カテゴリーアーカイブ:行政

科学者の知見の活用

2012年8月14日   岡本全勝

イギリスやEUには、政府に首席科学顧問(Government Chief Scientific Adviser)が置かれているとのことです。イギリスのThe Government Office for Scienceのホームページ。どのような仕事をしているかは、リンク先をご覧ください。
8月2日の朝日新聞オピニオン欄は、EUの首席科学顧問のアン・グローバーさんのインタビューを載せていました。

原発事故について。
・・私は英国の首席科学顧問のジョン・ベディントン氏と一緒に対応にあたりました。情報収集はきわめて困難だった。理由の一つは、日本に首席科学顧問がいないから。もしいたら、即座に科学者のネットワークができ、情報交換や情報の批判的検討もできた。日本にとっても、助けになったと思います。世界中から最良の知識を持った科学者を探し出し、力を貸してもらえたでしょう・・

ベディントン氏が、事故直後に東京の英国学校長に学校閉鎖の必要はないと明言したことについて。
・・私たちは誰もが意見を言える場を作り、影響について議論しました。ベディントン氏がその情報を政府に持って行き、首相が証拠に基づいて決断したわけです・・

英国で狂牛病が広がったとき、政府は当初、人には感染しないと言ったが、後になって間違いだとわかった。このときは、英国の科学者も信頼を失った。どうやって、信頼を取り戻したのかについて。
・・私は、間違いを認めることによってだと思います。正直さがとても大事です。そして透明性です。当初は人に感染する証拠がなかった。それは事実です。その後の研究で、感染しうるとわかった。それで、我々は間違っていたと正直に伝えたわけです・・

アメリカが広めたもの・資本主義経済、自由主義、多国間統治

2012年8月13日   岡本全勝

8月10日の日経新聞経済教室、ジョン・アイケンベリー教授の「自由の秩序、文明を超えて」から。
・・
世界秩序は米国一極支配から、新しい時代への「大いなる転換」を遂げつつある。では、新しい世界秩序は、どのような形になるのだろうか。
中国の台頭と米国の衰退で、リーダーシップの交代が起きるという見方や、数世紀に及んだ欧米主導の世界秩序から、アジアの力と価値観に基づく秩序への転換が起きるとの見方もある。また、勢力伸長の著しい非欧米諸国(インド、ブラジル、南アフリカ、トルコ、インドネシアなど)が指導的地位と権威を争う、多極体制への転換が起きるとの見方のほか、新しい世界秩序は形成されず無秩序と混沌に陥るという、悲観的な見方もある。
そこに共通するのは、米国は長い衰退期に入り、同国が構築し過去半世紀にわたり率いてきた自由主義志向の世界秩序は過去のものになったとの認識だ。だがこうした見方は、本質を見誤っている。現在進行中の大いなる転換は、米国が主導してきた戦後秩序の衰退でなく、むしろ成功を意味する・・
今日大いなる転換が進行しているのは、米国主導の旧秩序が所期の目的を果たしたからにほかならない。その目的とは、多国間統治の枠組みの中での貿易、成長、相互依存の促進である。戦後秩序の設計者は、軍事・経済ブロック、帝国主義、重商主義、勢力争いで特徴づけられる1930年代への逆戻りを食い止めようとした。そして自由主義的な世界秩序を確立し、多国間のルールと組織や民主国家の連帯により、その秩序を強化すべく努力した。
今日の国際政治の「問題」、すなわち非欧米諸国の台頭にどう対応するか、増え続ける相互依存型の問題への取り組みでどう協力するかという問題は、この自由主義的世界秩序が過去半世紀うまく機能したからこそ生じたといえる・・
現在の転換は、「アジアの台頭」や「多極体制への回帰」とみるべきではなく、自由民主主義と資本主義の世界的な拡大とみなすべきだ・・詳しくは原文英文をお読みください。

