2008.07.10

猪瀬直樹さんのHP「日本国の研究」に、青山彰久読売新聞編集委員の「地方分権改革推進委員会の使命」が載りました。
・・自治・分権改革とは、「自分たちのまちの行方は自分たちで決める」ということに尽きる。「他の誰かに決められて、それに不満を言うのではなく、自分たちで決めた結果を自分たちで引き受ける」という意味だ。自分たちを律し、自分たちで自分たちを統治する。それが自治・分権改革だといえる。自律と自己統治が民主政治の本質とすれば、分権型社会は民主政治の基盤だということができる。自治・分権改革は、一見、行政改革や財政改革のようにみえるとしても、本質的には、最も重要な政治改革だと位置づけることができる。多くの国民の眼には、分権改革がとかく「国と地方の権限と資金の奪い合いでしかない」と映る。だが、この改革の本当の推進力は、国民・住民が共感することにある。なぜ分権社会の構築が必要なのかを、国民・住民が暮らしのレベルで共感しない限り、さらなる分権改革は実現しない。
・・地方とは、どのような場なのか。地方とは、教育、子育て、老人福祉、障害者福祉、まちづくりなど、人々の暮らしを支える公共サービスが展開される現場ではないのか。自治・分権とは、住民に最も近い公共の空間で、暮らしを支えるサービスの設計・供給・負担をめぐる意思決定を、住民が参加して行うようにすることではないか。住民とは、公共サービスの受益者というだけではない。サービスコストの負担者であり、NPOや住民の支え合いを通じて公共サービス供給の担い手にもなり、地域の政策体系全体を最後に決定する主権者にほかならない。だからこそ、この改革は、政治・行政のかたちを変えて、身近な政府は住民自身が作るという方向へ国の構造を転換する課題になる。中央の政治・行政が依然として画一的な制度設計を志向したり、国土開発をめぐって利権の分配に追われていたりする歴史に終止符を打たなければならない。
もちろん、自治体自身の課題も多い。政策立案を中央に依存しきっていたり、中央から施される利権を奪い合っていたりするのではなく、地方という現場を人々の暮らしを支える場としてよみがえらせる必要がある。住民に信頼される効率的な地方政府になっているかどうか。自治体には厳しい自己改革が必要だ。