「地方行政」カテゴリーアーカイブ

地方行財政-地方行政

地域運営組織

地域運営組織って、ご存じですか。総務省のホームページには、次のように書かれています。
「地域運営組織とは、地域の暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に基づき、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織です」
自治会や町内会などが代表的ですが、それに限りません。

3月に「地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」が公表されています。それによると。
令和6年度は地域運営組織が全国で8,193団体が確認され、令和5年度(7,710団体)から483団体増加し、平成28年度に比べて約2.7倍に増加。また、地域運営組織が形成されている市区町村は893市区町村であり、令和5年度(874市区町村)から19市区町村増加。
組織形態は、法人格を持たない任意団体が90.9%、NPO法人が3.4%、認可地縁団体が2.0%。
活動内容 は、祭り・運動会・音楽会などの運営(70.6%)が最も多く、交流事業(69.6%)、健康づくり・介護予防(62.5%)、防災活動(61.9%)などです。

地方行政は、総務省(自治省)が所管しています。かつては制度論を議論していましたが、運営論に主題が移っているようです。それも、役所の組織運営もありますが、地域の経営です。暮らしやすい地域をつくること、そして孤立を防ぐためには、制度論では効果がありません。

地方公共団体での嫌がらせ、いじめ

4月に総務省が「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査結果」を公表しました。
「団体規模や地域性等を考慮し、無作為に抽出した388の都道府県及び市区町村から一般行政部門(首長部局)に属する一般職の職員20,000人(うち常勤職員14,191人、非常勤職員5,809人)を対象として実施し、11,507人から回答を得ました」とのことです。また、地方公共団体における各種ハラスメント対策に関する取組事例集もついています。いくつか抜粋します。

パワーハラスメントについて
過去3年間に、パワハラを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で15.7%(1,808人)。これを年代別で見ると、40代が19.3%と最も高く、20代以下(11.7%)と比較すると2倍弱となっている。

セクシュアルハラスメントについて
過去3年間に、セクハラを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で3.9%(447人)。これを年代別で見ると、30代(6.6%)、20代以下(6.3%)が高い傾向にあり、また、性別で見ると、女性が6.3%、男性が1.7%となっている。

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて
過去5年間に、育児休業等ハラスメントまたは不利益取扱いを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で7.8%(136人)。これを年代別で見ると、30代(10.7%)、20代以下(8.9%)が高い傾向にあり、また、性別で見ると、女性が11.1%、男性が6.0%であった。

カスタマーハラスメントについて
過去3年間に、カスタマーハラスメントを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で35.0%。これを、団体区分別で見ると都道府県に比べ市区町村が、年代別で見ると30代が、任用形態別で見ると任期の定めのない常勤職員(非管理職・その他)が受けた割合がそれぞれ高い。ちなみに、厚生労働省調査(民間)では、「経験した」が全体で10.8%です。
過去3年間に、カスタマーハラスメントを受けたこと(受けたと感じた経験)がある者の割合について、部門別に見えると、広報広聴(66.3%)、各種年金保険関係61.5%)、福祉事務所(61.5%)、戸籍等窓口(59.9%)、税務(55.5%)の順に高い。

自治体の職員不足

4月29日の日経新聞東京面に「きしむ地方自治 人材不足、業務の維持限界」が載っていました。
・・・地方自治の限界が各地であらわになっている。地域を支える自治体職員などの人材確保は年々難しさを増し、行政サービスの維持にきしみが生じつつある。人口減少社会に耐えうる行財政基盤を目指した「平成の大合併」のピークから今年で20年。地域社会をどう守り続けるかが問い直されている・・・

市町村の方に聞くと、土木、建築、保健などで職員採用ができないそうです。デジタル化に必要な技術職員はもっと、集まらないそうです。日本全体での若者減少、民間企業との競争に負けています。常勤職員が集まらない分を、非常勤職員で埋めている自体もあります。これについては、別途書きましょう。

記事では、日本総合研究所の蜂屋勝弘・上席主任研究員の試算では、業務に必要な職員の確保割合を示す充足率は2030年に92%、2045年には78%に低下します。
日本全体で人手不足なのですから、役所だけが別というわけにはいきません。これまでは、過疎化・人口減少が多くの自治体の課題だったのですが、地域の人口減少だけでなく、役所の職員不足も課題になりました。

