょうか。でも匿名に関してもっとひどいのは、公務員ですかね。うーん、言っていることに矛盾がありますね。
月別アーカイブ: 2005年1月
2005.01.16
「自治研究」平成16年12月号、17年1月号(第一法規)に、山崎重孝総務省行政体制整備室長の「新しい基礎自治体像について」が連載されています。十分に検討されることなく使われている「基礎自治体」という概念について、これまでの位置づけの変化・社会経済条件の変化・将来予測などを論じています。
制度の解説でなく、これまでの評価やこれからのあり方など、長期的かつ広い視点からの、読み応えある論文です。筆者は、地方行政制度の第一人者です。これからの自治体を論じる上で、重要な論文でしょう。ご一読をお奨めします。
日経グローカルセミナー「三位一体改革で国と地方はこう変わる」
夜の6時すぎなのに、みなさん熱心に聞いてくださいました。地方団体関係者だけでなく、研究者や企業の方もおられました。今回は、財政論でなく政治論で、しゃべってきました。主催者の「なるべく面白く」という要請を真に受けて、脱線やらジェスチャー入りで頑張ってしまいました。質疑応答の後で、「岡本課長って、本当にホンネでしゃべるんですね」といわれました。うーん、官僚はホンネでしゃべったらいけないのでしょうかねえ。日経グローカルに講演録が載りますが、添削しないと・・。
「三位一体改革や財政問題は、一般の人が読んでもわかる解説書や、一般の本屋に並ぶような本がない」との指摘ももらいました。耳が痛いです。今度機会があれば、チャレンジします。
日本の戦後政治
「三位一体改革が政治改革である」という主張に合わせて、参考になる本を紹介しておきます。去年6月に出た、山口二郎著「戦後政治の崩壊」(岩波新書)です。ここでは、戦後日本政治の仕組みと特徴を、4つの構成要素から説明しています。4つとは次のようなものです。
1 外交安全保障=9条と安保・自衛隊の共存
2 政党=自民党長期支配
3 政策=経済成長と開発主義
4 政策決定システム=官僚主導の政治
そして、それらが成功したこと、しかし新しい時代への適応と転換に失敗していることを論じています。
私は、「新地方自治入門」で、地方行政を通して、戦後日本の政治と行政が成功し、またそれが転換を妨げていることを論じました。山口先生の本は、私の主張を政治の構成要素から分析したもので、共感するところが多いです(もっとも、すべてに同意するわけではありませんが)。
私は、日本の政治について、第10章で論じました。そこでは、国民への負担を問わなかったことと、国際貢献をしなかったことを指摘し、争点設定と決断をしなくてよかったと述べました。「政治をしなくてよかった戦後日本」という表現でです。これが、先生の指摘する4要素が成り立ち得た条件であり、結果です。
三位一体改革40
26日の日本経済新聞は、小泉政権の経済政策について、エコノミスト234人の評価を載せていました。「6割以上の人が60点以上の及第点をつけた」そうです。
評価される点は、「手つかずの課題もあるが、首相自ら課題を設定、実行している。政権が長期にわたり、政策が継続している」「公共事業を減らしても、景気が回復する実例を作った」です。
最優先課題は、年金改革が1番で、三位一体改革が2番目、次が景気対策です。三位一体は、ここまで来ました。(12月26日)
27日の日本経済新聞「2004年地域経済回顧と展望」で「三位一体改革・地方関与が前進」を取り上げていました。「国会が地方分権の推進を決議して11年。分権に向けた政策決定に地方が直接関与する仕組みが今年、初めて整った」「『政府は約束を果たした、首長も地方の経営をしっかりとやってほしい』地方交付税の総額確保が決着した今月18日、麻生太郎総務相は全国の首長に奮起を促した」(12月27日)
麻生総務大臣の12月24日の記者会見が、総務省HPに載りました。今年の締めくくりとして、20分間にわたって、三位一体改革の評価を述べられました。ご自身の語り(読み上げでないもの)なので、少し読みにくいところがありますが、ご了解ください。大臣の生の声を、お聞きください。
28日の読売新聞「2004年回顧検証2」は、「三位一体改革:地方の声に省庁は反撃」でした。三位一体が、今年の政治でもっとも進んだ課題だったことは、間違いないでしょう。詳しくは本文をお読みいただくとして、さわりだけを紹介します。
「地方の声を聞いたのは、ぺり-以来150年ぶりだ」「閣僚と地方自治体代表が激突」「文部省の新聞広告に対して、飯島首相秘書官が『小泉をつぶす気か』と激怒」「小泉首相はこう語った。『今後、国と地方の役割について、より踏み込んだ議論ができるんじゃないか。いいきっかけになった』」
「地方と省庁が激突」という構図は、去年までなら、ありえませんでした。今はそれを、新聞が当然のことのように解説します。「進展が少ない」という批判もありますが、これだけで、今年の三位一体=麻生大臣の仕掛けと努力が成功したと、私は評価します。
毎日新聞「記者の目」は、加藤春樹記者の「地方分権は進んだか:国と四つ相撲した6団体、次は国民を味方にして」でした。この論文も、明快でした。詳しくは紹介できませんので、本文をご一読ください。(12月28日)
29日の読売新聞「解説」では、青山彰久記者が「分権・改革の覚悟、地方に必要」を書いておられました。「2005年は分権推進法成立から10年になる。」しかし「地方財政改革の改革速度は遅い」「地方6団体は、新しい制度の設計を提案し、地方から分権政策の立案に参画する力を高めることが不可欠だろう」「自由を求めれば責任も問われる」(12月29日)
30日の朝日新聞「04年日本経済・激動の主役(下)構造改革」は、「号令先行、結論と落差」という見出しで、郵政民営化と併せて三位一体改革を詳しく解説していました。(12月30日)
5日の朝日新聞「私の視点」に、山田啓二京都府知事が「三位一体改革、中央集権復活を憂える」を書いておられました。毎日新聞「よくわかるページ」は、三位一体改革の意味を、マンガ入りで分かりやすく解説していました。(1月5日)
9日の日本経済新聞「風見鶏」で、安藤俊裕編集委員が「骨抜きと先送りのツケは」として、政府・自民党の意思決定過程のあり方が異様であることを、解説しておられました。
「首相や内閣が掲げた改革構想が、自民党や官僚との調整プロセスでもみくちゃになり、結果は骨抜きと先送りである。首相・内閣が責任をもって政策を実行する一元的責任政治とは、ほど遠い姿と言ってよい」
「三位一体改革は、政府与党の統治能力を疑わせるような体たらくだった・・・」として、代表例に三位一体改革が取り上げられていました。
何度も書いたように、三位一体改革の目的は、日本の政治過程・政治構造を変えようとするものであるとともに、その実行過程が、日本の政治過程を反映したものなのです。
また、政治過程をあるべき姿にするためには、総理の政治力の他に、ここに書かれているマニフェストも有効です。そのために、新聞などによる検証が重要でしょう。期待します。
1面の連載「少子に挑む・ニッポン大転換」は、「未来描けば廃墟の山」を載せていました。需要予測を曲げてまで作った公共施設。そしてその維持費や修繕費が賄えません。この問題は、みんなが気づいています。問題を知っていながら先送りする組織。
官僚組織は、拡大の時には適していますが、縮小や終結には向いていないようです。開戦時に戦争終結を考えた日露戦争と、「一暴れして見せます」と言って勝算なき戦いに入った太平洋戦争との違いが、思い出されます。
政治家が責任をもつべきなのか、官僚が変わるべきなのか。続きは、またの機会に。(1月9日)