9月8日の日経新聞オピニオン欄。上杉素直さんの「公務員を生かすために」から。
・・・大臣を支える官僚はどうか。人々をあきれさせる不祥事が立て続けに起きる惨状を目にすると、だれしもが役所の規律の緩みにクビをかしげざるを得なくなる。ただ、ひとつのテーマに長年にわたって携わる役人の知識と経験は本来、政策をつくって円滑に進めるうえで欠かせないパーツだ・・・
・・・にもかかわらずと言うべきか、待遇面にスポットを当てれば、社会の期待に応えられる才能を役所が継続的に集めていけるかどうか心もとない。報酬の官民差が鮮明になっているからだ。
典型的なのがトップクラスの人材。役所の事務方の頂点に立つ事務次官のモデル年収は17年度で2327万4千円、本府省の局長は1772万8千円(内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(平成30年版)」)。デロイトトーマツコンサルティングの17年の調査によると、東証1部上場334社の社長報酬の中央値は5435万2千円で役所の次官の2.3倍だ。次官の給与は1部上場企業の取締役・執行役員よりは多いが、専務や常務クラスよりも少ないくらいの位置付けにある・・・
・・・責任と権限が大きなポストに関する限り、ほかの先進国の公務員は日本より明確な競争と評価にさらされている。日本が行政システムの手本にした英国は事務次官の年収が成績評価に応じて最高20万ポンド(約2800万円)から14万2千ポンドまで上下する。ドイツの事務次官や局長は「政治的官吏」と呼ばれ、いつでも職務を外されるリスクと背中合わせだ。横並び主義の根強い日本だが、たとえば次官や局長だけでも処遇の発想を転換したら、役人のイメージごと変わるのではないか・・・
ありがとうございます。ご指摘の通りです。もちろん、企業と行政を単純には比較できません。「公務(のやりがい)は、お金(の多寡)じゃない」と言う人もいますが、そのような志だけに頼っていては、良い人材は集まらないでしょう。
私は、40年前に公務員になりました。その際に、民間企業に比べ収入は少ないと聞いていましたが、これだけも差があるとは知りませんでした。かつて、母校の高校で後輩たちに、私の仕事をお話ししたことがあります。その際に、年収を話したら、後ろで聞いていたお母さんたち(私の同級生)が、余りの少なさに絶句して、同情してくれました。
記事では、上場企業334社の社長・専務・常務と比べています。この人たちと比べても、次官や局長の報酬は、はるかに少ないのですが、もう一つの比較があります。友人たちと話すと、しばしば大学時代の同級生との比較がでてきます。いわゆる大企業の社長、副社長との比較です。この場合は、次官や局長は、恥ずかしいくらい少ないです。
実務でも、問題が出ています。独立行政法人など役所の外郭団体です。民間人を登用するとの趣旨で、企業の幹部を採用する場合があります。ところが、年収2千万円くらいでは、大企業幹部は年収1億円~5千万円程度ですから来てくれません。よほどの「ボランティア精神」か「公共心」でもないと。
この項続く。