行政評価

月刊『自治研究』(第一法規)8月号に、砂原庸介執筆「行政と評価-地方自治体の行政評価が意味するもの」が、載りました。砂原君は、東大大学院の若き社会学者です。私の東大でのゼミの「塾頭」もしてくれています。
論文は、行政評価の導入手法等を研究したのではなく、なぜ今の時期に行政評価が導入されたかを、広い視野から研究しています。そして、政治と行政に対する「信頼」確保のためであると位置付けています。『自治研究』は、公法・行政・地方自治関係では、もっとも権威ある専門誌です。地方自治体関係者など広く読んでいただきたい論文です。

2003年度普通交付税額

今日、2003年度の普通交付税の各団体別交付額を決定し、閣議に報告しました。今年度の総額は、約17兆円。前年度に比べ、7.5%の減です。詳しくは、総務省のHPをご覧下さい。併せて、臨時財政対策債(赤字地方債)、地方特例交付金、減税補てん債も決定しました。関係者の方々、ご苦労様でした。国家財政の5分の1もの金額を、間違いなく計算することは大変ですよね。

神野先生の新著

神野直彦東大教授池上岳彦立教大学教授の編集による「地方交付税何が問題かー財政調整制度の歴史と国際比較」(東洋経済新報社)が発刊されました。以下、はしがきの要約です。
「競争社会」を目指す経済学思想に基づいて、地方交付税制度は破壊されようとしている。「地方交付税は弱者に甘えをもたらし、非効率であるがゆえに、弱者となった者に非効率な乱費をもたらすだけである」などと、したり顔で主張されている。
こうした「構造改革」が失敗しているのは、「何のために改革をするのか」という改革の基本原則を無視したからである。地方交付税の改革もまた、財源保障機能の廃止を言い出すに及んでは、ヴィジョンなき破壊の典型である。必要な改革は、制度の破壊ではなく、未来の設計図を準備した改革である。本書では財政調整制度を国際比較と歴史的観点から分析し、財政調整制度の改革の方向を提示する。

米国まめ日記8

メディア・オーナーシップ・ルール
 KDD、日本テレコムほか5社が、総務大臣に対して「NTT東西の第一種指定電気設備に関する接続約款の変更」認可の取消を求める行政訴訟を提起したニュースが米国にも伝わってきましたが、こちらでも今、規制当局が行った決定に対する”反発”が起きています。
 去る6月2日、米連邦通信委員会(FCC)は、テレビ、ラジオ、新聞などのメディア企業が所有できる放送局の数や、同一市場でテレビ局と新聞社の両方を所有することを制限している1996年連邦通信法に関する規制緩和を決定しました。
規制緩和の具体的な内容としては、
・ テレビのネットワークは、視聴者の45%をカバーするテレビ局を所有することができる(現行は35%)
・ ほとんどの場合、メディア企業は、上記と同じ地域で新聞社とラジオ局の両方を保有することができる
といったものです。
 この規制緩和に関する米連邦通信委員会の投票は、共和党委員3名が(委員長を含む)が賛成、民主党委員2名が反対という、俗にいう”パーティ・ライン”に沿ったものとなりました。反対票を投じた委員は、「今回の規制緩和が放送内容の多様化を阻害し、ひいては民主主義の終わりにつながる。」と述べていますが、反対者の多くも、これと同じような考えに基づいているようです。
 上記の規制緩和に対する反対の形として、今までのところ以下のようなものが見られます。
 まずは、米連邦通信委員会に対する直接的な陳情といったものです。ただ、通常このような試みは、ほとんど成功することはないようです。
 他の動きとして、「訴訟」が挙げられます。規制緩和への反対者は、米連邦通信委員会の決定をひっくり返すべく、連邦高裁(the Court of Appeals)に訴訟を提起することができます。
 おもしろいのは、立法府の動きです。上院では、現行の「35%キャップ」を維持する法案が、共和党及び民主党の有力議員により提出され、今後審議される予定です。
 また、現在審議されている歳出法案(Appropriations Bill。米国の予算は「法」によって決定されているのです。ちなみに、米連邦通信委員会の予算を決定する法律案は、the Commerce-Justice-State Appropriations Bill)に、民主党の有力議員により提案された「米連邦通信委員会が35%の旧キャップを超えるメディア企業にライセンスを認めることには予算を認めない」といったような規定が入っているようなのですが、この法案が7月16日、下院の歳出委員会において、40対25で採択されたようです。
 現時点で、今回の規制緩和の運命がどのようになるか予測は困難ですが、もうしばらく、動きを追っていきたいと思っています。