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社会

70歳以降も働く、39%

2月19日の日経新聞1面に「70歳以降も働く、最多39% 将来不安「経済」7割、「健康」上回る」が載っていました。

・・・日本経済新聞社は2023年10〜11月に郵送で世論調査をした。働き方・社会保障に関する質問で何歳まで働くつもりか尋ねたところ、70歳以上の回答が39%で、18年の調査開始以来最も高かった。将来不安に感じることは7割が「生活資金など経済面」をあげた。
何歳まで働くかを聞くと「70〜74歳」が21%、「75歳以上」が18%。「75歳以上」に限っても18年調査よりも5ポイント高く、調査を始めてから最高を記録した・・・

収入は欲しいですが、それ以上に、生きがいとして働くことのできる場所が欲しい人も多いと思います。

ただし「長く働くための技能向上」は14%でしかありません。これは2018年の調査以来横ばいで、働き続ける以降は多くなっても、そのための技能を身に付ける意欲は高まっていません。
どのような技能をつけたらよいのか、多くの人は分からないのではないでしょうか。リスキリング(学び直し)という言葉が流行っていますが、内容が良く分からないのです。IT(情報通信技術)とかDX(デジタルトランスフォーメーション。これは日本語にすると何というのでしょうか)が重要と報道は騒ぎますが・・・。

「威徳輝宇宙」

清酒瓶に貼ってあるラベル、「酒票」と呼ぶのだそうです。「日本酒ラベル そのデザイン変遷の歴史」に書いてありました。この記事も、なかなか深遠なものがあります。

そこに、しばしば威勢のよい語句が書いてありますよね。「名声轟四海」「名声響世界」とか。すごいのを見つけました。石鎚酒造の「石鎚 純米吟醸 緑ラベル」です。
拡大すると読めるのですが、「威徳輝宇宙」です。
これまでに見たものは、せいぜい世界でしたが、これは宇宙まで広がっています。

かつて徳島県に勤務したとき、ぶどう饅頭という名物を知りました。その宣伝文句も、気宇壮大でした。「海越えて ほめられに行け ぶどう饅頭」です。
しかしこれも、宇宙までは届きませんね。

日本経済の再生は人づくりが課題

1月31日の日経新聞大学欄に、大竹文雄・大阪大学特任教授の「日本経済の再生 人づくり蛾課題現状維持の誘惑絶つ」が載っていました。「この国のかたち」を変えることの重要性と難しさが分かります。

―教育システムのどこに問題がありますか。
「先進国に必要な人材教育ができていません。先端を走る国々では常に技術革新が起きている。新しいことを考えて挑む人を育て評価する仕組みがあるからです。いまだに日本はそうなっていない。そこに30年以上続く停滞から抜け出せない根本原因があります」
「これを変えるのはすごく難しい。これまで長所だった協調を極端に重視した教育を見直す必要があるからです。高度成長期などキャッチアップの時代には、他の成功モデルを学んで改善すれば、うまくいった。みんなで協力して生産性をあげることが重要だったわけです」

「協調重視の発想が社会に広がり、教育にも浸透しています。幼稚園や保育園の教育でも友人関係や協調性を非常に大事にする。一方で論理的思考や人と違う考えを重視してこなかった。いま大事なのは技術革新を生む発想、間違ってもいいからアイデアを出し試す思考法です。それができる人の育成、失敗を許す教育に転換すべきです」
「悩ましいことに、人口減少と高齢化が変化を難しくしています。新しい発想を認めない、現状でいいという保守的な人が増えていきます。まず、この流れを止めないといけない」

―学校や会社も変わらざるを得ません。
「日本社会には新しいことを許容しない特性があり、行動経済学でいう現状維持バイアス(ゆがみ)が強く働いています。人や企業が変化か現状維持かで迷う場合、変化より現状が必ず良く思えてしまう。このゆがみを除くことで、変化が起きます」

わかりづらいカタカナ語をなぜ使うのか

2月2日の朝日新聞オピニオン欄「わかりづらいカタカナ語、なぜ使うの 社会言語学者・井上逸兵さんに聞く」から。

・・・たしかにカタカナ語がよく使われていますね。言葉には、情報伝達のほかに、その言葉を使うことで「自分は何者なのか」を示す機能があります。ビジネスの世界で使われるカタカナ語は、後者の機能を果たしているのではないでしょうか。つまり、顧客や同僚・上司に「私は『イマ風』の仕事の仕方をわかっていますよ」と、自分自身がその分野に詳しい人物であることを示しているのです・・・

・・・カタカナ語を使うのは悪いことではありません。一方で、行政が安易に使うのは問題があります。行政の役割は、必要な情報をわかりやすく万人に伝えることです。意味がわからない言葉を使えば、当然、情報伝達ができない。さらに自分は排除されているという感覚まで生み出してしまう恐れがあります。
特にコロナ禍では、行政のカタカナ語の使用が目立ちました。わかりやすい例で言えば「ステイホーム」といった言葉。日本語だと目新しさを感じないので、注目を集めるという意味では成功したと思います。一方で、老若男女すべての人が意味を理解できたかというと、少し疑問があります・・・

意図の伝達、対話の手段でなく、顕示欲の手段なのですね。高級銘柄品(カタカナ語で言うと「ブランドもの」)を持ち歩く意識と同じです。威信財の一種でしょうか。
とすると、高級銘柄品を持つことが一部の人たちの間では恥ずかしいことと認識されるので、そのような意識が広がると、カタカナ語を使う人も恥ずかしい人と思われるときが来るのでしょうか。いえ、それら高級銘柄品の価値が下がると新しい銘柄を探すように、新しいカタカナ語を使うのでしょうね。

取締役会の前に方針が決まっている

1月24日の日経新聞オピニオン欄、藤田 和明・上級論説委員の「「稼ぐ日立」の原風景、社外取締役との対話が示した成長」から。詳しくは本文をお読みください。

・・・稼ぐ日立へ。世界標準の経営を突き詰めた原風景ともいえる記録がある。約10年前の13年6月。当時の川村隆会長が社外取締役に招いた米スリーエムの元最高経営責任者(CEO)、ジョージ・バックリー氏と対談、日立総合計画研究所の文書に残している。
スリーエムは世界屈指のイノベーション力が評価されていた。バックリー氏は前年から日立の社外取締役を務め、感じた課題をグローバル経営の視点から指摘している。

一つは取締役会のあり方。「取締役会に諮られたとき、その方針が経営によってすでに決まっていたように感じた」。米国なら意思決定前に会社側と取締役会で長く討議する。「戦略的オプションについて詳細な議論を行っただろう」。人ではなく、アイデアで競争すべきだとした。

研究者の収益意識も指摘した。米国では「多くの研究開発資金を集めるには、より多くの利益を上げることが重要と(研究者は)知っている」。研究者も事業の検討会議に出席し、収益性と優れたキャッシュマネジメントを理解すべきだ。利益創出やスピード感が日立には欠けてみえた。
「生み出すべきは新たなアイデアと成長性を兼ね備えた会社」。より速く成長し、より多くの利益を上げる。アイデアの回転数を高め新製品の導入速度を高める。「革新的でなければ、ゆっくりとしかし確実に競争力が低下する」
当時の川村氏が率直に問題意識をぶつけ、バックリー氏が経験で築いた知見で答えるやりとり。日立がその後とった10年改革に重なっている・・