アメリカをはじめとする西欧先進諸国に追いついた日本も、追いつきつつある中国を含む新興諸国も、アメリカなどが設定した経済思想と仕組み、貿易や金融の仕組み、国際関係の仕組みを利用しこそすれ、それに対抗するあるいはそれを超える思想と仕組みを打ち出してはいません。生活も娯楽もです。アメリカ文明に代わる「日本文明」や「中国文明」は、今のところありません。

また、スーザン・ストレンジが提唱した「関係的権力」と「構造的権力」が思い浮かびます。前者は、相手にいうことをきかせる力です。後者は、世界の政治経済構造をかたちづくり決定する力です。『国際政治経済学入門』(邦訳1994年、東洋経済新報社)。
スポーツにたとえれば、決められたルールで決められた「土俵」の上で戦います。どちらかのチームが勝ちます。それが関係的権力です。そのルールと土俵を設定して、自らの考えたルールで他のチームも戦わせるのが構造的権力です。少し単純化が過ぎますが。

PKO20年

2012年8月6日   岡本全勝

これまた、古くなって恐縮です。7月20日の朝日新聞オピニオン欄は、「PKOあれから20年」を取り上げていました。
国際平和協力法ができたのが、1992年(平成4年)でした。今年で20年になります。
1991年の第1次湾岸戦争で、アメリカに次ぐ巨額の財政支援をしたのに国際社会からは評価されず、他方で自衛隊の派遣を巡って大きな議論になりました。「自衛隊を出せないので、民間人を派遣しよう」といった議論もあったのです。危険な地域なのに。そしてできたのが、この法律です。
その秋には、初めて自衛隊がアンゴラに派遣され、続いてカンボジアに派遣されました(派遣実績)。不幸なことに、1993年春に、選挙監視のために派遣されていた警察官が殺害されました。村田敬次郎自治大臣・国家公安委員長が急遽カンボジアに派遣され、私もお供をしたので、強烈な印象が残っています。
この間、自衛隊の国際貢献は、着実に実績を残してきました。PKOの他にも、テロ特措法でインド洋で給油活動、イラク特措法でサマワでの活動、海賊対処法でソマリア沖での警戒など。隔世の感があります。もっとも、この記事でも指摘されているように、日本のPKO参加基準はその後、時代遅れになったと言われています。

政府は信用できない組織?

2012年8月5日   岡本全勝

古くなって恐縮です。7月21日の朝日新聞オピニオン欄で、小浮正典さん(PR会社経営)が、次のようなことを指摘しておられました。
・・福島県産品の消費回復の足取りが重い。放射性物質の検査が強化され、市場に流通する商品については、消費者が心配すべき状況は一応、脱しているはずなのに、思うように売れないのは、いくら「安全」だといわれても、「安心」でないからだ。「安全」は科学的な根拠に基づく客観的な事実であるのに対し、「安心」は情報の受け手が理解し、納得した主観だ。要は、「安全」と「安心」が乖離しているのである。
困ったことに、福島県産品のブランド回復に向けて、政府がいま何をやっても効果は期待薄だ。問題の発端である東京電力福島第一原発事故、それに続く放射性物質に関する政府の情報の混乱こそが、「安全」と「安心」の乖離をもたらした元凶だからだ。消費者にとって、政府は理解も信用もできない組織になっている・・

各府省発行のメルマガ・その3

2012年7月23日   岡本全勝

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(2012年6月29日)

(厚労省の自己検証)
厚生労働省が、東日本大震災の際の対応を検証した結果を公表しました。民間出身の調査員が、調査・検証し、反省点を踏まえた今後の対応策を示しています(報告書概要本文)。
原子力災害現地本部への職員の派遣が遅れたことや、義援金の配分が遅れたことなどを率直に反省し、次回への改善を提言しています。
良いことだと思います。多くの組織において、自らうまくいかなかった点を検証し反省することは、なかなか行われません。また、身内での検証は甘くなりがちで、外部の者による検証は実態に踏み込めない欠点があります。
少し古くなりますが、官僚機構の失敗とその検証について、連載「行政構造改革」(2008年1月号、2月号)で解説しました。