「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

まだ長い日本人男性の労働時間

5月6日の日経新聞経済教室は、柴田悠・京都大学教授の「日本人の休み方、人口構造の変化に遅れた対応」でした。詳しくは記事を読んでいただくとして、興味深い数字が行くも並んでいます。

・・・長時間働いていると生産性は低下する。豪セントラルクイーンズランド大のドリュー・ドーソン教授らの実験によれば、起床後5時間を超えると人間の認知的精神運動能力の成績は上がるが、13時間を超えると成績が下がり、「酒気帯び」相当の血中アルコール濃度での成績に匹敵するか、下回るほど落ちてしまう・・・

このあと、起床後に能力が上がり始めるのが遅いであろうことに留意すると「生産性を高く持続できるのはせいぜい8時間」との示唆が得られる、と書かれています。また、「脳機能を高く維持するには7時間睡眠が必要」という示唆も得られます。すなわち、生産的に働くには、「労働は8時間以内、睡眠は7時間以上」が重要です。

労働時間の長さではなく、時間当たりの生産性による人事評価へと転換する必要があるのに、日本は昭和の長時間労働の成功体験に引きずられたのです。生活時間調査によると、日本の正規雇用者やフルタイム労働者は、まだ平日に平均10時間の長時間労働をしています。欧米では8時間前後です。
1970~2015年の経済協力開発機構の分析によると、多くの国で年平均労働時間が減るとともに、労働生産性が上がっています。

若手社員、電話が怖い

5月12日の朝日新聞夕刊に「若手社員、電話が怖い SNS世代、退職するケースも」が載っていました。

・・・電話が嫌で嫌でしょうがない――。電話がプレッシャーで、若手社員の退職につながるケースもあるという。企業は電話の代行や研修を進めるほど。苦手な理由を本人たちや専門家に聞くと、SNS世代ならではの「責任感」が浮かび上がった。

「電話応対が嫌で辞める若手社員が増えて、困っている」。企業向けの電話応対研修を行っている「ドゥファイン」(東京都)には、そんな相談が相次ぐ。
同社は年間100社以上に固定電話の使い方や話し方の研修をする。「固定電話を初めて触った」と話す若手社員も珍しくない。
この春から都内で働き始めた公務員の女性(27)は「仕事でも、できることなら電話に出たくない」。自分が話せなくて沈黙が生まれることを恐れる。コンサルティング会社に勤めて4年目の女性(26)も「その場での判断が求められるため、取り返しのつかないことを言わないように、というプレッシャーがある」と話す。

「電話恐怖症」の著書があるカウンセラーの大野萌子さんは10年前、新入社員から「電話が嫌で会社を辞めたい」との相談を初めて受けて驚いた。その後、同様の声が年々増えているという。
若い世代は「言葉の責任感が強まっていると感じる」と大野さん。「思いもよらない一言がネット上で『炎上』する社会。普段の会話でも『これを言ってもいいのかな』と異常に気を使う傾向があります」。誰からの着信なのか、用件は何か、相手はどんな表情か――。電話は「分からない」要素が多く、「事前の情報がないことに対して怖がる人が多い」と大野さんは説明する・・・

10年ほど前に、大手企業の人事部長に聞いたことがあります。大卒新入社員を、研修所で1か月近く研修するのだそうです。「専門の法律などを教えるのですか」と聞いたところ、「何を言っているのですか。挨拶の仕方と電話の取り方、パソコンのキーボードの打ち方です」と笑われました。
学生時代には、きちんとした挨拶をしたことがない。家でも、そのような機会はない。
固定電話を、ほかの人の前で取ったことがない。漫画サザエさんで、カツオ君が廊下の黒電話を取るのは、昭和の風景です。
スマートフォンを使っているので、キーボードは使っていないのです。

働き方の多様化、週休3日

4月28日の日経新聞に「週休3日選べる世の中に」が載っていました。
・・・週休3日をうたう企業や自治体が少しずつ出てきているが、社会に定着しているとはいえない。そこで、決意も込めて社名にした。
「株式会社週休3日」
永井宏明さん(48)が代表を務める、人材紹介などを手掛ける会社だ。求職者を週休3日で勤務可能な会社にマッチングしたり、働き方の見直しを進める経営者を支援したりしている。
仕事と家庭、趣味のバランスに苦労した経験に加え、「なぜ多くの会社が週休2日なのか」という疑問が、起業を後押しした・・・

ご本人は、週1日勤務や4日勤務などを経験しました。
・・・施設長に就くと職員の人手不足に直面した。そのとき思い出したのが、かつての自身の働き方だ。「週5日働けず、あきらめている人に届くかも」。募集の際に「週3日休めます」と掲げると、数えるほどだった応募が次第に増えた。人手が確保され職員も明るくなったような気がした。
ひとり親世帯や、介護などに向き合う人からの応募が多かった。家庭環境が落ち着くと「週休2日にしてください」と申し出る人もいた。元から在籍していた社員も、余裕がないときは週休3日に切り替え、離職率は大きく下がった・・・

