伊藤武著『イタリア現代史』(2016年、中公新書)が、勉強になりました。第2次大戦後のイタリア政治を、紹介した本です。日本と同じように、イタリアも第2次大戦で大きな被害を受け、ともに戦後復興に成功します。同じように、代議制民主主義でありながら、日本と似た点と、大きく違う点があります。内閣は短期間で交代を繰り返します。同じ首相が、何度も登板します。また、既成政党に反抗して、極右と極左がテロを繰り返します。代議政治が、国民の不満を吸収しきれないのです。
右のキリスト教民主党と左の共産党が2大勢力でしたが、ほかにも小党が乱立し、離合集散を繰り返します。社会の背景が違うと、政党や議会の機能が違うことが、よくわかります。制度を輸入しても、社会が違うと機能が違うのです。
奇跡とも言われる復興を成し遂げ、さらにファッションを中心としたブランドで繁栄します。しかし、マフィアとのつながり、南北問題(豊かな北部と貧しい南部)、腐敗した政党への批判が高まり、政治が大混乱します。その結果、キリスト教民主党と共産党が消滅します。選挙制度も変わり、1994年からは、第二共和政と呼ばれる時代に入ります。相変わらず、政権争いが続きます。政党の組み合わせだけでなく、政党内での主導権争いです。このあたりは、私たちにはわかりにくいところがあります。それでも、ベルルスコーニ首相は、通算10年も政権の座につきます。
イギリスやドイツが議院内閣制で日本に似ている、お手本だとも言われますが、案外似ているのは、イタリアです。たくさんの政治家が出てきて、日本人にはなじみのない名前も多く、その点を別にしても、参考になる本です。新書版の長所は、短い分量で、どれだけわかりやすく解説するかです。分厚い本を書くより、難しいのです。著者の力量が、問われます。