19日に、関係閣僚と地方団体代表との協議(分野別2回目)が行われました。新聞各紙によると「また平行線」だそうです。産経新聞によれば、「経産相が容認姿勢」とのことです。他の省の主張は、再度出席した厚労相を含め、補助率カットと交付金化です。
これが、地方団体の意見及び総理の趣旨にそぐわないことは、みなさんご承知のとおりです。補助率カットでは、地方の自由度が上がりません。それは、単なる負担の転嫁です。交付金化では、税源移譲になりません。地方団体が言うように、こんな会合だったらやってもムダですわ。調整なんてできません。
「総理の指示であっても、抵抗さえしていれば、進まない」といった「ごね得」は許されるのでしょうか。たぶん、総理は認めないと思います。
ある記者さん曰く、「地方団体は、自民党の有力な支持母体ですよ。総理も自民党の議員も、それを怒らせるような決着はできませんよね」。
でも、想定したくありませんが、地方案が進まない場合には、地方団体は「どのようにぐれるか」考えておくことも必要でしょうか。(10月20日)
20日の参議院予算委員会で、麻生総務大臣と財務大臣が対立したと、各紙が伝えています。所得税から3兆円税源移譲すると、交付税原資が1兆円(3兆円×32%)減ります。財務大臣は「新たに財源を見つけるのは難しい」。麻生大臣は「交付税が減少すると地方の財源不足が拡大する。いろんな手法で埋める」と答えておられます(朝日、毎日など)。
どちらが正しいか、よく考えてください。一見、財務大臣の説も、正しいと思えますよね。いつも私が使う「国の予算と地方財政計画の4本柱図面」で考えてみてください。3兆円税源移譲すると、国は△3兆円(税源移譲分)+1兆円(交付税跳ね返り分)=△2兆円です。ここで、財務大臣の手品がばれます。財務大臣がわかって言っておられるのか、事務方に言わされておられるのか・・。
21日の記者会見で、香山総務事務次官は次のように答えています。「これは、当然補てん措置を講ずべきものでありまして、この点については議論の余地はないと、私共は思っております。交付税の率を上げるのか別の方法をとるのか、そこはいろいろとこれからの議論だと思いますけれども。所得税が減ったために反射的に交付税が減る分については、減りっぱなしということは断じて有り得ないことでして、当然そういうことに臨んでいきたいと思っております」。
産経新聞は「三位一体:乱戦の構図」「倒閣か族つぶしか:首相vs族議員」を解説していました。何回か解説したように、この構図は本質的ではありません。でも、こういう対立構図は、小泉改革には有効でしょう。
ある記者曰く「小泉総理は、族議員と官僚の抵抗を『歓迎して』おられるでしょう。そうすれば、世論がますます小泉を支援すると。『私は旧来型の自民党をブッ壊す』ですよ」。なるほど。(10月21日)
22日の経済財政諮問会議では、交付税改革が審議されました。民間委員、麻生大臣、財務大臣がそれぞれ資料により、主張を述べられたとのことです。議論のポイントは、地財計画と実態との乖離をどうするかと、中期見通しをどうつくるかです。
もちろん財務省の主張は、交付税を大幅削減するためのものです。そのため22日の朝刊には、財務省の主張がいくつも「リーク」されていました。
夕方、国会から帰ってきたら(毎日国会に出勤しているので)、何人もの記者さんから「7兆円も交付税を削減したら大変ですが・・」と問い合わせがありました。
全:「そんなの、大蔵のいつもの手口やんか。毎年、夏と今頃になると、こんな記事が出るで。去年の新聞見てご覧。記者さんは1年で交代するから、知らへんのやなあ」
記:「そうなんです。でも、私だって、主計官から紙を貰ったら、喜び勇んで書きますよ。で、どうなるんですか」
全:「地財計画と交付税を削減するのは、閣議決定済み。ただし、安定的な財政運営ができるだけの額は保障することも、書いてある。16年予算で減らし過ぎて、地方団体の猛反発をくらったからね」
記:「じゃあ、削減額は、16年度とゼロとの中間ということでしょうね」
全:「12月末に予算が決まったら、二人で検証しようや」
地財計画議論の2つのポイントについては、別に解説しましょう。(10月23日)
23日の各紙は、22日の経済財政諮問会議を載せていました。総理は、義務教育費国庫負担金の削減に文部省などが強く反対していることについて、「みんな反対、反対という。しかし、やらざるを得ない」と記者団に述べ、地方案に沿って削減案をまとめる決意を強調しました(毎日新聞、読売新聞など)。
産経新聞は「三位一体・乱戦の構図」第3回を、毎日新聞は宮田哲記者による「ヤマ場の補助金削減・地方も問われる説明責任」を載せていました。24日の東京新聞は「三位一体改革ヤマ場へ」「地方:自由な財源、分権加速vs省庁・族議員:なくなる仕事・影響力」を解説していました。(10月25日)
26日の東京新聞は、「補助金削減の衝撃・三位一体改革の今」上「自立」を載せていました。「地方にとって三位一体改革は、国への依存体質から脱却するチャンス。だが、カネを手にすると同時に責任も負う。地方の想像力、そして覚悟が問われることになる」(10月26日)
25日の日本経済新聞社説「地方の自由度を広げる補助金改革に」は、三位一体改革の理念や意義をわかりやすく解説していました。「失敗は住民の責任に」とです。優れた論文だと思います。ぜひご一読ください。(10月25日)