・・・持続可能な働き方の仕組みと確信した。16年に退職し、「株式会社週休3日」を起業した。
滑り出しは大赤字だった。医療機関や福祉施設などと提携したが「週休2日で働いてきた今の従業員が『不公平』と強く反対している」と断られ、紹介先がゼロに。資金が底をつきかけた。
そんなとき、調剤薬局から相談があった。薬剤師が採用できず、従業員が疲弊しているという。週休3日という働き方を打ち出していけば応募が増えると提案したところ、導入を決めてくれた。
地方の調剤薬局を中心に依頼が増え、今は薬剤師業界の人材紹介を柱に事業展開している・・・

週に何日働くか、また一日に何時間働くか、何時から何時まで働くか。一律に週休2日、8時半から17時までと決めつけず、多様な勤務形態があっても良いですよね。労働力不足の時代に、子育て中の夫婦や、一日中働くのはいやだという高齢者に適した勤務形態を用意して、労働参加してもらうのです。
画一的な「勤務」は、学校や企業などで普及しました。自営業などでは、比較的自由な勤務ができました。企業で画一的な勤務を強制できたのは、夫が働き妻が家庭を守るという性による分業だったからでしょう。学校でも、画一的な授業時間についていけない子どももいます。

企業の配属ガチャ防止策

4月1日の日経新聞に「配属ガチャ「外れ」は1割? 企業も配慮「希望出せた」6割」が載っていました。
・・・今春も多くの若者が新社会人としてスタートを切る。どの部署でどんな仕事を担当するか。不安と期待が入り交じる頃だろう。蓋を開けてみなくては分からない「配属ガチャ」は早期離職も誘発する。人手不足の昨今、新入社員の希望に耳を傾ける動きも広がる。
一昔前ならば初期配属の主導権は会社が握っていた。希望を聞くにしろ、事業戦略や各部署の欠員状況など会社側の思惑を優先し、新入社員を割り振った。だが最近は学生優位の売り手市場を反映し、会社の姿勢は変わった。24年春入社の社員を対象にした調査によれば、6割超が配属に関する希望を出せている。
実際の配属は59.9%が勤務地・配属先ともに希望通りで、どちらの希望も通らなかったのは5.6%にとどまる・・・
・・・ただコース別採用は企業には「諸刃の剣」だ。内定辞退や早期離職は防げるが、在学段階での専門性・適性の見極めは難しい。希望職種が偏ると優秀な人材を取りこぼすリスクもある。入社前に配属先を決めて本人に伝える企業は45.1%と半数以下だ・・・

4月2日には「新人定着へ成長後押し」が載っていました。
・・・主要企業が1日、入社式を開いた。学生優位の売り手市場を経て入社した新人の中には将来的なキャリアアップを見据えて転職意向を持つ人が一定数いる。各社は指導役となる上司や先輩社員に対し、新人の教育方法を伝授する講座などを開くほか、新人向けに成長意欲に応えるプログラムを用意して貴重な戦力の定着につなげる・・・
ヤクルト本社は新入社員が配属された部署で指導役を務める社員や課長などを対象にした研修を実施しました。

また、リクルートマネジメントソリューションズの調査では、新入社員が仕事で重視すること(複数回答)で最多は「成長」(32.2%)で、やりがい(14.0%)や金銭(11.1%)を上回っています。
この点は、私も共感します。駆け出し時代は、自分の能力も適性もわかりません。先輩たちを見て、我が身の未熟さを知る毎日でした。

変わる終身雇用への備え

4月5日の朝日新聞夕刊、広川進・法政大教授の「変わる終身雇用、必要な備えは」から。

・・・定年まで同じ会社で働き、老後は余生を楽しむ――。こんな人生を思い描いた人もいるのでは? でも、いまや終身雇用は崩れ、長寿社会のなかで老後の年金に不安が募るなど「定年まで」の時代は終わりつつある。会社をやめて次のステージに進んだり、定年後も働き続けたりするため、どんな備えが必要か。自らも40代で会社を辞め、臨床心理士になった法政大キャリアデザイン学部教授の広川進さん(65)に心構えを聞いた。

そもそも、大学を出て新卒入社した会社に「定年まで勤める」という働き方は本当にできなくなったのだろうか。
「いままでは、55歳になってキャリアの終盤で不本意な仕事になっても、あと数年我慢すれば定年まで勤めることができた。でも、これからは畑ちがいの仕事でかなりの期間、働くことも十分あり得ます」

企業は激しい競争にさらされ、すべての社員を安定して雇い続けることは難しい。
「言葉を濁さず、『このままだとあなたは社内では生き残れないかもしれません』と誠意をもって伝えるべきです。働く側も『会社が私を雇用し続けるメリットは』という視点を持たないといけない」

とくに1990年前後のバブル経済期に入社した人らが持つ「会社への根拠のない愛」に気をつけなければいけないという。
「超売り手市場で入社した世代。世の中が変わったのに『まだ会社は心変わりしていない』と現実を直視できない」
企業の研修などでは、そういう社員に「(会社もあなたを)愛しているけど、あなたの残り10年を保障するほどの体力がない」などと伝える・・・