マイク・サヴィジ著『7つの階級 英国階級調査報告』(2019年、東洋経済新報社)を紹介します。既に、いくつか新聞書評欄で取り上げられています。
階級(class)は、かつて社会を分析する際の主要な切り口でした。身分、資産、職業による人(家族)の区分です。
王侯貴族、聖職者、農民、商工業という身分があり、その職業と資産・収入が結びついていた時代は、階級がはっきり分かれていました。そして、変動も少なかったのです。
その後、商業の発展と産業革命で、事業主が台頭してきました。それらの変化も受けつつ、上流(伝統的金持ちなど)、中流(経営者や管理職)、下層(労働者)という階級は、数十年前までは意味をもっていました。各国の歴史によって、身分の差は違います。市民革命の程度によってもです。しかし、多かれ少なかれ、格差や階級はありました。
ところが、学歴と才覚で所得や地位を得ることができる次代になり、また他方で土地だけが主要な資産と収入の要素でなくなると、かつての階級区分は意味をもたなくなりました。
本書が提案した新しい指標は、経済資本、文化資本、社会関係資本です。最上層のエリートと、何も持たない最下層のプレカリアート(不安定な無産階級)の間に、幅広い中流層が存在します。著者らはこの中流を、これら3つの資本で5つに分類し、合わせて7階級にし分類しました。
1.エリート
2.確立した中流階級
3.技術系中流階級
4.新富裕労働者
5.伝統的労働者階級
6.新興サービス労働者
7.プレカリアート
経済資本(所得・貯蓄・住宅資産)、文化資本(学歴・趣味・教養)、社会関係資本(人脈)によって階級を定義するとは、斬新ですね。
それをどのように評価するか、人によってさまざまでしょう。私は、成功していると思います。
連載「公共を創る」で、個人の財産と社会の財産を分類する際に、私は、ここで取り上げられている文化資本と社会関係資本を用いました。社会学者が、人や家族を分類する指標としてこれらを使っていることに、意を強くしました。連載第30回で、この本を紹介しました。
この項続く。