国家公務員も、かつてのような「保障された人生」では、なくなりました。それは、大企業でも同じです。総務省人事恩給局が、40代の職員を対象に、自分の人生設計を考える研修をしています。その趣意書を、一部紹介します。
・・公的年金の支給開始年齢の引き上げによる再任用の義務化等に伴い、職業生活期間の長期化が想定される一方、能力・実績重視の強化、再就職あっせんの禁止等により従来と同様のキャリアパスを見通すことは困難となっている。
また、内外の社会経済情勢の変化、継続的な行政改革などの中で、中高年職員は長期にわたりモチベーションを維持しつつ、環境変化や役割変化に対応することが求められており、そのための能力開発等に自ら努めていくことが重要となっている。
更に、複線型の人事管理、早期退職募集制度等、自らのキャリア選択を前提とした制度の導入がなされていること、民間企業においても40 歳代以降の職員を対象とした自律的なキャリア・デザイン支援の取組を導入する例が増加していることを踏まえると、定年直前ではなく、早期の段階から職員が自らのライフプランについて考えることが必要となっている・・
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野党の役割
毎日新聞5月2日論点「あるべき野党の姿は」、宇野重規先生の「世界と日本、見取り図示せ」から。
・・政党政治の祖国といえば英国だが、一朝一夕に仕組みができたわけではない。後に自由党と呼ばれるようになるホイッグ党が、名誉革命をへてウォルポール首相の下で内閣を形成するまでに、30年は経過している。単に与野党があるばかりでなく、政権交代を含めて責任ある政治の仕組みが定着するには、それほど時間を要する。
哲学者のヒュームが面白いことを言っている。重要なのはむしろトーリー党(後の保守党)であった、というのである。野党に転落した後、彼らは単に権力を奪回するだけでなく、野党として権力を批判することが英国の自由にとって重要であることを学んだ。各政党が、権力と自由の両方の視点をもつことが肝心だというのが、ヒュームの教訓である。
自民党が野党期間に何を学んだか、あるいは政権を失った民主党がいま何をしているのかは、ここでは論じない。肝心なのは、政権交代以前の与野党関係にはもう戻れないということだ・・
市場を機能させる政府の役割
青木昌彦先生の『青木昌彦の経済学入門―制度論の地平を拡げる』(2014年、ちくま新書)から。この本は、先生の制度論の入門書になっていますが、それについては別途書くことにして。ここでは、2000年に行われた、フリードマン教授との対話から。
・・社会主義体制が崩壊した時、ロシアは、国営企業を民営化し、市場の自由化に踏み切りました。しかし、ロシアの経済改革は難航し、10年間で国民総生産(GDP)が約40%も低下しました。失敗の原因は明らかです。市場経済においても、政府には果たすべき重要な役割があるのです。ロシアでは政府が契約や知的財産権の保護という基本的な機能において無力となり、マフィアがそれにとって代わりました。
20世紀後半の10年から導き出される重要な教訓は、政府も市場機能を高める重要な役割を担っているという点にあります・・
政府の役割を、私なりに再検討したことがあります。「行政構造改革」。経済学の教科書は、このようなことは書いてありません。政治学や行政学の教科書も、触れていません。時間ができたら、もう一度挑戦します。そのために、本を読んだり、メモを作ったりしているのですが・・。
復興における政府の役割の変化も、その一つです。宗教との関わりも、そうです。社会の変化によって、公助の範囲が広がりつつあります。「社会のリスクの変化と行政の役割」。他方で、公の担い手が広がっている(政府の独占ではない)ので、旧来の行政の役割(の観念)は、変更を迫られています。
敗戦国への支援、戦後を設計する責任
5月17日の朝日新聞オピニオン欄、ジェフリー・サックス氏の「国家の対立を超えて」から。
「教授は1991年のソ連崩壊後のロシアの資本主義化や新しい国づくりに、ロシア政府の経済顧問として関与しました。現在のロシアの『製造者責任』があるのでは」という問に対して。
・・たしかに私はロシアを支援すべきだと考え、国家再建に関わりました。ところがその困難な時代のロシアを、米国はじめ西側は十分に支援しなかった。これがロシアの西側への不信感を生んだのです。1990年代、ロシアは経済的に追い詰められていました。インフレに苦しみ、外貨もなかった。私は負債の支払い猶予や金融支援を米国政府などに提案しましたが、受け入れられませんでした。理由はよくわかりませんが、敵対視していたことや自国の財政負担が大きいこと、大統領選挙への影響などを考えた結果でしょう・・
「体制変革の夢はなぜ、ついえたのだと思いますか。新しい秩序をつくるのは難しいのでしょうか」という問に対して。
・・第1次大戦後、戦勝国は敗戦国のドイツに多額の賠償を求め、厳しくあたりました。経済学者のケインズは、勝者が敗者を痛めつけたら、将来さらに深刻な政治問題に発展するだろうと警告したのですが、残念ながらそれは(第2次大戦という形で)現実化した。言いたくないのですが、米国が当時のロシアを支援しなかったのは間違いでした。これが米ロの溝を深めてしまいました。
ですから、もし現在のロシアの「製造者責任」があるとしたら、当時のブッシュ大統領でありクリントン大統領です。西側がもっと賢明な対応をしていたら、現在のような関係にはなっていなかったでしょう・・
ソ連が崩壊し、ロシアが市場経済を導入しようとしたときに、西側諸国は、ロシアに市場経済を導入するための「教師」を送り込みました。しかし、その際の混乱、その後の経済困難を十分に支援しなかったようです。
第1次大戦後の処理の際に、ドイツに過酷な負担を求め、それがヒットラーの台頭を許したとの反省があります。それを踏まえて、第2次大戦後は、戦勝国特にアメリカが敗戦国を支援しました。日本と西ヨーロッパです。その例と同様に、旧共産主義国を経済的にもっと支援する枠組みもあったでしょう。東西冷戦での「敗戦国」への支援です。そうすると、ロシアなどのその後は、違った結果になっていたでしょう。歴史上のイフです。
冷戦に勝ったことを持って良しとするのか、自由主義と資本主義を導入するための支援をするだけでなく、経済立ち直りまでを支援するのか。勝者には、(敗者への支援を含めて)次の世界を設計する責任が生まれます。それは、国際政治だけはありません。
野党の役割、3
・・複雑化し、多様化した世界をどう読み解くか、政党間での論争をますます活発化していかねばならない。他方、成長を見込めない以上、内政をめぐる選択肢は狭まっている。
アメリカの影響力に陰りが見られ、中国が台頭する東アジアにおいて、いかに日本の発展と安全保障を確保するか。そして、どのように財政と社会保障を再建するか。世界をめぐる有効な見取り図を示すとともに、21世紀における日本の社会像を示すことが与野党の最大の任務である。
当然、一筋縄ではいかない。利害はぶつかり合い、特定の政策課題にのみ目を向ければ、他の政策課題と矛盾をきたす。政党はなるべく多様な声に耳をすまし、矛盾や対立を調整する大きなデザインを描かなければならない。そして、そのような大きなデザインが複数あり、それを国民が選べるようにしなければならない。
いずれの政党も自らが政権に就くときに備え、世界と日本の整合性のある見取り図を作り続けることが肝心だ・・