「中国改革開放の40年」の続きです。2018年12月12日の日経新聞経済教室「中国・改革開放の40年」、加茂具樹・慶応義塾大学教授の「一貫性欠いた統治モデル」から。副題に、「国際秩序 関与の姿示せず」とあります。
・・・中国共産党が「改革開放」政策を選択してから、およそ40年が経過した。日本を含む国際社会はこの間、2つの異なる見方の間を揺れ動きながら中国に向き合ってきた。一つは期待であり、いま一つは懸念である。
国際社会は、世界の経済成長のけん引役を担う中国経済に一貫して期待を寄せてきた。経済成長を通じて国力が拡大した中国は、国際社会の力(パワー)の分布に影響を与える存在となり、次第にグローバル・ガバナンス(統治)の改革に積極的に加わり、けん引する意欲を示してきた。懸念は、その先にある。
すなわち、中国がどのようなグローバル・ガバナンスの姿を描いているのか、判然としないことである。国際社会は東シナ海や南シナ海などの空海域における、力による現状変更の試みとも見られる中国の行動を、潜在的な中国の秩序観が映し出されたものと考え、問題視している。
中国はこれから一体どこへ向かうのか。国際社会の中国を巡る問いは、この一点に集約されている。この問いを解く手掛かりは、過去40年間の中国の歩みの検討にある・・・
・・・習政権は過去40年間の成果として、そして発展途上国が社会の安定と経済発展を同時に実現するための手本として、「中国モデル(中国方案)」を内外に宣伝している。安定と成長を同時に実現するための保障が、集権的なトップダウン型の統治だという。そこには共産党の無びゅう性と中国がグローバル・ガバナンス改革をけん引する正当性の主張が織り込まれている。しかし、それは実態を正確に説明していない。そもそも共産党には一貫したモデルはなく、試行錯誤的であった。
そして、安定と成長を実現できたのは、集権的なトップダウン型の統治ではなく、共産党が支配を維持するために、必要に迫られるように導入した、公聴会や問責制といったボトムアップ型のメカニズムが機能したからである。
中国モデルは存在するのだろうか。明らかなことは、統治のかたちの模索は、これからも続くということである・・・
・・・中国は改革開放の40年を経て、世界で中心的な役割を果たすようになったと、高揚感をもって総括し、人類の問題解決のために中国モデルを提示するという。そしてポスト改革開放の道を歩み始めたと宣言するだろう。
だが、共産党はいまだ統治のかたちの模索を続けており、中国は依然、改革開放の40年史のなかにいる。このことは、中国がグローバル・ガバナンスの姿を、まだ描き切れていないことを意味する。国際社会が、グローバル・ガバナンスに関わる規範の改善に努めながら、中国を既存の国際秩序の中で誘導する余地は、まだ十分にある・・・
参考「社会はブラウン運動4 指導者の意図も行き当たりばったり」
この項続く。