サクラ
3月19日に始まった米英軍によるイラク攻撃(その作戦名「イラクの自由作戦」(Operation Iraqi Freedom))も、4月9日時点ではイラクの首都バグダッドが米英軍に制圧され、フセイン体制も事実上崩壊したとのことであり、終結に近づいているようです。
この「戦争」の一当事者の首都ワシントンに暮らしていても、戦争を感じさせるものは、反戦デモ、戦争関連ニュースがほとんどを占めるニュース報道(ちなみにこちらのニュースでは天気予報の際、イラクの天気予報も流しております。)、タクシーの運ちゃんの世間話といったものであり、それらはきっと日本にいたとしても感じられるようなものではないかと思います。緊張感が非常に高まっているというような状況ではありませんが、そいうはいっても今は戦時下。そのような中、ワシントンでは、今年も「桜祭り」(National Cherry Blossom Festival)が予定通り開催され、多くの観光客等で賑わいました。
DCの中心にあるモールと呼ばれる公園地帯(モールの東端にある国会議事堂から西の端にあるリンカーン記念館までの距離は3.5Kmほど)にあるタイダル・ベイスンと呼ばれる池(ホワイトハウスの南側に位置する)の周りには、日米友好の証として1912年、当時の東京市長尾崎行雄から送られた桜の一部が植樹され、毎年春になると見事な花を咲かせています。
そして、毎年その桜の開花時期にあわせ桜祭りが開催されています。桜は、タイダル・ベイスンの周りだけでなく、メリーランド州の高級住宅街(Kenwood地区)などでも楽しむことができます。外国、それも米国で日本と比べても遜色のない桜を楽しめるとは思っていませんでした。
日本と同じくワシントンでも桜は人気者で、米国では公共の場での飲酒が原則として禁止されているため日本の花見とは趣を異にするものの、米国人も桜の下を散歩したり、桜の木の近くでピクニックをしたりして桜を楽しんでいるようです。また、3月に入ったころから、米国政府の役人との会話の中にも桜がたびたび登場するようになります。「今年の桜はいつごろ咲くのだろうか」「タイダル・ベイスンの桜は元々日本が贈ってくれたものらしいんだけど、本当にいいものを贈ってもらったよ」などといったものなのですが、いつも仕事以外の会話のネタ探しに苦労している私にとって桜は正に救世主です。
最近異動された方の挨拶の中に、「戦争、身内の不幸などなど、人の世の営みとは関わりなく、春は巡り、春が来れば桜は咲くのだ、と改めて自然の力に感服しております」という一文がありましたが、本当に自然の力は偉大であり、特に桜の花は、人々を引き付ける大きな魅力を持っているなあと強く感じました。
しかし、桜の花の命は短く、タイダル・ベイスンの桜も、昨日降った雨のためだいぶ散ってしまったようです。私の米国役人との会話のネタ探しの旅はこれからも続くのでした・・・。
P.S.地球の歩き方の一コラムによれば、1943年の太平洋戦争の真っ只中、ジェファーソン記念館を作るためにタイダル・ベイスンの桜を何本か移動させた際には、桜愛好家が自分の体を桜の幹に縛り付けて抵抗したとのことです。米国での「戦時下」というのは、いつの時代も変わらないのでしょうか。