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慶應義塾大学、公共政策論第13回目

2017年7月12日   岡本全勝

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第13回の授業でした。公共政策の「元締め」である政府の役割について、機能別に分類してお話ししました。政府の役割を分類したものって、ないのですよね。かつてつくった表を配り、説明しました。

その際に、政治(学)、行政(学)、社会(学)と、公共政策論がどのような関係にあるのかを説明しました。「岡本先生の公共政策論の位置づけが分かりました」という学生の反応がありました。この授業では、関心を持ってもらうために、具体的各論から入ったので、私の公共政策論の全体像がわかりにくかったかもしれません。もっとも、抽象論や理論を話しても、面白くないでしょう。

さらに、政府の役割の具体例として、麻生政権での政策体系をお話ししました。
麻生総理の政策、目指したものは、一言でいうと「安心と活力」でした(官邸、麻生内閣のページ)。社会では高齢化、財政は赤字財政、そしてリーマン・ショックによる世界同時不況。これらに立ち向かう際の、大きな方向性が、安心と活力だったのです。それを、国民にわかりやすく示すこと。これは重要だと思います。
残念ながら「マニフェスト」は、民主党政権の失敗(実現困難なことを並べたこと)で、国民の口に上らなくなりました。しかし、政治家(政党)にとって、どのような政策を実現するかを国民に示すことは重要です。それも、羅列でなく、一貫性があり分かりやすくなければなりません。

慶應義塾大学、地方自治論第12回目

2017年7月7日   岡本全勝

今日は、慶應大学で地方自治論、第12回の講義でした。
今日は、住民論、住民自治論です。法律の定めによる住民の権利義務の説明とともに、市役所に対する主体と客体の関係を説明しました。主体とは、「主権者」として、選挙やその他の手段を使って、自治体(役所)を統制することです。客体とは、行政サービスの客体となることです。

しかし、これらの説明は、自治体や市役所を「他人」として扱っています。自治であるのは、住民がともに地域をよくしようとすることです。
そこで、近年広がってきている「協働」という概念を説明しました。例えば、町内の道路脇の花壇の手入れです。市役所に要求して市の事業として花壇を手入れしてもらう。市役所は、業者に委託して花を植え替えたり水をまいてくれるでしょう。しかし、町内会が、自分たちの家の前の花壇の手入れを引き受けたら、市役所はその分、手を引くことができます。花の種代くらい補助してもよいでしょう。「私、要求する人。市役所、それに応える人」という発想は、市役所と住民を対立したもの、サービスの提供主体と客体としてしか見ていません。

協働には、もっと広い意味があります。自治会でありコミュニティ、地域自主組織、さらには各種の地域活動です。ママさんバレーボールも、スポーツ少年団も、祭りも、地域での住民のつながりを支えています。自治会という旧来型包括的なつながりから、機能別のつながりが増えてきています。
この対極が、無縁社会です。孤立、孤独死、さらには災害が起きた際に、地域のつながりの強さが見えます。ふだんは「面倒なこと」と思われる近所づきあいも、いざという時は強力な助けになります。
学生からの感想には、「身近なことでよくわかった」という記述が多かったです。

早いもので、これで12週が過ぎました。あと、実質2週間です。

慶應義塾大学、公共政策論第12回目

2017年7月5日   岡本全勝

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第12回の授業でした。今回は、前回、前々回に出してもらっていた、学生からの質問に答えることから始めました。企業の社会的責任やNPOの限界、安心の保障は国民の自立を妨げるのではないかなど、適確な質問ばかりです。
ほかに、「採用面接の際は何を見ていますか」という問も。これは、私の経験を踏まえて、突っ込んだお話をしました。公共政策論の範囲ではありませんが、実務家教員こそがお話しできる分野です。

本論は、戦後日本70年間の経済成長、社会の変化、暮らしの変化を数字で説明し(経済成長の軌跡)、豊かさが目標だった時代と、豊かになった時代の、行政の役割の違いをお話ししました。
エリートを育てることと、何かのきっかけで落ちこぼれた人を救うことと。これまではもっぱら前者に力を入れていましたが、後者にも力を入れる必要があります。これは、スウェーデンの中学社会科の教科書を見せました。
日本社会の変化とともに、社会の不安と公共政策の範囲が変わってきます。これが私の主張です。

学生諸君
授業中に言及した、戦争を会社に外注することについては、次の本が参考になります。
菅原 出 著『民間軍事会社の内幕』(2010年、ちくま文庫)

検査が生む風評?

