28日に、指定都市市長会が「三位一体改革の基本的な考え方」を取りまとめ、提言しました。そのうち国庫補助金については、義務教育費負担金を含む経常的な補助金は、税源移譲し廃止する。生活保護や災害復旧の負担金は存続する、という主張です。
廃止する補助金は次の3分野で、合計7.8兆円です。
①経常的なもの:3.4兆円(個人住民税で移譲)
②道路整備:1.5兆円(道路特定財源を移譲)
③その他の投資的なもの:2.9兆円(税源移譲の方法は別途検討)
また、19年度以降も改革を継続することを主張しています。着々と進んでいますね。(7月30日)
4日付け東京新聞には、西尾理弘出雲市長へのインタビューが載っていました。市長は元文部官僚です。「小中学校は、市町村立。市町村立学校というからには、財源も人事管理も市町村自らができるようにすべきではないか」
4日付の読売新聞は、来年度の予算特集の一つとして、三位一体改革を載せていました。もっとも、何を主張したいのか私にはわかりません。そこで、公平のために紹介はしますが、コメントは差し控えます。(8月4日)
7日の日本経済新聞には、藤田英典国際基督教大学教授の「義務教育費負担金の一般財源化論 学校の質、格差広がる恐れ」が載っていました。その主張は、「もし国庫負担金が一般財源化されたら、どうなるか。・・・そうなれば教育の地域格差は今以上に拡大する」だそうです。
「今の地域格差」とは、なんでしょうか。現在のように国庫補助金があっても、「地域間格差」があるのでしょうか。それは、教育のどのような質についてでしょうか。それとも、先生の給料について差がでているのでしょうか。
どの地域で、どこの地域に対して、どのような差がでているのでしょうか。まず、それを実証あるいは説明する必要があります。そして国庫負担金がなくなると、それがどのように広がるのかを説明すべきでしょう。それがないと、説得力がないですよね。学者が書いた論文とは言っても、「ええかげん」ですねえ。そう思いませんか(財政力の高い東京の方が、貧乏な明日香村や富山県より、いい教育をしているという証拠をみてみたいですね)。(8月9日、10日)
ここ数日の新聞は、20日に取りまとめられる予定の「地方団体の補助金削減案」の予測記事でにぎわっています。
10日に文部科学大臣は、義務教育制度改革私案を発表しました。6・3制弾力運用などです。唐突ではありますが、ようやく文部省が、補助金官庁から政策官庁へ転換しつつあるのでしょうか。それならば、好ましいことです。もし、国庫補助金温存のためのテクニックなら、残念です。
12日の朝日新聞社説は「補助金削減 義務教育も聖域ではない」でした。「これまで政府は権限と補助金を握ることで、全国の教育行政を牛耳ってきた。・・だが、いじめや不登校などの問題を克服するためには、地域ごとの創意や工夫が欠かせない。・・・中央集権から地方分権へという理念は教育にも当てはまる」(8月12日)
11日に関西社会経済研究所が、「三位一体改革の促進」について提言を発表しました。今回進めている三位一体改革の次に、さらに三位一体改革を進めるべきであること、そして8兆円の補助金削減と6兆円の税源移譲を求めています。とりまとめの中心は、齊藤愼大阪大学教授と林宏昭関西大学教授です。(8月12日)
15日の朝日新聞は、「補助金改革、地方案づくり大詰め」の表題で、増田寛也岩手県知事と神野直彦東大教授へのインタビューを載せていました。
増田知事は、政府の政策決定に自治体が参画する意味、平成19年度以降の「三位一体改革第2期」への布石、消費税増税時の地方の取り分などを述べておられます。これらの点は、拙稿「進む三位一体改革-評価と課題」(下)で述べておきました。
神野教授は、世界的潮流として、福祉国家から地方分権への流れが出てくることを述べておられます。そして、安全ネットを張り替える役割を中央政府から地方団体に変えたこと、現物給付は地方団体が引き受けていること、自治体が家族の代わりとなっていること、などを説明しておられます。(8月15日)
8月15日の読売新聞には、西尾勝先生が「自治体の選択拡大を」の表題で、分権改革について述べておられます。日本は1990年代から大きな曲がり角に入り、成熟社会になったこと、そこで分権が必要になったこと、そして市町村合併と三位一体改革について解説しておられます。
8月16日の東京新聞は、「義務教育費制度見直し、学校はどう変わるの?」を解説していました。見出しは「市町村の責任より重く」です。また、16日の産経新聞「正論」は、米長邦雄東京都教育委員会委員の「義務教育費は国で全額負担が筋」を載せていました。(8月16日)