カテゴリーアーカイブ:行政

非正規公務員

2023年3月20日   岡本全勝

3月9日の朝日新聞「非正規公務員、女性しわよせ DVの相談員、低待遇に疲弊「限界」」から。

・・・公務員の非正規雇用への置き換えが進み、大半を女性が占めている。専門的な知識が必要な仕事でも低賃金で、多くが有期雇用だ。ジェンダー不平等を解消する旗振り役であるはずの自治体で格差が生み出され、「官製ワーキングプア」と批判されている。

「もう限界だ」。広島県内の自治体で婦人相談員の仕事を約8年続けてきた藍野美佳さん(54)は2021年春、退職を決意した。DV(家庭内暴力)に苦しむ女性を支援する仕事に使命を感じていたが、非正規の待遇の悪さに追い詰められた。
月14万円あまりの給料から税金や家賃、光熱費などを引くと、手元にほとんど残らない。夜はファミレスやホテルで清掃の仕事をし、週末もバイトを入れた。「相談員の仕事を続けるためだった」と話す・・・
・・・難しいケースをいくつも抱えて過労に陥り、最初の3年で2度、医師から就労不能の診断を受けた。しかし、わずかな傷病手当しか出ず、十分に休養することもかなわなかった。
コロナ禍では「夫に居場所を知られずに給付金を受けられるか」という相談が増え、心身が限界に。「仕事に見合った待遇を」と自治体に求めたが、財政難を理由に変わらない。一方で、定年を迎えた男性の正規職員が年収500万円超で再雇用されたと知り、離職に傾いた・・・

・・・1990年代半ば以降、公務員の削減が進んだ。自治労の調査では、94年に328万人だった公務員は2016年には274万人に減った。一方、定数外職員は約3倍の64万人に増えた。女性が多い事務職員や保育士、図書館職員が非正規に置き換わり、相談業務の多くも女性が非正規で担う。20年の総務省の調査では非正規公務員の4分の3を女性が占めた。
公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)の調査では、非正規公務員の79%が年収250万円未満。回答した705人のうち、92%が女性だった。
賞与を出せるなど、待遇改善を図るとして、会計年度任用職員制度が導入されたのは20年。だが、時給や労働時間を切り下げた自治体が多く、収入増にはつながっていない。「契約更新は2回まで」という自治体も多く、今春は雇い止めが大量に起きるとみられる・・・

法に縛られない権力者の孤独と不安

2023年3月16日   岡本全勝

3月3日の朝日新聞オピニオン欄、池田嘉郎さんの「ロシアの破局的な時間」から。

・・・いまやらねば全てが失われ、破局が到来するという切迫感が、ロシアの歴史にはしばしば影を落としてきた。それは「破局的な時間」とも呼ぶべき時間観念である。「時間」のような普遍的に見える概念さえもが、ロシアでは権力者の存在や、権力の行使の在り方と緊密に結びついている。その不可解さは長い固有な歴史で培われたもので、文化史的観点で見ないとわからない・・・

・・・ロシアにおける権力者の地位について、米国の歴史家R・ウォートマンは著書(2013年、Russian Monarchy: Representation and Rule)で、西欧諸国では18世紀初頭から王位継承法が成立して、君主の地位や継承順を規定したのに対して、ロシアでは皇帝はそうした法には縛られなかった、と論じている。
権力者の無制限な力はその後、政治体制の変化にかかわらず、ソ連時代から現代ロシアに至るまで引き継がれる。その地位は法や規約で定められてはいない。いや、それがないわけではないが、ルールを自分でつくり、かつ一方的に変えられる点にこそ、権力者の権力者たるゆえんがある。

近代以降の西欧では、非人格的な法による支配が確立していったため、法が権力者の上位にある。別の言い方をすれば、権力者は個人としてではなく法人として存在している。この「法人概念」が西欧を特徴づけることは大澤真幸と橋爪大三郎の「おどろきのウクライナ」(集英社新書、22年)でも強調されていたが、ロシアでは事情は異なる。皇帝も書記長も大統領も、権力者は個人として力を振るっているのだ。

だが、これは彼らに重い孤独を強いる。ロシアの権力者は、非人格的に続いてゆく法や制度に未来を託すことはできない。個人の有限の人生において何事かを成し遂げねばならないからだ。
継承法や憲法が彼らの地位を担保することがないロシアでは、権力者は「超越的な力」を示すことで地位を維持しようとする・・・

自治体での昇任試験

2023年3月15日   岡本全勝

コメントライナー第9回「人事評価、職場と職員を変える手法」にも書いたのですが、職員の昇任試験が行われている自治体があります。その数は、5都府県、369市区町村です。昇任試験の実施状況については、総務省が調査しています。「地方公共団体の勤務条件等に関する調査」の17。

昇任試験は優秀な職員の選抜のためですが、機能はそれだけではありません。合格しなかった職員に、その後の処遇を納得させる機能も果たしています。人事評価だけでは、「上司と人事課は、私の能力を正当に評価してくれない」と不満がたまりますが、客観的な試験に落ちれば、その点について本人は納得せざるを得ないでしょう。

他方で、情実人事を防ぐ役割も果たしています。
かつて聞いた話ですが、役場幹部や議員から「特定の職員を昇任させるように」との圧力がかかる場合があります。きっぱりと断ることができればよいのですが、なかなかそうもいかない場合もあるようです。
その場合に昇任試験があると、「彼は試験に受かっていないので昇任させることができません」と断ることができるのです。その目的のために、試験を導入した自治体もあったようです。

公営住宅での住民組織づくり

2023年3月14日   岡本全勝

3月3日の朝日新聞夕刊「飛びこんで12年、5」「災害住宅、つながり後押し」から。認定NPO法人「つながりデザインセンター」(つなセン、仙台市)事務局長の宮本愛さんの活動です。

・・・ 東日本大震災の被災者が入居する災害公営住宅には、共同住宅で暮らすのが初めてという高齢者が多く、おたがいにほぼ初対面というケースが多い。住宅会の設立や運営には外部の支援が欠かせない。
つなセンは18年度から、塩釜市の委託を受けて、錦町東住宅のコミュニティーづくり支援を始めた。直面していた課題は、住民組織の立ち上げだった。

市は当初、共用部分の電気代、水道代を出したが、入居3年目の19年度からは入居者の負担に切り替える方針だった。財源となる共益費を入居者から徴収する住民組織が必要だった。
18年12月、つなセンは共同住宅の管理で入居者が果たす役割などを説明し、意見交換する機会を設けた。だが、出席したのは数人にとどまった。
その後、ランチ会を開くなど住民交流の場を設けて19年3月、有志による世話人会設立にこぎつけた。翌月からは共益費の集金が始まった。

8月には住民組織設立に向けて世話人を務める住民ら約10人が集まった。宮本は「世話人会は暫定的組織。入居者全員の代表となっていない」と説明した。出席者の一人が「市に住宅設備に関して要望したら、『70世帯みなさんの希望がないとだめ』と言われた」と、組織化の必要性を訴えた。
2カ月後、錦町東住宅会が動き出した・・・