自治体窓口の時短

3月17日の日経新聞夕刊に「自治体窓口 広がる時短」が載っていました。

・・・全国の自治体で開庁時間の短縮や週休3日制の導入を通じ、職員の働き方を改革する動きが広がっている。職員のワークライフバランスを高めつつ、残業代など行政コストを抑える効果がある。自治体では人手不足や採用難が深刻で、働き方改革を通じて優秀な人材を呼び込むねらいだ。

埼玉県志木市は4月から、市役所本庁舎の開庁時間を1時間短縮する。現在は午前8時半から午後5時15分だが、4月以降は午前8時45分〜午後4時半となる。電話での受付時間も同様に短縮する。
時短の狙いは残業の抑制だ。現在の開庁時間は職員の始業・終業時間と同じで、窓口が閉まる直前に住民が飛び込んで来た場合は残業して対応することも珍しくない。受け付け終了後の書類整理もあり、職員の負担感は大きい・・・

私も、以前から疑問に思っていました。開庁時間と職員の勤務時間が同じだと、事前準備と事後処理で、必ず職員の超過勤務が発生します。これまでは、「サービスが当然」という意識だったのでしょうね。
銀行の窓口はずっと以前から、もっと短かったです。

「高卒男子を囲い込む」政策の失敗

朝日新聞ウエッブに「地方移住6年、劇作家平田オリザさんが語る「妻ターン」する街の所作」(2月2日)が載っていました。

日本の人口は減少を続け、現役世代が2割減る「8がけ社会」へと向かいます。その影響は真っ先に地方に及びます。劇作家の平田オリザさん(62)は芸術文化観光専門職大学の開学に関わったことを機に、2019年から活動の拠点を東京から大学のある兵庫県豊岡市に移しました。「アートと大学で、人口減に歯止めをかける」と話す平田さんに聞きました。地方は輝きを取りもどせますか――。

――地方の人口減少の背景に、若者世代の都市への人口流出があります。豊岡も例外ではありません。

日本の地域振興策はこれまで「高卒男子を囲い込む」政策でした。企業や公共事業を誘致し、地元に雇用を生む。当時の親の殺し文句は「車を買ってやるから残れ」でした。
男子を囲い込んでおけば、女子は地元の企業や役所で4~5年働いて、結婚・出産をするだろうという考えがあった。昭和はこれがあまりにも成功したため、平成の間、多くの自治体は思考停止に陥ってしまった。いまだに工業団地を作り、企業を誘致すれば、人口が増えると思っているわけです。
しかし、その間に何が起きたか。4年制大学への女子進学率の上昇です。豊岡で言えば、神戸や大阪や京都、あるいは東京で刺激的な4年間を過ごすことになる。そうした女性に「豊岡へ戻ってこないか」という問いかけは、18歳の男子に「地元に残らないか」と言うのと、質が違うんです。
若い女性は雇用がないから帰らないわけではなく、街が面白くないから帰らない。どうやって戻って来たくなる街を作るかが大事になるわけです。

――ここまでの取り組みを振り返って、人をひきつけることはできていますか。

アートセンターは国際化する城崎のシンボルになりました。20年から始めた豊岡演劇祭も規模が拡大しています。昨年の自由公演の申し込みは200件超。海外からも応募がありました。世界のダンスシーンでは、城崎・豊岡の名前が徐々に広がっています。
城崎温泉自体も、旅館の内装が洗練されたり、ブックカフェなどのおしゃれな飲食店が誕生したりと、イメージが良くなってきています。豊岡の市街地はまだまだ空き店舗がありますが、若い感性によるカフェなどができてきています。街並みの変化は、「戻って来たくなる街」に少しずつ近づいています。豊岡にUターンした人たちからよく聞くのが、「10年前に地元を出た時と豊岡が様変わりだ」「昔はつまらない街だったけど、今は色々なイベントが開かれ、都会と遜色がない」といった声です。最近、豊岡で増えているのが「妻ターン」です。

――UターンでもIターンでもなく「妻ターン」ですか。

豊岡を離れた女性がパートナーを連れて帰ってくるケースです。これまで故郷に戻る場合、夫の実家が多かったですが、夫婦で議論をした上で豊岡が選ばれています。
もちろん仕事があるから帰ってくるわけですが、決め手は「豊岡が面白くなってきた」ことだと思います。子育てしやすく、教育が充実した環境は当然ですが、そこにおしゃれな店ができたとか、演劇祭が始まったり大学ができたりして活気がでてきたというのが「戻って来たい」につながっています。