カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

行政の分類

Ⅱ 行政の分類(政府機能の目的別分類)
これまでの行革議論は、行政の手法についての議論、行政の役割についての議論などが、混在しているようです。すると、行革の分類のためには、行政の役割の分類までさかのぼる必要がありました。また、役割の分類、手法の分類、過程の分類も必要になりました。いろんな方が、行政の分類を試みておられます。私は、それらの分類が、今一つしっくり来ませんでした。今回、行革を分類する過程で、一つの結果にたどり着きました。それも合わせて、載せておきます。(2007年2月19日)

連載「行政構造改革」を書く過程で、政府の役割の分類を、整理し直しました。それが下の表です。
ここでは行政サービスに限らず、国会や裁判所が果たしている機能も含めて考えます。私の分類では、個人の自由を出発点とします。そして、国民が豊かな生活を送ることができるようにすることを、国家の第一の役割と考えます。国家は、国民が必要のためにつくった装置です。そのための機能を、安全の維持、活動ルールの設定、生活の保障、生活の向上と、4つに分類します。
もう一つの視点は、国家の存続です。国際社会で国家が存続していくために、諸外国から自国を守るとともに、国内の統一を維持しなければなりません。
この役割の順に、機能とそこに含まれる行政活動を見ていきます。表中、行政分野の項目に粗密があるのは、ご容赦ください。(2008年6月29日)ホームページの移行の際にうまく移植できませんでした。再度貼り付けました(20019年6月26日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考
1 政治の役割については「新地方自治入門」p295
2 橋本内閣の行政改革会議「最終報告」(1997年12月)では、国家機能論について、橋本総理による国家機能の四分類(国家の存続、国富の確保・拡大 、国民生活の保障・向上、教育や国民文化の継承・醸成)を示しています。

Ⅲ 行政による実現過程の分類
次に、行政が政策を実現する過程での、手法や過程を分類しておきます。
1 手法の分類
(1)ルールの設定
(2)誘導
(3)助成
(4)提供
(5)規制
参考 「新地方自治入門」p237。その記述に、ルールの設定を加えました。

2 過程の分類
(1)企画
(2)実施
(3)評価
参考 行政改革会議「最終報告」では、新たな中央省庁の在り方の基本的な考え方として、「政策の企画立案機能と実施機能の分離」を挙げています。

3 サービス提供の3つの主体
行政改革の際に、民営化や民間委託などが議論になります。その前に、公共サービスは誰が提供するのかについて、昔から疑問を持ちつつ考えていました。
基本的サービスである教育でも、私学が重要な役割を担っています。保育園もです。命にかかわる医療については、健康保険は官がやっていますが(民間保険の上乗せもあります)、病院は国立・公立だけでなく、民間病院も多いです。羽田空港は国、成田空港は特殊会社、関西空港は第3セクターです。国鉄がJRになり、電電公社がNTTになると、サービスの性格が変わるのか。そんなことはありません。自動車損害賠償責任保険は、自動車を持つと入らなければなりませんが、民間損保会社の商品です。
慶応大学の授業で、地方自治体の直営、公営企業、公社、地方独立行政法人、地方自治体出資の第3セクターなどの説明をするのに際し、サービスと提供主体を表にしました。これを見ると、同じサービスやよく似たサービスを、官、民、共が提供していることがわかります。「公共サービス」という概念が、提供主体では区別できないことがわかります。
なおこの表では、民間委託は書き込んでありません。(2010年12月12日)
加筆して載せました。(2019年6月26日)

新しい仕事34

再チャレンジ支援では、働き方を中心に、日本の単線型社会の問題点を取り上げました。その延長線として、大学教育も、大きな問題を持っているようです。
入学試験が一斉に行われます。それは、資格のある人が随時入学する仕組みではありません。そして、一斉に卒業してくること。これを企業が一斉に採用します。多くの学部で、入学試験は難しいが、卒業試験は簡単なこと。それは、入り口での選別であって、製品(卒業生)の品質が保障されていないこと。企業も、卒業生に専門知識・技能を期待せず、大学名=ブランドで採用すること。その証拠に、文化系では、学部卒も大学院卒も処遇に大きな差がありません。資格を得るところとは、認識されていないのでしょう。
一括採用(入学)同時昇進という、企業と同じ丸抱えシステムなので、大学間の移動がないこと。そして、ある大学で単位を取っても、他の大学で認められることが少ないこと。評価が十分でないので、できないのでしょう。これなんかも、企業とそっくりです。他流試合をしないことは、教授が自校の卒業生で占められていることにも表れています。
そして、日本では威張っているけど、国際的には評価は低いこと。特に文化系です。日本語で授業を行っていることが、致命的だそうです。確かに、国内で威張っている分には、日本語で良いのでしょうが、国際的に開かれ評価されるためには、英語での授業も必要でしょう。もちろん、日本人だけの教授陣も、問題ですね。
大学は、単線型日本の延長線でなく、それとセットになった仕組み、単線型日本社会の入り口です。

新しい仕事33

15日の日経新聞は、未就学児を持つ専業主婦の95%が再就職を希望していると(リクルート社の調査結果)伝えていました。また、育児・介護支援制度を利用している部下を持つことについて、約7割の管理職が抵抗感はないと答えていると(日本能率協会の調査結果)も伝えていました。

新しい仕事58

14日の日経新聞は、OECDの労働市場分析を紹介していました。日本では、正社員の保護に比べ、非正社員の保護との差が大きいことを、指数で示しています。ヨーロッパは正社員も非正社員も保護が強く、アメリカはどちらも保護が弱いのです。日本は、正社員はヨーロッパ並み、非正社員はアメリカ型のようです。現在の日本社会は、いろんなことが過渡期にあるようです。

行政の手法の転換

生活者保護に、話を戻しましょう。ある分野で行政を進める際、限られた業者・業界団体を相手にするのと比べ、消費者・生活者一般を相手にするのは、なかなかやっかいなことです。特定少数から、不特定多数になるのですから。
手法も変わります。業界=供給側への補助・指導でなく、生活者=需要側への補助・支援と業界への規制です。業界を集めて指導したり、補助金を出す方が、簡単で早いです。それに比べ、生活者を相手にすると、指導とか補助金という手法は使いにくいです。
多分、業界が活動する際のルールを定め、それに違反したら罰則をかける、業務を停止・是正させる、という方法に変わるのでしょう。また、公費補助が必要だとしても、業界に補助金を出すのでなく、消費者に補助金を出すのでしょう。機関への補助から、利用者への支援(お金や情報)になります。こうすることで、消費者が良い業者を選ぶという、市場原理が働きます。
介護保険を考えて下さい。かつては老人福祉措置として、老人ホームなど入所施設に措置費(公費)を出していました。今は利用者が施設を選び、その利用に対して公費を出します。医療も基本はそうなっています。患者が病院を選び、費用の3割を窓口で払います。残る7割は、あとから保険者が払います。バウチャーといわれるのが、これの典型です。教育の場合は、父兄に切符を渡して、学校を選んでもらえばいいのです。