カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

行政-社会と政治

オランダの歴史

桜田美津夫著『物語オランダの歴史』(2017年、中公新書)を読みました。偉大な小国の500年の歴史が、コンパクトにまとめられています。随所にそうだったんだと、いろんなことを教えられます。
ところで、オランダの歴史と言えば、岡崎久彦著『繁栄と衰退と―オランダ史に日本が見える』(1991年、文藝春秋。文春文庫に収録)が出版されたときに、興味深く読みました。

桜田さんの本も、新書版に良くまとめてあるのですが、欲を言えば、オランダの盛衰をもう少し書いて欲しいです。17世紀に、小さな国土で先進国、大国だったのが、その後追い抜かれて、トップの座から転落しました。その要因を知りたいのです。
その際には、オランダだけでなくイギリスやフランスなど他国や新大陸、植民地についても書かなければならないでしょう。しかし、一国の歴史を、その国内のことだけで記述するには限界があります。「物語オランダの歴史」の限界でしょうか。

京都迎賓館2

先日、京都迎賓館の素晴らしさを書きました(5月1日)。西欧の物まねでなく、日本の素晴らしさを外国の人に分かってもらえる点です。これは、建物単体を建設しただけは無理です。

その良さを分かってもらえるだけの、「日本文化への理解」が必要です。判断者は、世界の人たち、特にこれまで「世界標準」をつくってきた西欧の人たちにです。
19世紀には、日本趣味(ジャポニズム)が広がりました。浮世絵や伝統工芸、そして植物です。しかし、「一部の趣味」でしかなかったようです。
日清・日露戦戦争以降、日本が国力をつけ、さらには戦後の経済成長で世界でも日本の位置が認識されました。もっとも、それも「非白人国が、追いついてきた」ということだったでしょう。

他方で、日本料理をはじめとする日本の伝統文化が、理解されるようになりました。フジヤマ・ゲイシャでない、日本の生活文化です。
和食は、フランス料理・ヌーベル・キュイジーヌに大きな影響を与えました。刺身、寿司、天ぷらだけではありません。ナイフとフォークでなく、箸を使って食べる外国人も普通になりました。そして、お酒です。日本酒のおいしさが、分かってもらえるようになりました。
さらに、和風旅館のおもてなしも、理解されるようになりました。ここは、しつらえや料理、そしておもてなしで、日本の生活文化が総合された場です。

建物や道具などいかに立派なものをつくっても、それが単体では、日本文化の理解にはなりません。日本の経済的存在感が、世界の人に「西欧ではない優れた文化」があることを認識してもらえる背景にあります。
そして、和服を洋服に替えましたが、すべてを西洋風に変えるのではなく、日本の伝統文化を守ったことが、世界に紹介することができる、そして誇ることができる生活文化を残したのです。それがなければ、いかに経済力を持っても「エコノミックアニマル」としか思われないでしょう。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式エンブレムも、和風の良い意匠だと思います。
尊大になってはいけませんが、西欧文化だけが世界標準でないこと、日本文化も良いことを、世界に紹介し続けるべきです。もちろん、他の国にも良い伝統文化があります。

団体への加入率の変化

昨日紹介した、中北浩爾著『自民党』に、興味深い表が載っています。「有権者の団体加入率の推移」p196です。「明るい選挙推進協会」調査から、先生が作成されたものです。一部を抜粋します。

数字は左から、1980年、90年、2000年、2009年、2014年で、%です。
自治会  65、68、48、35、25
農業団体 10、11、5、3、4
労働組合 12、8、5、6、6
経済団体 6、7、4、3、2
非加入  18、18、32、40、43

この40年の間に、日本社会が大きく変化したことが、読み取れます。特に、自治会加入者の減少と、どこにも属していない人の増加が激しいです。
このような「緩慢な変化」は、ニュースにはなりません。私たちが気づかないうちに、静かに進行している変化です。しかし、社会や政治を規定する、あるいは社会問題を生む大きな要素です。

高岡さんの新著『外交官が読み解くトランプ以後』

畏友、高岡望さんが、新書『外交官が読み解くトランプ以後』(2017年、祥伝社新書)を出版されました。『アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国』 (2016年、PHP新書)を出版されてから、まだ1年も経っていません。その精力的な活動に脱帽です。
前著も、トランプ大統領を予測した、分析と洞察力に優れた本でした。新著も、アメリカ勤務経験や広い視野から、長期的かつ地球規模の視点で書かれています。これだけの本を書くためには、常に新しい情報それも海外の情報を集めることと、それを冷静に分析し、見通す洞察力が必要です。外交官としての経験と優れた能力の賜、そして努力の成果でしょう。お勧めします。

京都迎賓館

京都を通るついでに、京都迎賓館を見てきました。ちょうど一般公開の日だったので。この施設は、できて10年あまりです。立派な施設です。それは、皆さんにも実体験していただくとして。
施設の見学だけでは、良さは十分にはわかりません。それは、どの建物についても同じです。この施設の場合は、見学の最後に見ることができるビデオと、売店で売っている解説書で、さらにその良さ、そして建設に携わった人たちの思いがわかります。

和風建築の良さが、全体と随所に見ることができます。責任者の一人であった中村昌生さんが、解説書に書かれている文章を引用します。
・・・京都迎賓館は、日本人のもてなし方で国公賓を接遇するために、国家によってはじめて建設された施設である。脱文明開化を内外に宣言する象徴的な施設であると言っても過言ではあるまい・・・
この一文が、この施設の特徴を表しています。東京赤坂の迎賓館は、開国した日本が列強に追いつこうとして、ヨーロッパの宮殿をまねて作ったものです。建物や調度品はヨーロッパ風です。装飾や絵画に日本風を加えてありますが。そもそもは皇太子であった大正天皇の住まいとしてつくられたものですが、「日本もこんな建物を作ることができるんです」と背伸びしている様子が見えます。

京都迎賓館は、中村先生の言葉にあるように、「脱文明開化を内外に宣言する象徴的な施設」です。日本が明治維新以来「国是」としてきた「西欧に追いつけ追い越せ」を終え、それを克服した象徴だと思います。
「追いつけ追い越せ」の思想では、所詮は評価基準は西欧です。日本らしさを加えても、基本は西欧です。もちろん、西欧を無視して日本標準をつくることは、難しいでしょう。
18世紀まで世界一だった中華文明が、世界トップクラスの経済大国になりましたが、「新中華文明」をまだつくり出してはいません。かつての中華文明の象徴である紫禁城(故宮)の前に並んでいるのは、西欧のどこにでもある鉄筋コンクリートの高層建築です。

では、建築物を和風(新和風)にして、日本らしさが出るか。そこには、あと二つの要素が必要です。一つは、調度品などのしつらえです。もう一つは、おもてなしです。
前者は、京都迎賓館をご覧ください。解説書には、どのように日本の伝統を生かしたかが解説されています。私たちが知らない匠の技があります。
後者のおもてなしは、施設見学ではわかりません。主たる要素は食事でしょう。フランス料理でないもの、外国の方にも食べてもらえる和食です。これも、かつてと違い世界でも食べられ評価されるようになりました。そして、お酒です。
この項、続く。