2017年7月4日   岡本全勝

原発事故による風評被害をなくすために、いろんな取り組みをしています。ところが、中にはジレンマがあります。安全検査です。
福島県産の米は、放射性物質がないことを証明するため、全袋検査を続けています。2014年産米からは、基準値を超える米は見つかっていません。これで安全が証明されているのです。
ところが、「厳重な検査をしているのです」と説明すると、消費者の中には「やはり検査をしなければ危ないのですか」と受け取る方もいるのです。
では、検査をやめるか。もう3年間も基準値超えの米は見つかっていないので、やめてもよいのですが。他方で、「検査しないのですか」という声が出る恐れもあります。
そして、この検査には、多大な労力と費用がかかっています。県では、どのようにして検査を縮小していくか、検討を始めました。福島民友の6月30日の記事

これと同じことは、牛の検査でもあります。2017年3月31日の産経新聞で、平沢裕子記者が「牛肉の放射性物質の独自検査 風評被害恐れ横並びで続く」という解説を書いています。
・・・福島など東日本の17都県で行われている農産物の放射性物質の検査について、国は4月から対象品目や頻度を縮小する。ただ、国の検査とは別に、自治体などが独自に始めた牛肉の検査は平成29年度も続けられそうだ。担当者の多くは「科学的に不要」と考えるが、風評被害の不安や流通業の要求などからやめられない状況が続いている・・・
・・・飛騨牛の生産地である岐阜県も全頭検査を実施。県は、28年度の検査費用約6千万円のうち約4千万円を負担、29年度もほぼ同規模の予算という。農政部畜産課は「この5年間で基準値超は一回もない。検査をやめたいが、検査証明書を求める流通業者もある。他の自治体が続ける以上、うちだけやめるわけにいかない」。
“横並び”の検査が続く中、検査を見直す自治体もある。松阪牛で知られる三重県は検査を外部へ移し、費用負担も行わないこととした。農林水産部畜産課は「検査費用を県が負担することで、実際は必要がない場合でも検査が行われてきた。自己負担なら不要な検査が減るのではないか」と期待を寄せる・・・
・・・「検査をすることが安全対策と誤解している消費者もいるのではないか」
こう指摘するのは、内閣府食品安全委員会フェローの姫田尚さんだ。安全のために大事なのは、むしろ生産・加工の工程管理をしっかり行うことで、検査は工程管理が適切に行われているか、確認するものという位置付けだ。
姫田さんは「自治体が食品の安全のためにやらなければいけないことは他にもある。流通側も生産者に無駄な検査を強いるのでなく、消費者が理解できるよう説明を尽くすべきだ」と話している・・・

この記事には、BSE牛検査についても紹介しています。
・・・BSEの安全対策は危険部位の除去が重要で、検査が安全を担保するわけではない。このため、海外で全頭検査を行う国はなかった。しかし、日本では初めて国内で感染牛が見つかった直後の平成13年10月から20年7月まで、国が検査費用を負担して全頭検査を実施。国の補助が打ち切られて以降も、多くの自治体が独自予算で全年齢の全頭検査を継続した。結局、厚生労働省が主導する形で自治体がこれを一斉に廃止したのは25年6月末。
近畿大の有路昌彦教授(食料経済学)は当時の試算として、BSE全頭検査の直接・間接の費用を約1兆円としている・・・
原文をお読みください。

経済同友会の復興支援

2017年7月3日   岡本全勝

経済同友会の機関誌「経済同友」6月号は、「復興支援活動報告 東北の今とこれから」を特集してくださっています。
経済同友会は、東日本大震災に際し、特に被災地の人づくりや経済活性化を支援してくださいました。「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト」は、専門高校に教育用の資機材を寄付してくださいました。
また、被災地での人材育成に力を入れてくださいました。今回の特集は、その報告です。女川町役場や地元企業の職員を、同友会の会員企業が受け入れて研修をしてくださいました。地方の役場や企業には、なかなか経験できないことです。

地域の発展の基礎は、なんと言っても人です。いくら施設をつくってもイベントをしても、それを発展持続する人たちがいないと、続かないのです。
これまでの復興行政や地域振興行政では、十分に力を入れていませんでした。従来の行政手法では、人材育成は限界があります。ノウハウ、支援主体、継続性などです。
今回の同友会の支援は、画期的でした。ありがとうございます。