ある思想家とその時代、以前、以後

権左武志著『ヘーゲルとその時代』(2013年、岩波新書)の冒頭に、おおよそ次のような記述があります。

思想や哲学を理解するには、思想家が生きた時代に着目し、歴史的文脈から思想のなり立ちを理解すべきである。思想は、生々しい生活体験から産み出されるものだ。思想家がどんな時代に生き、どんな時代の課題取り組んだのかを理解する必要がある。
そして、その思考の創造過程は、無からの創造を意味するわけではない。むしろ、過去の思想を新たな視点から読み替えていく再創造の形を取るのが通例である。
さらに高度な思想は、後の時代に継承されて、特定の時代や国を超えた普遍的影響を及ぼすことができる。

そして、「ヘーゲル哲学を理解するためには、その時代だけでなく、過去の何を変えたか、次代にどのような影響を与えたかを見るべきだ」と主張します。
納得です。哲学や政治学、社会学の名著といわれるものを読んでも、ここで主張されているように、過去の何を変えたか、何と戦ったか、後世に何を伝えたかがわからないと、意味と意義が理解できません。いままで、何度も名著といわれるものの時代背景や前後を理解せずに読んで、苦労したことがあります。

その書を深く掘り下げても、その書や人の意義はわかりません。その書や人が世界にそして後世にどのような影響を与えたかによって、意義がわかります。この項続く。