村上信一郎著『ベルルスコーニの時代 崩れゆくイタリア政治』(2018年、岩波新書)を読みました。政治、特に西欧民主主義の現在に関心のある方には、お勧めです。
面白いと言ってはお叱りを受けますが、イタリア政治の実態がよくわかります。そしてそれを通して、政治が制度や理論では動いていないことが、よくわかります。複雑怪奇なイタリアの戦後政治を、著者は切れ味良く整理して見せてくれます。
ベルルスコーニの時代と銘打っていますが、それとともにイタリア政治の実情と大変化が主題です。
イタリアは、キリスト教民主党が戦後長く政権にあり、しかし内閣は短命で交代を繰り返していました。また、共産党が大きな勢力を持っていました。それが、1990年代初めに両党がなくなるという、大変化が起きたのです。
私も新聞報道を読んでいましたが、この本を読んで、その背景と過程がよくわかりました。一つは、東西冷戦の終結です。
しかしもっと大きいのは、イタリアの政治と経済を仕切っていたマフィアと秘密結社への戦いが進んだことです。この二つの裏の力には、改めて驚きます。検察と裁判(イタリアでは検察は内閣の下ではなく、この二つが同じ組織に属します)が、暗殺による多数の被害者を出しつつも、切り込みに成功するのです。
戦後長く続いた第一次共和制は、制度と主たる担い手とともに終わるのですが、第二次共和制への移行は混乱を極めます。
この項続く。