京都を通るついでに、京都迎賓館を見てきました。ちょうど一般公開の日だったので。この施設は、できて10年あまりです。立派な施設です。それは、皆さんにも実体験していただくとして。
施設の見学だけでは、良さは十分にはわかりません。それは、どの建物についても同じです。この施設の場合は、見学の最後に見ることができるビデオと、売店で売っている解説書で、さらにその良さ、そして建設に携わった人たちの思いがわかります。
和風建築の良さが、全体と随所に見ることができます。責任者の一人であった中村昌生さんが、解説書に書かれている文章を引用します。
・・・京都迎賓館は、日本人のもてなし方で国公賓を接遇するために、国家によってはじめて建設された施設である。脱文明開化を内外に宣言する象徴的な施設であると言っても過言ではあるまい・・・
この一文が、この施設の特徴を表しています。東京赤坂の迎賓館は、開国した日本が列強に追いつこうとして、ヨーロッパの宮殿をまねて作ったものです。建物や調度品はヨーロッパ風です。装飾や絵画に日本風を加えてありますが。そもそもは皇太子であった大正天皇の住まいとしてつくられたものですが、「日本もこんな建物を作ることができるんです」と背伸びしている様子が見えます。
京都迎賓館は、中村先生の言葉にあるように、「脱文明開化を内外に宣言する象徴的な施設」です。日本が明治維新以来「国是」としてきた「西欧に追いつけ追い越せ」を終え、それを克服した象徴だと思います。
「追いつけ追い越せ」の思想では、所詮は評価基準は西欧です。日本らしさを加えても、基本は西欧です。もちろん、西欧を無視して日本標準をつくることは、難しいでしょう。
18世紀まで世界一だった中華文明が、世界トップクラスの経済大国になりましたが、「新中華文明」をまだつくり出してはいません。かつての中華文明の象徴である紫禁城(故宮)の前に並んでいるのは、西欧のどこにでもある鉄筋コンクリートの高層建築です。
では、建築物を和風(新和風)にして、日本らしさが出るか。そこには、あと二つの要素が必要です。一つは、調度品などのしつらえです。もう一つは、おもてなしです。
前者は、京都迎賓館をご覧ください。解説書には、どのように日本の伝統を生かしたかが解説されています。私たちが知らない匠の技があります。
後者のおもてなしは、施設見学ではわかりません。主たる要素は食事でしょう。フランス料理でないもの、外国の方にも食べてもらえる和食です。これも、かつてと違い世界でも食べられ評価されるようになりました。そして、お酒です。
この項、続く。